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膨大な数のいじめ事件と向き合い、多くを解決に導いてきた現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さん。そんな阿部さんには、いじめの「加害者サイド」からの相談も入るといいます。今回のメルマガ『伝説の探偵』では、加害者家族が阿部さんにぶつけてきた理解に苦しむ主張を紹介。それでも彼らからの相談を受け付けてきた理由と、今後学校へ望むことについて記しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:いじめ加害保護者からの相談
「こんな親いるのか?」いじめ加害保護者から探偵が受けた相談内容
加害者からの相談は実際にある。年に10件前後くらいだが、確かにある。
最も多いのは、加害者本人ではなく保護者からだ。
そして困ったことに、ニュースになるような重大事態の加害保護者からの相談が年に数件必ずあるということだ。
例えばこうだ。
加害保護者 「うちの子は確かにいじめをした。でも暴力ではなく、距離をおいただけ。その理由は、被害を訴える子が、遊ぼうとしつこく誘ってきたり、やたらと絡んでくるから、鬱陶しくなって、無言で答えただけだ」
しかし、実際は、無視をしただけではなく、周囲を巻き込み無視をするように話しかけた子に指示をしたり、「帰れ!」コールをしたり、ランドセルに使用済みのぞうきんを入れたり、「臭い」と言いがかりをつけたりしていた。
それだけではない数多くの嫌がらせを数か月間続け、結果、転校したばかりの被害者は学校での居場所を失い、自尊心を傷つけられて、自死をはかろうとしたところ(調べによるとマンションから飛び降りようと思い、歩いていたところ)、近所の夫婦に声をかけられて、事態が発覚したのだ。
これを問うと、我が子はそんなことはやっていないという。被害者の子が弱いから、そうなっただけだというのだ。
加害保護者 「そもそもうちの子なら、私に相談するはず。被害の人は親子関係が上手くいってなかったんじゃないですか!」
各データからそう思っているのは親だけというのはわかるのだ。
相談してくれるはずと答える親は6-8割いるが、実際に相談があった親は1割程度しかいない。
こういう調査は文科省もやっているし、私が代表を務めるNPO法人ユース・ガーディアンでもやっている。つまりは、「相談してくれるはず」は間違いで、何か隠し切れない出来事があって発覚するというのが親の身からすれば、ほとんどなのだ。
それに、やっていないという言葉を勝手に信じるのは自由だが、それを全ての前提にして表に出すというのは、いかがなものか。
結局、どうしたいんですか?と問えば、こういうのだ。
加害保護者 「加害者扱いされて、うちの子も苦しんでいますから、謝って欲しいんです」
あほか!である。
どう考えたら、そこまでおバカな論理展開ができるのだろうか。理解に苦しむところだ。
もっと酷いものもある。
盛っても作ってもいない暴力いじめ加害保護者の発言
暴力加害保護者 「うちの子は確かに下級生を殴ったり蹴ったりしました。でも子どもの喧嘩のレベルです。大したケガもしてません。それなのに、やれ、重大事態だ、第三者委員会だ、と大騒ぎになって、ニュースにまで取り上げられて、まるで犯罪者扱いです」
どこからこの人に説明をすれば理解するのだろうかと思考を重ねてみるが、おおよそ理解しあえないレベルではないかと正直、思ってしまう。
そもそも、子どもだから刑務所に入らないだけで、行為自体は暴力であるから犯罪行為だ。しかも、下級生の体格差があるこどもを、殴ったり蹴ったりしたら、当然、怪我をするだろう。
ちょっと擦りむいた、青あざになったでも怪我は怪我だ。必ず全治〇週間とかの診断が下される。
しかも、殴る蹴るという意思に基づいて行動をしているから、何かの回避とか防衛するために手で払ったところ尻もちをついたなど過失の範疇ではない。理由はどうあれ、攻撃をするために故意に行った行為となる。
やったことは犯罪行為であり、重大事態いじめになれば、当然に第三者委員会による調査というものは視野に入ってくるわけだ。第三者委員会が調査をすれば、報告書が作られて答申となる。その際に、加害保護者にも説明があるはずなのだ。
通常、第三者委員会が市区町村など設置権限のある教育委員会や学校法人に報告をする場合、地域の記者クラブなどにも公にされる。記者クラブに連絡があれば、記者会見があったりして地元テレビのニュースや新聞に報じられる。
