近況560.あなたの知らないジビエの世界 | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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人の親になっても頂きを目指し、家族と共に攀じり続けるパパクライマーの記録

今日は昨年末に出会った特別美味しかった骨を御紹介したいと思います。冬と言えばジビエのシーズンです。昔はわたしも好んで食べに行ったものですが、山を始めてからというもの、所属山岳会にハンターさんがおりまして、うちの山岳会の花見や山菜パーティーには鹿肉が並ぶという案配でして、そうなると、クリスマスディナーのメインに鹿肉のステーキとか出されてもねってことになってしまうんですな。


しかし今回紹介するのは、そんなジビエからの一品なんです。わたしが生まれて初めて遭遇した素材、ジビエの王様とも女王とも呼ばれている、そうあの野鳥“ベカス”です。日本名だと“やましぎ”です。既に禁猟で保護対象となりつつある、ともて貴重な素材ですが、職場近くのイタリアン「オステリアポスタロッサ」さんが、昨年末に1羽入荷できたということで、ありがたく頂いてきました。



でーん。これがその“ベカス”です。お皿に足から頭まで盛られるのが定番の提供のされ方で、嘴から脳みそ、内臓はソースにと、余すところなく味わい尽くせる素材です。最初は中央にあるお肉を頂いたんですが、簡単にいうとレバーのような味だなあという程度の感想でした。内臓のソースだから当然だよなあみたいな。


でもね、驚くのはここからです。嘴をもって頭を食べたんです。脳みそをすするもんかと思っていたんですが、出されたベカスは嘴の先から、頭蓋までとても柔らかくすべて食べられちゃうんです。そして頭蓋を噛みつぶしたときの、なんとも言えない頭の味といったら!!


めちゃくちゃ美味いです。本当に美味いものがジュワーっと溢れてくる。衝撃的に美味かった。


1回食べた程度ではどんな味か到底説明できない。なぜなら初めて遭遇した味だから。知らない味だった。ネットで調べると色々と形容されているけれど、わたし的にはなにとも似てないとしか言えない。兎にも角にも、この頭の味は最高でございました。



そして、この頭の味にやられてからというもの、ベカスの他の部位の味もびんびんと分かるようになったから不思議。まるで天国への扉が開かれたかのようです。ベガスの面白いところは、小さいその体にも関わらず、これでもかと部位毎に味が変わること。


最初はレバーのようと表現しましたが、どっちかというと燻製の岩魚とかの味わいをもっともっと旨みで凝縮して強くしたような味わいと言ったほうが近い。けしてお肉の美味さじゃないんだよなあ、川魚の血合いとか骨的美味さとでもいうべきか。なんか信じられないくらい美味い。因みに、どの部位も鶏肉の味とは似ても似つきません。


しかし美味しかった。もうね、その美味しさたるや、残念ながら食べられる部分が完全になくなっても尚骨をしゃぶることを止められないほどでした。だってしゃぶってるだけでもめちゃ美味しいんだもの。わたしだけじゃありませんよ。わたしの隣の席に座っていた某お人もずっとしゃぶっていたのですから、大の大人をここまで豹変させるとは、これは確かに凄い素材だった。貴重な1羽と対面できて本当に幸せ。ありがとうございます。命美味しく頂きました。


まあ何処で食べても美味しいとは限らないでしょうが、「ポルタロッサ」さんのベカスは最高中の最高とネット上で形容しても恥ずかしくない美味しさでした。ジビエを美味しく提供するには素材もさることながら、腕あってこそですものね、うん。この日他にも



前菜盛り合わせ



アグー豚のTボーン等いただきました。





締めの黒トリュフのパスタも久々に脳みそを蹂躙されたような酩酊感に突入できた素晴らしい黒トリュフでした。



「ポルタロッサ」さん、本当にレベルが高いです。至福の時間をありがとうございました。皆さんもベカスに対面する機会があったら、躊躇なく頼んでみるといいですよ。小さいその野鳥には、驚くべき世界が詰まっています。


美食の歴史がこういうものをちゃんと発見し、調理法を完成させているということに、人間の業の深さを感じずにはいられません。人間というのは、この世にいるすべての鳥類の頭を丸ごと食べたり啜ったりしてみたんだろうか。誰かが人間の業を肯定すると書いていたけれど、その極まった世界に触れられたような晩餐でした。ごちそうさまでした。(おわり)