■なぜ日本経済は世界トップから「中進国」に成り下がったのか | タマちゃんの暇つぶし

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マネーボイス:資本に媚びすぎた日本の失敗。なぜ日本経済は世界トップから「中進国」に成り下がったのか=斎藤満氏2024年5月14日より転載します。
 
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かつての「ジャパン・アズ・ナンバーワン」から一転して凋落を続ける日本経済。この30年余りの間に世界のトップクラスから「中進国」に成り下がった背景に何があったのでしょうか。(『 マンさんの経済あらかると 』斎藤満)

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※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2024年5月13日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

日本的経営の強さを自ら放棄

かつての「ジャパン・アズ・ナンバーワン」から一転して凋落を続ける日本経済。GDPがドイツにも抜かれて世界4位に後退したことに危機感が見られませんが、1人あたりGDPが昨年で34位(IMF調べ)に後退、韓国、台湾がこれに肉薄しています。

日本がこの30年余りの間に世界のトップクラスから「中進国」に成り下がった背景に何があったのでしょうか。

結論を先取りすれば、世界から恐れられていた「日本的経営」の強さを、日本が自ら放棄してしまったことです。日本的経営の特色、そして強みでもあったのは「企業別労働組合」「終身雇用」「年功序列」で、これは日本的経営の「3種の神器」とも呼ばれています。

これは長期雇用を前提とし、企業から見ても労働者から見ても長期安定要因になっていました。企業別組合はしばしば「御用組合」と呼ばれ、組合幹部はその後人事、企画の要職に就き、経営幹部になるケースが多くみられました。その分、経営と労働が一体化していたわけで、社内教育、幹部候補生の育成にも役立ちました。

労働者からすれば、定年退職までの職が保証され、結婚、子育て、家の購入などの生涯設計も容易で、将来不安はほとんどなく、安定を得ることができました。その中で結婚件数、出生数は高水準を維持していました。

また労働者からは「わが社」「うちの会社」という言葉が普通に聞かれ、ロイヤリティが高く、生産性を高める要素にもなりました。そして1980年代にはその成果が表れ、80年代末には株式時価総額で世界のトップ10の過半を、NTTや邦銀など日本企業が占拠するまでになりました。

当然、米国など世界は日本脅威論を強め、日本企業を縛る規制、ルールを次から次へと出してきました。特に圧倒的な強さを見せた日本の銀行に対して、BIS規制による資本規制を強化し、また半導体規制、自動車の輸出規制などで日本企業の手足を縛ることまでしました。

日本的経営つぶし

折しも、1990年に株バブルが、91年には不動産バブルがはじけ、日本は経済不振に陥りました。これに対して、米国で学んできた学者、エコノミストが相次いで不況の原因を日本的経営の硬直性にあると批判しました。組織の硬直性で競争力が低下し、時代の変化について行けないといい、年長者のコスト高を指摘するようになりました。

彼らは日本的経営の弱点を指摘し、特に年功序列、終身雇用制が企業の組織硬直性、人件費コスト高による競争力の低下要因と、やり玉にあげました。バブル後の景気悪化は必ずしも日本的経営の負担によるものではなく、資産デフレによる需要の急減、信用の縮小によるもので説明がつくのですが、米国はここぞとばかりに毎年「年次改革要望書」を日本に突きつけ、構造改革と称して日本を骨抜きにしてきました。

政治献金をしてくれる財界に媚びを売る政府は、米国帰りの学者、エコノミストを重用し、日本の雇用制度を瓦解させ、中途採用の活用、非正規雇用の積極利用を通じて、いつでも人を切れるようにし、必要な時だけ採用できるようにして固定費だった人件費の変動費化を進めました。

Next: なぜ日本経済は落ちた?資本に媚びる企業が増えていったワケ

企業の短期利益志向

企業は誰のものか、米国では資本家、つまり株主のものという面が強いのに対し、バブル以前の日本では、資本、経営者、労働力の三位一体の形、ないしは労働力のウエイトが比較的高い時期が続きました。新卒の採用は20年、30年の長期投資と考えられていました。

しかし、米国流の経営思想が広がり、日本企業も次第に短期利益の極大化に走り始めました。

雇用形態の流動化もあって、長期戦略が立てにくくなり、企業は目先の利益、株価重視の姿勢となり、政府も米国の「年次要望書」を政策の柱としたうえで、あとは労働者の立場よりも企業の利益を優先に考えるようになりました。

そして近年では非正規雇用が労働者全体の4割近くを占めるに至りました。

労働者の再生産困難

日本のバブルを挟んで、その前後で日本の労働者のおかれた環境は大きく変わりました。

80年代までは、初任給は安くても、いずれ昇給して給与が増える期待があり、定年まで働ける安心感があったので、若いうちから借金をして車を買い、住宅ローンを組んで家を買うことができました。

そして55歳の定年後は退職金と年金で平穏に暮らせる安心感がありました。結婚、子育ての不安もなく、子どもは祖父母やご近所が面倒を見てくれるので、保育所、幼稚園の心配もありませんでした。

ところが、終身雇用制、年功序列制が崩れ、いつ首を切られるか、配転されるかわからなくなり、転職をすると給与が以前より減るリスクが高まりました。国税庁の調べによると、正社員の年収560万円に対して、正社員以外では200万円(非正規で180万円)と、雇用形態によって給与水準が大きく異なるようになりました。

正規雇用以外の4割近い労働者は、家賃を払って社会保険料を払うと、食べてゆくのがやっとという所得環境で、貯蓄もできず、結婚、出産どころではなくなります。すでに子どもを持つ世帯には児童手当が支給されますが、単身の非正規労働者は所得制約から結婚、出産、家の購入へのハードルが著しく高くなります。働いても労働力の再生産もできません。

この環境が続く中で、結婚件数が減り、出生数が減り、少子化、人口減が定着し、生産年齢人口も減って恒常的な人手不足が生じるようになり、企業経営にも足枷になってきました。人手不足倒産が増え、雇用確保のための賃上げが、賃金コストインフレを引き起こすようになりました。日本経済停滞の大きな要因になっています。

Next: 復活の道はあるか?日本的経営再評価で少子化に歯止めも

日本的経営再評価で少子化に歯止めも

最近になって米国では日本的経営の再評価がなされています。

日本が米国の誘導があったにせよ、自ら日本的経営の強さを放棄してしまったことが、今日の不安定な雇用形態、労働者の不安を高め、結婚、出産を躊躇せざるを得なくなり、少子化、人口減少、人手不足、日本経済の停滞をもたらしたと考えられます。

日本的経営を取り入れても、新たな市場への人的配分、組織の改編は可能で、日本的経営が組織の硬直性や機動性を奪ったわけではありません。終身雇用制のもとでも新事業の開発や事業の多角化は可能です。

非正規雇用を限定的にし、正社員の形で雇用を長期投資と考える日本的経営の復活が、時間はかかっても少子化の問題解決につながる可能性があります。

政府は選挙目当てで効果の期待できないバラマキよりも、米国や財界に媚びず、温故知新、日本古来の強さである日本的経営を改めて見直す発想の転換も必要です。

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マンさんの経済あらかると 』(2024年5月13日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
 

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