ただし、まず全ての公にされる情報には、加害者の氏名は出されることは絶対にない。報告書では黒塗りになるかABCDなどで表記される。ニュースなどではそこまで深堀りすることはない。いじめが認定された、自死や不登校との因果関係は?学校や教委の対応は?などが出される程度だ。
確かに同級生などなら誰の事かわかるであろうが、同じ学校でも学年が違うなどで、例えば報告書に書かれたA加害者とは〇×君だとの特定までには至らないことも多い。さらに、地域が異なれば、興味持たないかもしれないし、次々にあふれ出る報道や事件で記憶に残らない人の方が大半だろう。
ニュースになるのは当然、それだけのことをしたのだ。
しかし、「じゃあどうしたいんですか?」と問えば、こう言ってくるのだ。
暴力加害保護者 「被害者を訴えたいんです」
あほか!それだけのエネルギーがあるなら、いじめをしない子に教育し直しなさい。馬鹿タレがっ。
これを読む大半の方が、こんな親いるのか?なんか作ってない?と思うかもしれない。
それに、こんなどうしようもない訴えを仕事として受ける弁護士なんていないだろうと思うだろう。
しかし、いたのだ。
私はしっかり記憶している。
実際に被害者を訴えた加害者の斜め上の言い分
この件は、被害側と市などの協議で他言しないという誓約が交わされたということだから、詳しく地域などは敢えて隠すが、あるいじめ暴力事件で、被害者が加害者に訴えられたという事件があった。
「債務不存在の訴え」というそうだ。つまり、加害者は加害行為を認めてないので、暴力行為ではないから被害者に対しての債務はないということを確認するための裁判を起こしたということであった。
当然、被害者側は反論をするわけだし、証拠も被害状況も見ればわかる状態だから、勝負にはならないのだが、加害者側は弁護士も含めて、火に油を注ぐ状態になるということは予想もしていなかったのだろうか。
私も色々な事案をやって恨みも買うから、仮に何かあった際の反撃ネタというものは常に二重三重で用意しているが、こうした馬鹿な決断をする加害者というのは、予想のはるか上というか、斜め上をいくことを考えるのだなと思うのだ。
ただわかることは、加害者も加害保護者もたいていはこんなものだということなのだが、それでも私が相談を受けていたのは、一見加害者の中には、実は被害者であったというケースがあるからであった。
しかし、こうも相談数が増え続けていると、加害者からの相談は一定の制限を設けなければならないだろう。
効果が実証されているいじめ予防教育も
学校も大変です。先生の成り手が少ないと、文科大臣まで出張って対策を打つとか。
旧Twitterで「教師のバトン」とかありましたが、実態ブラック企業そのものの暴露がたくさんありました。
【関連】学校という“ブラック企業”を炙り出した「教師のバトン」の大炎上
映画で見る自己犠牲のシーン「ここは、俺に任せて、お前ら逃げろ!!」という感じでしたね。
私から見ても、不健全な職場が多いなーという印象です、学校現場は。
文科省も実態調査をしますとかいって、仕事量が大変なの!っていうアンケートを取ってさらに仕事を増やすという…すごいことやってますしね。
いじめ問題においても教員のやらなければならないことは多いです。命にかかわることもあるから、手を抜かずにやって欲しいし、そもそも対応しないとかはやめてほしい。
けれど、もう限界なら、新たな制度や役職を作って現状問題に対応できる仕組みとそれを動かす人を雇い入れる必要があると思います。
ハッキリ言って、だれも子どもを被害者にも加害者にもしたくはないのです。であるならば、なぜ予防教育実施において、あまり効果がない結果になっていることしかやらないのか、と思うのです。
環境などにもよりますが、効果実証されている予防教育はありますし、予防教育制度によって重大事態いじめの発生リスクが限りなくゼロに近い状態にできるということもわかっています。
学校さん達には、まずはできることからコツコツやって事態を良い方向に変えていってもらいたいと思います。
授業時間5分減らすが劇的変化!の世界ですから、期待せずに、なまぬるい目で応援してます。一歩一歩、三歩進んで二歩下がるでもあきらめるな!です。
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image by: Shutterstock.com
社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。
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