■中国、2035年には「年金亡国」へ。 | タマちゃんの暇つぶし

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マネーボイス:中国、2035年には「年金亡国」へ。60歳定年と高い所得代替率が命取り、“体制維持”優先の政策に限界が来ている=勝又壽良氏2024年1月13日より転載します。
 
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https://www.mag2.com/p/money/1402436

中国経済の復活には財政出動が不可欠だが、習近平は体制維持のために財政赤字を増やさない政策に固執している。それでも膨れ上がる年金によって、2035年には財政赤字に陥るだろう。「年金亡国」となる日が着々と近づいている。(『 勝又壽良の経済時評 』勝又壽良)


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プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)

元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

中国経済にも「失われた30年」が来る?

中国経済最大の課題は、不動産バブル崩壊による後遺症(過剰債務)処理をいかに早めるか、である。これによって、将来の経済成長への道筋が描けるからだ。

だが、習近平国家主席は財政赤字を増やさず、金融緩和で凌ごうという「緩い」姿勢である。

日本が「失われた30年」を余儀なくされたのは、不良債権処理に手間取ったからである。1990年、年頭に株価が暴落し、秋頃から不動産相場の下落を誘発した。当時の日本政府には、バブル崩壊という認識がゼロであり、国債増発で克服できるというケインズ主義の亡霊に取り憑かれていた。

結局2005年、小泉政権によって不良債権整理が完了した。この間、日本は15年にわたって時間を空費したのである。

財政出動が再建のカギ握る

中国は、こういう日本の誤りを繰り返そうとしている。相変わらずのインフラ投資で、地方経済のテコ入れを図り、不良債権処理は金融機関に任せるという微温的な姿勢である。

中国の抱える債務総額は、当時の日本を大幅に上回る350兆円(隠れ債務を含む)にも達する勢いだ。特に、地方政府の財政困窮が激しくなっている。自力での財政再建が不可能な事態である。中央政府が、財政赤字拡大を覚悟して支援強化しない限り、立ち直りは困難な状況だ。

地方政府の財政困窮は、住宅販売の長期不振が理由である。住宅が売れなければ、新規の建設用地売却チャンスがないからだ。この土地売却収益が、地方政府歳入の3~4割も占める異常な財政状態にある。固定資産税(不動産税)も相続税も存在しない地方政府は、土地売却益なしに行政が成り立たない状況に陥っている。

この事態を救うには、未完成住宅の工事を再開させて、市民に対して安心感を取戻させることである。これが、政府への信頼感を繋ぎ止め、個人消費を増やす糸口になるのだ。この「迂回コース」の重要性が、習氏に分からないのだ。

習氏は、財政赤字を増やさない政策が、共産党政権の命脈を保つ上に必要と信じきっている。経済成長よりも、赤字を増やさないことによる体制維持が不可欠という信念である。

元世界銀行総裁のロバート・ゼーリック氏は、習近平氏について貴重な証言をしている。「(私が)世銀総裁を退く2012年に彼(習氏)は総書記になった。当時、私は習氏に『あなたの経済的優先事項は何ですか』と聞いた。答えは『8,660万人の共産党員』だった。多くの世界の指導者と話したが、経済の計画を聞かれ党員数を答えた人はいなかった。彼が目指したのは共産党の強化で、経済は重視していなかった」(『日本経済新聞 電子版』1月7日付)。

習氏はここまで、共産党体制維持が最大の目的になっている以上、経済成長率が低下しようとお構いなく、がむしゃらに財政赤字拡大を阻止することに政治生命を賭けるであろう。

こうなると、中国経済の成長率はこれから予想以上に低下するリスクが高まる。これは、「諸刃の剣」である。中国が、60歳定年(国際的には65歳定年)であることから、すでに「超高齢社会」へ突入しようとしている事実だ。年金負担が、一挙に高まることによって「年金亡国」という重い足かせが迫っている。詳細は、後で論じる予定だ。

習氏は、こういう現実を棚上げして顧みようとしないのだろう。潜在成長率一杯の経済成長率を維持することが、「年金亡国」を阻止する上にも不可欠である。それには、不動産バブル崩壊の後遺症(過剰債務)処理を早めなければならない。過剰債務を「凍結」していたのでは、後手に回るのだ。

