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高度経済成長期を経て、現在「成熟期」にあるとされる日本。今後はかつてのような「急成長」が期待できないのは当然ですが、国としてこのまま静かに沈んでいくのは必然なのでしょうか。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、これからの日本を「豊かな成熟期の国」にするための手立てを考察。ルクセンブルクをはじめとする「成功している成熟国家」の特徴を上げ、我が国も彼らに学ぶべきとの見解を記しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:成熟期日本の未来は、確定的に暗いのか?
成熟期日本の未来は、確定的に暗いのか?
私が長期予測を当て続けている理由は、【 国家ライフサイクル理論 】を使っているからです。
たとえば、2005年に発売した一冊目の本『ボロボロになった覇権国家アメリカ』は、「アメリカ発の危機が起こって、アメリカは没落する」という内容でした。2008年、実際にアメリカ発「100年に1度の大不況」が起こり、「アメリカ一極時代」が終わりました。
同じ本の中で中国については、「2008~2010年にかけて危機が起こるが、短期間で克服し、さらに成長を続ける」「2020年くらいまで高成長を続ける」という内容で、いずれもそうなりました。
ちなみに2005年といえば、巷で「北京オリンピック、上海万博後、中国バブルははじけ、経済危機が起こり、中国共産党政権は崩壊する」という「中国崩壊論」が流行っていたころです。私は、「そうはならないだろう」と予測し、そうなりました。
国家ライフサイクル理論とは
ところで国家ライフサイクル理論とは何でしょうか?私が20年ぐらい前に考えた理論ですが。
- 移行期(混乱期)→成長期(前期)→成長期(後期)→成熟期→衰退期
と進んでいきます。
◆移行期(混乱期)
移行期=混乱期です。前の体制から新しい体制に移行するので、混乱期でもあるのです。幕末から明治維新、第2次大戦終戦後などをイメージすればわかりやすいでしょう。
移行期から成長期に進むためには、二つの条件が必要です。
一つは、政権が安定すること。たとえば、旧幕府軍と新政府軍の戦いが終わり、明治新政府の支配権が確立した。
二つ目は、新政府がまともな経済政策をすること。1949年、中華人民共和国が成立しました。毛沢東の独裁で、政権は安定していました。しかし彼は、究極の経済音痴だった。それで、中国の成長期は、鄧小平が実権を握り、まともな経済政策をはじめた1978年末まで遅れました。
◆成長期(前期)
安い賃金水準で安い製品を生産することで急成長していきます。日本でいえば、1950年代、1960年代でしょう。
◆成長期(後期)
安くて良質の製品を生産できるようになります。しかし、賃金水準はどんどん上がり、世界市場における競争力が落ちていきます。それで、成長が鈍化していきます。企業は、安い労働力を求め、外国に逃げるようになっていきます。日本でいえば、1970年代、1980年代でしょう。
◆成熟期
国民はそこそこ豊かですが、低成長の時代です。
◆衰退期
ゆっくり、あるいは急速に衰退していきます。
成熟期、衰退期の国民は、いわゆる3K労働をしません。それで、3K移民を大量に受け入れ、「自国民が嫌がる仕事は、外国人に安くやってもらおう」と「差別的移民政策」を推進していきます。
この「差別的政策」が、国家を衰退させることが多いのです。
次ページ:アメリカ、中国、ロシア。それぞれの大国のこれから
大国は今どこに?
さて、国家ライフサイクル理論から、大国の現状と未来を見てみましょう。
結論から言うと、欧州、アメリカ、ロシア、日本、中国は、いずれも成熟期です。これから急成長は望めません。
大国の中で、唯一成長期にいるのがインド。それで、私が2014年に出版した『クレムリン・メソッド』で予測したように、インドだけは急成長を続けるのです。おそらくインドは、近い将来、人口、経済力、軍事力で世界1になるでしょう。
アメリカは、19世紀の覇権国家イギリスが20世紀衰えたように、21世紀衰退していきます。
中国は2020年、高成長の成長期から低成長の成熟期に移行しました。また、人口急減時代に突入しました。中国が覇権国家になることはないでしょう。
ロシアも成熟期。戦術脳プーチンが24年も政権にいることで、先に進むほど苦しくなっていきます。
欧州も成熟期。移民政策をあらためなければ、「キリスト教文明」としての欧州は滅び、イスラム圏にのみこまれてしまうでしょう。
次ページ:国も人間も「中年期」の過ごし方で変わる未来
成熟期日本の未来は暗いのか?
