「立山三山~剱岳八ツ峰~本峰(中編)」 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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人の親になっても頂きを目指し、家族と共に攀じり続けるパパクライマーの記録

 

 (昨日のつづき)目を覚ましたら1時10分。1時起床予定だったけれど、夜間ポツポツと降っていた時間もあったし、少し遅らせよう。2時起床に変更して、3時30分出発となった。

 

 

 多くの隊が同じ方向へ向かっている。アイゼンを装着して剱沢を下降する。

 

 

 長次郎谷出合から谷へ入る。天気は良さそう。やったぜ!

 

 

 

 

 

 今年は雪が多いので、5,6のコルまで安心して登ることができた。長次郎谷をつめている多くの隊が、池谷乗越を目指しているのは意外でした。池谷乗越から本峰を目指す隊もいれば、三ノ窓側に回り込む隊もいるのでしょう。目的は隊それぞれ。

 兎に角、八ツ峰に隊が集中しないでなによりです。

 

 

 5,6のコルへの取付はAフェースが目印

 

 

 ハーネスを着けてコルを目指す。

 

 

 八ツ峰上半部の核心は最初の最初ここです。コルからのトラバース気味の登りは落ちたら死ぬそれです。2級+以下ですが、一手3級という人もいます。ザイルを出すのは恥ずかしいことではありません。心配ならザイルを出すべきでしょう。支点は豊富にありました。わたしたちはオブザベした結果ノーザイルで登ることに決めました。

 

 

 

 快適な登りを楽しみます。

 

 

 稜線に抜けると、八ツ峰下半部の5峰のシルエットがかっこいい

 

 

(右から別山、雄山、槍)

 

(八ツ峰下半部の5峰と4峰)

 

(左から五竜、鹿島槍)

 

 眺望が素晴らしい。

 

 

 6峰Dフェースの頭からの下りはクライムダウンできました。

 

 

 仲間には懸垂下降で下りてもらう。50m×1

 

 

 登り返して6峰のピークにタッチ

 

 

 これから歩く進行方向を見据える

 

 

 6峰からの降りは懸垂下降。50m×1

 

 

 

 7峰へ気持ちのいいクライミング

 

 

 登って来た稜線を振り返る。

 7峰からも懸垂下降して 50m×1

 

 

 8峰へ登り返す

 

 

 後ろを振り返ると登ってきた八ツ峰が見える。やっぱアルパインは晴れているに限りますな!

 

 

 8峰の頭への登りをオブザベして

 

 

 8峰の頭への基部に懸垂下降。50m×2

 ギャップがあって登り返しのある懸垂なので注意

 

 

 8峰の頭の登りの途中で仲間が来ないので一休み。(注:カムでセルフ取ってます)

 

 

 

 

 最後の八ツ峰クライミングを満喫

 

 

 八ツ峰上半部登りきりました。やったどー!

 懸垂の準備をしていると、後ろから、大きな「らーく!」の声といっしょに、落石の音、人が落ちているような音が聞こえてきました。うーむ、人でなければいいけど・・・

 

 

 仲間と最後の懸垂下降(50m×2)をして、池谷乗越に下りました。これで八ツ峰上半部というルートは終わり、地図上は破線ルートとなっている北方稜線に合流します。

 

 池谷乗越に下りると、長次郎谷に八ツ峰から懸垂下降しているクライマーがおり、稜線上と大声でやりとりしています。嗚呼やはり滑落事故があったんだなと察し、協力するために近づく。話を聞いてみるとやはりわたしたちの後ろを登っていたパーティが八ツ峰稜線上から1人滑落してしまったとのこと。

 40m近く落ちているのに、幸い意識があり、腰が痛い、腰が痛いと言っている様子。意識があるのは雪の上に上手く落ちた奇跡だと思う。但し、雪渓を滑り落ち、相当下に横たわっているのが見て取れる。要救と現在地の間にはシェルンドが無数に見て取れる。滑落して意識があるのも奇跡なら、シェルンドに吸い込まれなかったのも奇跡、雪渓を滑って落ちたのにそんなに遠くまで滑らずに停まれたのも不幸中の幸いだった。

