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不文律としてきました。1965年度に戦後初めて国債を発行した際、当時の福田赳夫蔵相は「公債を軍事目的に活用することは絶対に致しません」と国会で明確に答弁しています。その“禁”を破ったのが、岸田文雄首相です。(『 らぽーる・マガジン 』原彰宏)
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※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2024年5月13日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
「防衛費のために借金」という禁じ手を使った岸田首相
防衛費を国債で賄うことなどあってはならない…。
政府は野放図な借金を重ねたことが先の大戦を招いたことから、国債を防衛費に充てないことを
不文律としてきました。
借金で防衛費を賄うということは、ある意味無尽蔵に資金が供給できることになります。借金で得たお金は、使ってしまいたくなるのが“世の常”です。借金を認めるということは、資金供給面でもその資金を利用する側面でも、精神的タガが外れてしまいます。
1965年度に戦後初めて国債を発行した際、当時の福田赳夫蔵相は「公債を軍事目的に活用することは絶対に致しません」と国会で明確に答弁しています。
その“禁”を破ったのが、岸田文雄首相です。
2022年末、今後5年間の防衛費をこれまでの1.5倍以上の43兆円とする方針を決定し、「将来に向けた投資」のために発行する建設国債の対象に、自衛隊の隊舎などの施設整備や艦船の建造費を追加したのです。
政府は防衛費の財源を確保するため、初めて建設国債を使う。建設国債は主に公共事業の資金を手当てする目的で発行する。過去には海上保安庁の巡視船の調達に使った例はあるものの、防衛費にはあてていなかった。
出典:防衛費に初の建設国債、隊舎整備や艦艇建造に データで読む安保3文書 – 日本経済新聞(2023年1月26日配信)
防衛費のための建設国債は、2023年度の当初予算に4,343億円の発行を計上しました。そして、2024年5月7日付の朝日新聞の記事では、以下となっています。
防衛費に充てる建設国債の額が膨らんでいる。政府は今年度に5117億円の発行を計画し、昨年度の1.2倍、額にして774億円増やすことがわかった。
出典:防衛費に充てる建設国債1.2倍に 「不文律」破り今年度5千億円超:朝日新聞デジタル(2024年5月7日配信)
一度借金をしたら、歯止めが効かなくなるのですよね。朝日新聞は、防衛費が膨らんでいくさまを、グラフに表しています。
(参考)
https://www.asahi.com/articles/photo/AS20240408002719.html?iref=pc_photo_gallery_prev_arrow
https://www.asahi.com/articles/photo/AS20240408003440.html?iref=pc_photo_gallery_prev_arrow
https://www.asahi.com/articles/photo/AS20240408003441.html?iref=pc_photo_gallery_prev_arrow
財政法が例外的に建設国債の発行を認めているのは、道路や港湾のような社会資本は現在の世代だけでなく将来の世代も利用するので、その建設経費は現在の世代と将来の世代がともに負担すべきであるという考えからです。
今年度当初予算の防衛費は前年度より1兆1277億円多い7兆9496億円で、5117億円を建設国債でまかなう方針だ。防衛費に充てる建設国債の額が増えるのは、「防衛力強化を段階的に進めるなかで、国債の対象となる施設整備費や艦船建造費が増えたため」(財務省主計局)という。
出典:防衛費に充てる建設国債1.2倍に 「不文律」破り今年度5千億円超:朝日新聞デジタル(2024年5月7日配信)
政府は防衛費の財源を確保するため、初めてこの建設国債を使っているのです。そして、その発行額が増えているということです。
あの“超タカ派”と言われていた安倍政権でもなし得なかった敵基地攻撃能力(先制攻撃能力)をあっさりと認めさせ、しれっと防衛費を増額させ、それを増税で賄うことへの世論の批判を避けるため(?)か、国債発行という“禁じ手”を、何食わぬ顔で認めさせる荒業を、なんと“ハト派”と目されている「宏池会」出身の岸田政権はやってのけたのです。
Next: 米国の言いなり。私たちの税金で米国の景気と軍需産業を支えている…
軍事費「GDPの1%」の制限もしれっと無視…
そもそも防衛費は、日本が軍事を強化しないようにGDPの「1%」以内に収めるように制限をかけていました。
防衛大綱のもとで防衛政策を推進する毎年度の予算枠として、1976年11月に三木政権によって閣議決定されたのが「1%以内の枠」です。
その後、1986年12月に中曽根政権が撤廃を決め、翌年の1987年度予算編成から総額明示方式へと転換しました。
それでも「1%枠超え」とはなりましたが、超えたのは3回だけで、その数値は1.004%、1.013%、1.006%と僅かな超過にとどまっていました。
それがいまはどうでしょう。
日本の税金で米国の景気と軍需産業を支えている
いろんなところで言われてはいますが、米国製兵器を買うために、防衛費を膨らませているということでしょうか。
日本の税金でアメリカの景気を、アメリカの軍需産業を支えているのです。
日本は兵器を米国からしか買うことはできません。欧州製は、入札はおろか購入検討もできないのでしょう。兵器の性能は関係ありません。
それも“言い値”での購入です。軍事産業は景気に左右されないセクターで、戦争だけでなく、紛争が世界各地でやまないかぎり安定した需要があります。
むかし、防衛省が防衛庁だった頃の職員に「なぜ防衛庁を省に格上げするのか」と訪ねた際に「独自の予算権限を持ちたいから」「その理由は日本に軍事産業を根づかせたいから」と即答されたことを覚えています。
第1次安倍内閣の頃の話です。
米国が、集団的自衛権を日本に容認させたのは、戦地での費用負担を日本に賄ってもらうためだと聞いたことがあります。
そのためには日本が戦争状態の場所に来れるようにしなければならないそのための集団的自衛権なのでしょう。
それだけアメリカにはお金がないのです。“世界の警察”であることをやめたのも、お金がないからです。
アメリカにはお金がない…。この文脈で今あることを考えると、合点がいくところがあります。
かつて田原総一朗氏が安倍晋三氏にインタビューした中で「アメリカは、日本が集団的自衛権を容認したことで、もう憲法改正しろとは言ってこなくなった」という安倍氏の言葉を紹介していました。
安保を巡る世の中で議論されていることと、実際の話しでは、かなりズレが有るように思います。
Next: 日本もNATOに加盟したいのか?借金で防衛費を賄う危うさ
防衛費増加を求めている人は、NATO加盟国が防衛費をGDPの2%に引き上げることを条件とされていることを取り上げています。
日本もNATOに加盟したいのか。
北朝鮮の存在、中国の脅威、台湾有事と、安全保障の重要性を語る上で妙な説得力ある材料が揃っています。
国会で防衛問題を議論しているときに、やたら北朝鮮がミサイルを発射したり、中国船が日本領土に入ってくるような問題が起きてはいませんかね。
とにかく、今の日本は、借金で防衛費を賄うことができるようになりました…。
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