日本が成熟期であること、誰も反対しないでしょう。
だいたい1950年代1960年代が成長期前期。1970年代1980年代が成長期後期。1990年から成熟期。
こう聞くと、「日本の未来は確定的に暗い」と思ってしまうでしょう。
そうではないのです。
「成熟期」、人間でいったら「中年」と思えばいいでしょう。中年は、何歳から何歳なのでしょうか?諸説あるようですが、だいたい40歳から65歳ぐらいまでだそうです。
ところで、「中年」は、「個人差がつきやすい時期」でもありますね。たとえば、福山雅治さんは55歳ですが、相変わらず若くてイケメンです。サザエさんの磯野波平は54歳だそうですが、福山さんと同年代には見えません。コナン君の阿笠博士は53歳だそうですが、福山さんの方が全然若いです(@実在の人物を福山さんと比較するのは失礼なので、アニメキャラと比較しました)。
同じ中年でも、
- 酒量
- たばこをやる、やらない
- ストレスが多い、少ない
- 運動をする、しない
- 体にいいものを食べている、食べていない
- 十分な睡眠をとっている、とっていない
などで、若さに大きな差が出てしまいます。また、出世レベルも、資産状況も、同じ中年(成熟期)でもバラバラであることがわかるでしょう。
実をいうと国もそうなのです。たとえば、国民の豊かさをあらわる指標、「一人あたりGDPランキング2024年IMF版」を見てみましょう。
- ルクセンブルク 131,384ドル
- アイルランド 106,059ドル
- スイス 105,669ドル
- ノルウェー 94,660ドル
- シンガポール 88,447ドル
- アメリカ 85,373ドル
- アイスランド 84,594ドル
- カタール 81,400ドル
- マカオ 78,962ドル
- デンマーク 68,898ドル
トップ10中、7か国が「成熟期」の欧米諸国が占めています。ちなみに日本国は、33,138ドルで、世界38位。34位の台湾、35位の韓国以下という、なさけない結果でした。
長くなるので詳述しませんが、成熟期でなおかつ繁栄している国には特徴があります。
- 一人当たりGDPが高い
- 労働時間が短い
- 汚職が少ない
- 教育レベルが高い
など。
「一人当たりGDPが高い」「労働時間が短い」というのは、要するに「労働生産性が高い」ということですね。日本は、残念ながらまだまだです。
日本は、2年連続で実質賃金が減少しています。にもかかわらず岸田政権は増税路線で、日銀は金利を上げていく。「わざと日本が経済成長しないようにしているのか?」それとも「真正の〇〇なのか?」と理解に苦しみます。
とはいえ、長期的に見れば、日本は「まともで豊かな成熟期の国にむかっているプロセス」と言えるでしょう。
たとえば、「働き方改革」と、新型コロナパンデミックで「テレワーク」が普及したことで、労働時間が短くなりました。
自民党の「裏金問題」は「ひどい!」と思います。しかし、それが表に出て問題視されていることで「汚職が少ない国に向かっている」とも言えます。
実質賃金が低下していることや教育については、問題山積みだと思います。ですが、日本国は一つ一つ問題を克服し、豊かな成熟期の国になっていくでしょう。
私は今回、何を言いたかったのでしょうか?
一つは、「成熟期の国」だからといってい、決して「お先真っ暗」ではない。それが証拠に、「一人当たりGDP」上位は、ほとんど成熟国の国である。これらの国は、日本より所得が高く、労働時間は短く、汚職が少ない。日本も、「成功している成熟期国家」から学ぶことで、豊かな成熟期国家になることが可能。ということです。
それで私は、「日本は成熟期だから衰退は必然です」とはいいません。日本が繁栄するかどうかは、「私たちの行動にかかっている」ということです。明るい未来を築いていきましょう!
(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2024年6月23日号より一部抜粋)
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