(前編のつづき)
3.山行報告(2月28日)
夜間の暴風を避けるため、初日の幕営地をコルから大岩ノ下まで下げたので、起床を2時間早めて出発とした。今日も長い1日となるだろう。(3:40)幸いしたのは懸念していた暴風が吹いていないこと。低気圧は来なかったようだ。上空を見上げても雲が早いということもない。これは予報外れの好天パターンか。やはり山の判断は入山してからしてなんぼです。
暴風は吹かなかったけれど雪は降った。角兵衛沢のガレは雪化粧をまとい、岩雪崩を起こさないよう最善のルート選択を求められた。今回は夜間行となったので、仲間が何度か岩雪崩を起こしてしまっていたので、下に他パーティがいたら危なかったかもしれない。こういう些細な技術も積み上げていかないといけない。ガレの弱点をつきながら、右へ左へ角兵衛沢を登っていると、岩稜の下部に突き当たった。角兵衛沢は意識を左にもっていないとダメなのは分かっていたけど、思っていたよりも右を登っていたようだ。左へ向かうため、ザイルを出して岩稜ラインを左方向へ登攀しようかと思ったものの、仲間から右側のルンゼに入ろうと提案があり、偵察を出すとと登れるという回答だったので、角兵衛沢のコルへ出るのは諦め、鋸山山頂の東側のコルへ出るルンゼをつめることにした。
コルを諦め右へ入っていくと、登れると判断した仲間が登れないと下りてきた。なんで登れないんだよ!とワイワイガヤガヤ、スラブの上にアイスが張り付いる厳しい斜面と遊ぶことに。(@楽しい時間)仲間たちはスラブのアイスを大巻きして、雪の深い斜面をつめる。
雪の斜面は腰下のラッセルのような吹き溜まりがあったり、急な斜面では木登りになったり多面的で飽きさせない。
尾根にぬけたー
眺望も素晴らしい(北岳、間ノ岳、仙丈)
そして東側のコルから第1高点を落とす。夏のリベンジ達成!(8:00)
ここからは鋸尾根を第2高点まで歩く。ここからが本当の楽しい時間の到来だ。
1回目の懸垂箇所は10mなので30mザイルで対応。(8:50)
その先の痩せ尾根を慎重にわたり(9:20)
痩せ尾根の先で北側の斜面を鹿の窓までトラバースしていくのが正規ルートだけど、この日は雪が信用できなかったので、そのまま目前の岩稜を登攀することにした。
ほどよいレベルの楽しいクライミング。
そして登ってしまったからには、予定になかった下りがある。15mの懸垂下降を鹿の窓までやりました。(10:00)
夏には来られなかった鹿の窓をくぐり北側に出て、雪の斜面をまた尾根上へつめて第3高点で記念撮影。第3高点は夏には登れないピークです。(10:15)そこから少し先で20mの懸垂下降が必要な大ギャップに出る。枯れ木を支点にするか、枯れ木の5m上の立ち木を支点にするかは人それぞれ。わたしは一目で枯れ木で懸垂は嫌だと、上の立木で懸垂としました。(10:30)因みに、上の立木で懸垂する場合は下りる方向を間違えると25mでは届きません。まっすぐ下りるよう心掛けましょう。
大ギャップを降りたあとは、100mくらい下降して、再度尾根を登り返し、
最後のピーク第2高点登頂。我々のうち2名は夏も来ました。戻ってきたぜ!(12:30)
中ノ川乗越は尻シェードで片付け、ある意味では核心と言ってもいい、ただただ辛い熊の穴沢のガレを下降する。広い沢だけれど、歩きやすい弱点をついて下降していたら、どんぴしゃ登山道のマーキングにつながった。してやったり。登山道に出てからも下山は長く、戸台川との出合に到着したのは16時30分。ガレの下降はやはり時間がかかった。雪が多ければ楽だったのだろうが。戸台口駐車場に着いたのは18時40分。若干暗くなってしまいましたが、まあ予定通り。稜線独占、楽しい山行でした。
4.山行時間
12日8:20 戸台口駐車場―10:30 角兵衛沢出合―14:00 大岩ノ下(幕営地)
13日3:40 幕営地―8:00 第1高点―10:30 鹿の窓―12:00 第2高点―16:30 熊の目沢出合―18:40 戸台口駐車場
●12日行程5時間40分●13日行程15時間00分
5.まとめ
今回は天気に対するリスク、岩稜で想定できるあらゆることに対する準備、山行中の判断等々、色々としっかりとまとめられたので、余裕をもって楽しめる稜線行となりました。50mザイルしかいらないルートで合計90m分のザイルを持って山行させられることは、認識をともにしてない者には、過分な装備に感じられるかもしれないけれど、皆一応リーダーとして立ててくれ、しっかり歩荷してくれたのでなによりでした。体力、判断、雪への対処、天気への対応、すべてがしっかりはまり、とてもいい山行でした。楽しかった!(おわり)