 要救の仲間の方に、なにか必要なものがありますかと問うと、ザイルが欲しいとのことだったので、戻ってメンバーに救助協力することを伝え、サブリーダーとわたしでザイル他一式持って、アイゼン、ピッケルを装備して、要救のところに向かうことにした。

 

 

 準備して下り始めていたら、レスキューヘリが到着。あっもうわたしたちは不要だなと、後は救助の様子を見守り、テキパキと素早いプロの仕事を眺めていました。搬送された後、なにもできなかったのに、要救の仲間の方からお礼を言われ、いえいえ、無事でなによりですと、お答えして、池谷乗越に戻ってアイゼンを外した。

 

 さて、ここからどうする。自分たちの後ろのパーティが滑落事故を起こしたとき、自分たちはこの後のルート取りをどうすべきか検討しなければなるまい。八ツ峰で滑落事故と報じられたら、下界の仲間は間違いなく心配するであろう。下界の仲間に一報をいれなければいけない。しかし、現在地には電波が届いていない。

 また事故は理由不明ながら連鎖するものだ。いち早く山行を終えられるルート取りをするべきだ。となると、池谷乗越から本峰を目指すのではなく、幕営地に最短で戻れる長次郎谷に下りるべきだろう。メンバーの中には剱岳に登ったことがない者もいたが、理由を説明して納得してもらい、長次郎谷を下りることに決めた。

 さあ下りようとアイゼンをまた装着し、雪渓を一歩踏んだら不安がよぎる。。

 

 岩稜歩きが得意な仲間たちからは、雪渓歩きは不得意である旨の申告がなされていたのだ。それでもこの面子なら大丈夫だとわたしは思うし、ザイルを出せばより安全になる。長次郎谷の雪渓を下りられないなんてことはこのメンバーではあり得ない。が、しかし。が、しかし。不得意だと申告された雪渓に入っていったものだろうか。それこそ、事故を受けてルートを変更したせいで事故を呼ぶということにならないか。予定通り本峰へつめたほうが安全な気がする。うーむ

 

 うーむ

 

 雪渓を踏んだ一歩から反転、ごめん、さっき長次郎谷を下りると決定したけど、やっぱり本峰につめさせてほしい。理由は斯く斯く然然。これが最終決定。一発で決められず申し訳ない。

 

 

 またアイゼンを外し、計画通りに本峰へ目指すことになりました。上画像は池谷乗越から本峰へのルートに出てくる最初の壁を撮影したもの。見てわかるとおり、北方稜線は地図上では破線ルートになっているけれど、間違いなくクライミングの基礎知識が必要なバリエーションルートだとわたしは思います。皆さん、北方稜線にはしっかり準備してから入りましょう。

 

 

 北方稜線上に抜けて、電波が入ったので下界に事故のことを報告し、登山を続ける。北方稜線からは先ほどまで自分たちがいた八ツ峰を見渡すことができた。

 

 

 北方稜線の本峰へのつめは、気を抜けないガレのトラバース等あり、本当に気が抜けません。

 

 

 

 そんな北方稜線を抜けて、剱岳本峰がぐんぐん近づいてきます。

 

 

 そして八ツ峰と本峰をつなぐことに成功。無事でなによりだわ。

 

 

 さて、北方稜線に入ってからというもの、わたしは体調が著しく崩してしまい、極度の高山病を発症したような状態に陥ってしまいました。登りだろうと下りだろうと一歩出すだけで息が切れるのです。ひぃひぃ言いながらの本峰へのつめでした。

 

 剱岳本峰から幕営地までは前剱経由の一般登山道ですが、日本最難関の呼び声が高い一般登山道です。こんな状態では思いやられます。背負っていた縦走に不要なクライミングギアを仲間に託し、4年前のヒマラヤ登山を思い出しながら、最近ここまで追い込まれたことがないなというような厳しい下山をしました。

 

 

 

 途中に出てくる有名なカニのヨコバイは、確かに落ちると死ぬそれでしたが、ステップも切ってあるし、鎖も立派、高所や鎖場への準備をしっかりしてくれば問題ないと思います。場合によっては確保しながらでも渡れますしね。

 

 

 兎にも角にも、日が暮れる前に下山することができました。あー助かった。こんなに厳しいめにあうとはね。とほほ。色々と思うことはありますが、それは次回の総括でまとめます。(つづく)