Next: 年末年始の住宅販売は不振。世界10大リスクに「回復しない中国」が

年末年始の住宅販売は不振

中国経済のカギを握る住宅販売は現在、どうなっているか。中国の民間不動産調査大手、中国指数研究院(チャイナ・インデックス・アカデミー)が1月2日公表したデータによると、年末年始3日間の主要40都市の住宅販売(1日平均、床面積ベース)は、前年同期比で26%も減少した。小都市が50%減と最も大幅な落ち込みだ。同研究院は、「住民の期待の変化と政策支援が2024年の不動産安定化の鍵になる」と指摘する。『ロイター』(1月3日付)が報じた。

こういう住宅販売状況から、24年の経済成長率に赤信号が灯っている。1つの手掛かりは、日本経済新聞が報じた現地エコノミストのアンケートがある。それによると、平均の予測値は4.6%へ低下する。需要不足が深刻化するなかで、供給を増やせば(モノの)価格は低下し、意図せざる在庫の積み増しが発生する。一時的な生産増は、本質的な回復に結びつかないのだ。報道では時々、生産増を大々的に取り上げるが、それは突発的である限り意味はない。むしろ、生産者物価指数の低迷時期を引き延ばすだけである。

中国経済の基調を判断するには、物価状況をトレースすれば一目瞭然である。デフレ基調に落ち込んでいるのだ。昨年11月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比マイナス0.5%だ。これは2020年11月以来最大の落ち込みとなった。生産者物価指数(PPI)は前年同月比マイナス3%。1年2カ月連続でマイナスというデフレ領域に陥っている。こうした状況を受けて、中国人民銀行(中央銀行)は12月28日再度、消費者物価を押し上げる約束を確認する、と声明する事態に陥っている。

中国人民銀行は、マイナスの消費者物価指数をプラスに押し上げるとしている。これは、ついこの前まで日本銀行が行っていたビヘイビアである。中国も、日本同様の政策環境に追込まれていることに気づくべきだろう。デフレ基調に落ち込むと、物価をプラス圏へ押し上げるには多大のエネルギーを必要とするのだ。


世界10大リスクに「回復しない中国」

毎年、恒例になった米国のユーラシア・グループの「24年世界10大リスク」(1月8日公表)では、6位に「回復しない中国」が取り上げられた。その理由は、次の5点だ。

1. 経済リオープニングの弱まり。所得の伸びの鈍化、失業率の上昇、地方政府の財政再建、不動産価格の下落、連鎖するデフォルト(債務不履行)が信頼感と消費の重荷となる。

2. 不動産セクターの不振。最近の安定化努力にもかかわらず、不動産開発業者による土地購入の不振により、新規建設が貧弱なままであるため、景気押し上げ効果は期待できない。

3. 外需の低迷。国際的需要、特に米国と欧州からの需要は、高金利と世界経済の成長鈍化に制約され、2023年よりも回復力が弱まるだろう。

4. 政府の経済対応。不動産業者の債務不履行や銀行の破綻など、新たな金融ストレスに対 する中国政府の場当たり的アプローチは、信用を低下させ、すでに限界になっている政府の行政能力を試すことになる。

5. 政治だ。権力が習近平国家主席に集中し、成長よりも国家安全保障が優先されるため、消費者、企業、投資家の景況感が下方圧力を受けるだけでなく、経済や金融の脆弱性への対応を遅らせる。こうした状況は、中国経済の停滞をさらに深刻にさせ、中国共産党の能力と正統性の傷を露呈するだろう。

上記5点の中で、(5)の政治に最も注目すべきであろう。習氏が、成長よりも国家安全保障を優先させる結果だ。これが、経済や金融の脆弱性対応を遅らせて、中国経済をのっぴきならぬ事態へ追い込む。中国の国力を消耗させるだろう。不幸にも、西側経済学を理解する者が習氏の周辺から消えてしまった。最悪事態になっている。

Next: 定年60歳が襲う国家悲劇。着々と「年金亡国」に突き進んでいる

定年60歳が襲う国家悲劇

習近平氏は、国家主席就任時から経済よりも中国共産党を重視する姿勢である。この基本的なスタンスは変わらず現在、共産党政権維持に全神経を集中させている。

そのメルクマークが「財政赤字削減」である。国難ともいうべき不動産バブル崩壊時でさえ、「財政赤字」に拘っている。これが、中国経済の回復を遅らせ体力を消耗させる主因だ。

