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年々増加の一途をたどり、社会問題となっている高齢者の孤独死。「尊厳のある死」の対極に位置すると言っても過言ではない孤独死なき社会は、果たして実現可能なのでしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合さんが、孤独死問題に潜んでいると思われる根本的要因について「会社」をキーワードに考察。自身も「孤独死は他人事ではない」とした上で、この問題について議論を深める必要性を訴えています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:尊厳を最後まで守る社会とは?
プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。
尊厳を最後まで守る社会とは?
1年間で「孤独死」する高齢者が、約6万8,000人に上るとする推計結果が公表されました。内閣府は昨年8月に、孤独死・孤立死の実態把握を目的とした作業部会を開催。2013年の4月に総務省から、自治体に対し、孤立死や孤立に対する取組についての重要な勧告が出されているため、作業部会はあくまでも「政府における主な取組」と位置付けました。
部会では「孤独死なのか?それとも孤立死なのか?」という言葉の選定や定義づけからスタートし、なぜ実態把握が必要なのか?なぜ、孤独死・孤立死が問題なのか?など、さまざまな観点から議論を重ねてきました。
で、今回。今年1月~3月に自宅で亡くなった1人暮らしの人が全国で計2万1,716人。そのうち8割が65歳以上の高齢者が占める現状を確認し、これを年間ベースに置き換え、「65歳以上の高齢者の孤独死は、年間6万8,000人」と推計。2011年にニッセイ基礎研究所が公表した2万7,000人を大きく上回っていることがわかりました。
また、令和4年に亡くなった65歳以上の高齢者は1,439,437人ですので、約5%もの人が孤独死してる計算になります。20人に1人です。
ここでの孤独死とは、「誰にも看取られることなく死亡し、かつ、その遺体が一定期間の経過後に発見されるような死亡の形態」と定義しています。つまり、亡くなる高齢者の約5%が、他者に気づかれずに亡くなり、その状態のまま“誰か“に気づいてもらえるまで放置されているのです。
作業部会の議事録には「尊厳」という言葉が何度も登場しているのですが、人の尊厳という視点で「死」を考えると、「孤独死という死のない社会」の実現が重要な課題であることは間違いありません。
孤独死問題については、地域との連携、見守り、コミュニティ作りなどの対策が真っ先に浮かぶのですが、なんかそれだけじゃない、もっと根本的な問題が潜んでるように思えならないのです。
次ページ:不安定かつ低賃金での働き方を余儀なくされる日本人
例えば、「会社」という存在です。欧米では、60歳を過ぎたら自由な人生を歩むのが当たり前という価値観が社会に浸透しているので、とっとと会社員を卒業し、次のフェーズに転換した人生をスタートします。
60歳になった途端、低賃金労働者として「在庫一掃セール」に出されることもありません。そのためにさまざまな働き方を国や会社で作り、シニアで働くにしても、自分のライフスタイルに合わせた働き方をその都度自分の都合で選択できる社会を実現しました。
さらに、多くの国では税金は累進課税がしっかりしてるので、富裕層の負担率が高いため老後の生活の心配は日本ほどありません。高齢者住居も介護のあり方も多様化しているのです。
一方、日本は最後の最後まで「会社員」。「会社」というコミュニティで居場所を得るために、不安定かつ低賃金の働かせ方を余儀なくされます。介護難民にならないためには、たくさんのお金が必要なので、低い賃金で働かされている人ほど、いつまでも働き続けなくてはならないという悪循環も生まれています。
数年前、老後は2,000万円必要と言われていましたが、最新の分析では「4,000万円」に倍増したとか。介護も問題山積だし、高齢者の貧困問題も年々深刻化しています。
持てるものが常に豊かで、持たざる者が常に貧しいかといえば、それはそう簡単なことではありません。しかし、今後は1人暮らしの世帯は一段と増え、2050年には65歳以上の一人暮らしが1,083万人と20年比47%増加すると予想されています。
私自身、うっかり“家族を作ることを忘れたまま”いいお年になってしまったので、孤独死は他人事ではないのですよね。
孤独死問題、もっともっと考えていかなきゃです。みなさんのご意見、お聞かせください。お待ちしております。
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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
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