入院してから何日経ったのか、わからなくなっている。抗がん剤投与が始まり2日目の午後から始まった強烈な吐き気は翌日、翌々日まで続いた。流動食どころか水さえ飲み込めない。何も食べていないので元より出るものもなく、ただただえづき嗚咽の声を噛み殺す。ナースコールを鳴らし、吐き気止めの静注をしてもらい凌いでいく。


ポーチ型の抗がん剤、フルオロウラシルの投与は46時間かかるとの説明だった。2剤混合の抗がん剤点滴に2時間かかるので、合わせて約48時間。金曜日のお昼までにフルオロウラシルを開始出来れば、日曜日の昼前後には、胸のポートから針が抜ける計算になる。


※写真はフルオロウラシル。時間経過は左から右。風船内の薬液がゴムの収縮力で少しずつ萎み、約46時間かけて投与され続ける。

だが、実際にフルオロウラシルの風船が萎んだのは、更に10時間近く経った3日目、月曜日の朝だった。56時間の誤差はあると聞いてはいたが、予想以上であった。


サービス業界にいる僕としては、月曜日の午前中にフルオロウラシル点滴を胸に刺しながら接客している姿はどうにも想像しづらい。そもそも、2週間に一度の3連休や点滴しながらの業務を会社が許すかどうかもわからない。そして、この吐き気である。吐き気は水曜の朝まで続いた。


時同じくして、火曜日あたりから激しい下痢が始まった。1日に810回とトイレに駆け込む。実際には真っ直ぐに進まない点滴を吊ったキャスターをコロコロ押しながらだけど。


癌センター腫瘍科の担当医に拠れば、僕のこの副作用の出方は教科書的であると言う。つまり、期待していた効果が出ている証であると。2週間に一度の3連休、点滴をしながらの接客、例えそれがクリアーになっても、自分はちゃんと働けるのか。少し不安になっている。もちろん、やるしかないのはわかっている。




今日は令和元年1121日。入院から既に15日が過ぎた。食事は未だ許されず、入院2日目から2週間絶食状態だ。毎食時に出る流動食も、もはやフルーツ味のバリウムなのではないかと思うほどに、飲み込む毎に悪心が走る。


あー、サッポロ一番味噌ラーメンが食べたい。納豆食べたい。お寿司食べたい。焼売食べたい。目玉焼き食べたい。天ぷらそば食べたい。


あー、極限だと肉じゃないんだなぁ、やっぱりオレ、日本人なんだなぁ


と晩秋の高い空を見上げながら、しみじみ物思いにふけるのでした。