弊サイトでも既報のとおり、ジャーナリストの有田芳生氏に対して旧統一教会が起こした「スラップ裁判」で、教団の請求を棄却した東京地検。突如被告とされた有田氏は、この裁判をどのように闘ったのでしょうか。今回のメルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』では著者の有田さんが、ともに教団と対峙した5人の弁護士のプロフィールと彼らとのやり取り、そして裁判所に提出した1,000ページを超える証拠の内容を紹介。さらに今回を含め裁判闘争で4連敗を喫した旧統一教会に対する厳しい見方を記しています。
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※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:統一教会スラップ訴訟の敗北
名誉毀損にあたるかどうかの判断をするまでもない有田氏の発言
2022年10月27日に統一教会から名誉毀損で訴えられた裁判は、3月12日に教団の訴えが棄却され、私が勝訴した。15時30分から東京地裁103号法廷で行われた判決公判は、荒谷謙介裁判長が「原告の請求をいずれも棄却する」と言い渡し、あっさりと決着がついた。
そのあと判決の要旨が短く読み上げられた。そもそも私の発言が名誉毀損にあたるかどうかの判断をするまでもない。裁判官はそう判断した。門前払いの判決だ。この判決にはスラップ訴訟の意味と同時に解散命令請求に追い込まれた統一教会の現状を示す内容がある。
2022年7月8日に安倍晋三元総理が銃撃を受けたことをきっかけに統一教会と政治の関係が社会問題として浮上した。私もテレビへの出演で教団を批判してきた。22年8月19日朝に放送された『スッキリ』(日本テレビ系)は、萩生田光一自民党政調会長(当時)が教団との関係を断たなければならないとするテーマで、映像放映とスタジオでの議論が40分ほどあった。私はこう語った。
「(統一教会は)霊感商法をやってきた反社会的集団だってのは警察庁ももう認めている」。
教団はこの発言が名誉毀損だとして、22年10月27日に私を訴えた。その翌日からいままで私のテレビへの出演はいっさいなくなった。言論を封じることを目的として典型的なスラップ訴訟である。訴えることで目的を達したのだ。
有田氏のもとに集った5人の最強弁護士
私は5人の弁護士(光前幸一、郷路征記、澤藤統一郎、阿部克臣、澤藤大河)で闘うことにした。訴えられたことを知った札幌の郷路弁護士からメールが来た。郷路弁護士とは1987年に被害弁連ができたときから面識がある。弁護士を紹介したいという。それがDHCに名誉毀損で訴えられて勝訴した澤藤統一郎弁護士だった。裁判は10件、総額7億8,000万円の請求という典型的なスラップ訴訟だった。その弁護団にいたのが元裁判官の光前幸一弁護士だ。さらに被害弁連から阿部克臣弁護士、そしてDHC訴訟の澤藤大河弁護士にも加わってもらった。
裁判の打ち合わせはほぼZoomで行った。毎回2時間ほどで、法律家の議論は聞いていて知的刺激に満ちていた。弁護方針は2段階あった。まず私の発言は名誉毀損に当たらないとの主張だ。さらに名誉毀損が争われたときに、私の発言に公共性、公益性、真実または真実相当性があれば、違法性が阻却され、名誉毀損罪は成立しない。
裁判官がどう判断するかわからないので、統一教会をめぐる民事、刑事の判決、警察庁による国会答弁、警察庁の資料など、合計して1,000ページを超える証拠を提出した。霊感商法の各種判決だけではない。教団の渋谷教会に捜査が入り、組織的関連性も明らかになった。警察庁が教団関連企業の摘発事件をまとめた資料もある。教団が反社会的集団であることは、もはや公知の事実であった。
統一教会「勝てるものを選んで訴えた」の戯言
判決文には「争点」が4点示されている。
1,本件発言の名誉毀損としての違法性の有無
2,本件発言についての被告会社の不法行為責任の有無
3,原告の損害
4,被告らによる名誉毀損回復措置の要否
判決文は、原告と被告の主張を述べていく。裁判官は番組のテーマが萩生田光一議員と教団が関係を断つことであり、問題とされた発言はたった8秒であり一般視聴者の印象に残るものではないと判断した。
「本件発言により、原告の社会的評価が低下したとはいえないから、本件発言に名誉毀損としての違法性は認められない」。「結論」は「原告の請求はその余の点について判断するまでもなくいずれも理由がないから、これらを棄却することとして、主文のとおり判決する」。
4つの争点の最初で違法性がないから、それ以外は「判断するまでもない」という構成になっている。裁判官は1,000ページを超える証拠を見たうえで、統一教会の悪質性、組織性、継続性を認識したうえで、門前払いしたのだ。そもそも訴える必要もない裁判を提起したこと自体が教団の悪質性の証明である。
教団の福本修也弁護士は、記者会見で「勝てるものを選んで訴えた」と語っていた。ところが統一教会は、八代裁判、本村裁判、有田裁判、紀藤裁判と4連敗だ。教団内部でも「訴えるべきではなかった」との声が多かった。統一教会は裁判闘争に進んだことで、自らの首を絞めることになった。
※ 本記事は有料メルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』2024年3月15日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込880円)。
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image by: Sun Myung Moon, CC BY-SA 4.0, ウィキメディア・コモンズ経由で
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