事態はこれだけでない。年金財政の窮迫が目前に迫っていることに気づくべきである。ここで、潜在成長力をさらに低下させれば、年金を満足に支払えない「国民的悲劇」が待ち構えているのだ。

中国の定年は、男性60歳・女性55歳(一部は60歳)である。高齢者の定義は60歳以上である。年金支給開始も60歳だ。国際的にみた定年は65歳以上だが、中国だけは特別に短い。革命当時の健康状態が悪かったからだ。これによって現在、労働力不足に直面しながら定年延長できない状況である。国民の低い勤労意欲と、後述の7割という高い「年金所得代替率」のもたらした結果である。

こうして、中国では「早く定年を迎えて楽をしたい」という意欲が極めて強い。習近平国家主席の巨大権力を持ってしてもいかんともし難いのである。強引に定年を延長すれば、「大衆蜂起」が起こり兼ねないほどだ。習氏にとっては、「弁慶の泣き所」となっている。習氏は実際、大衆運動を恐れている。国民監視を強めている理由である。

中国人口に占める高齢者(60歳以上)割合は、現在20%ほどである。この比率は、中国がすでに国際社会が定義する「超高齢社会」(65歳以上人口の占める比率が21%以上)と同じ状況にあることを示している。日本が、超高齢社会へ移行したのは2007年である。中国もすでにこの状況にあることが、中国の年金財政を考える上で極めて重要なポイントになる。

年金支給は現役所得の7割

次のデータは、国際社会が高齢者を65歳以上と規定している尺度を中国に当てはめたものだ。

   高齢化社会  高齢社会   超高齢社会
中国 2001年  2021年  2034年
日本 1970年  1994年  2007年

これによると、中国は2034年に超高齢社会(65歳以上の人口比21%以上)へ移行する予測であった。だが、中国の退職年齢が60歳であるので、前記データは中国にあてはまらず、実際は2024年に繰り上がっている。これが、中国にとって大きな財政負担になるのだ。

世界では広く認識されていないが、中国の「年金所得代替率」(税引き前)は、桁外れに高いことだ。年金支給率が、現役時代の給与の7割も支給されている。

年金所得代替率(税引き前:2020年)
中国  71.60%
米国  39.20%
日本  32.40%
韓国  31.20%
出所:OECD

中国の年金所得代替率が、群れを抜いて高いのはそれ自体、正しいことである。だが、これが退職年齢引き上げの障害になっている。中国では、少子高齢化が急速に進んで労働力不足状態である。これを緩和するには、退職年齢引き上げしか方法がないのだ。

一方で、現役時代の所得に対して7割も年金が支給されれば、定年延長引き上げは困難だ。ただ、中国の年金は賦課方式である。現役世代の負担によって、年金が維持されていることを考えれば、大局的見地から退職年齢引き上げは必要なことも事実である。この論理が、中国では通用しないのだ。

Next: 財政赤字に転落するのは2035年…台湾侵攻の経済力もなくなっていく

財政赤字に転落するのは2035年

中国は、現在の60歳年金支給方式を続ければ、生産年齢人口の減少によって潜在成長率が急減速する。年金財源(企業従業員基本年金)は、不運にも2035年に枯渇すると予測されている。これは、政府シンクタンクの中国社会科学院が発表(2019年)した公式推計である。李克強・前首相時代の合理的な算定である。

世界的な格付け企業「フィッチ」の国家・超国家調査部門グローバルヘッド、エドワード・パーカー氏は、一般的に生産年齢人口の変化による経済成長への影響や、医療・年金費用の増加による財政への打撃が大きくなると指摘する。これは、格付け企業各社に共通の認識である。パーカー氏は、「2050年には韓国、台湾、中国の信用状態(格付け)は最悪の水準に陥っているだろう」と指摘する。『フィナンシャル・タイム』(23年5月17日付)が報じた。中国は、年金財政が赤字に転落する2035年に、どういう事態に陥るであろうか。台湾を侵攻する経済力はなくなっているであろう。国内の反対論も強まるに違いない。「台湾侵攻よりも年金をよこせ」という反対論が出ない保証はないからだ。

超高齢社会の中国が、戦争経済に耐えられないことは明白である。中国は、初めて大衆の「戦争忌避」運動に直面するとみられる。中国は、台湾と平和共存が最適な方法である。

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※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2024年1月10日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。
 


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