近況541.裸足で富士山(富士宮ルート)に挑む | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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人の親になっても頂きを目指し、家族と共に攀じり続けるパパクライマーの記録

 富士山富士宮ルート6合目雲海荘に70日間つめていた妻が下山するというので迎えに行ってきました。折角なので仕事納めの前日に入って今年3回目の富士山も登ってきましたよ。

 さて、富士山はこれで9回目、内富士宮ルートを歩くのは7回目。前回海抜0もやってしまったので、もう普通に富士宮ルートを登ってもなあと考えて、どうしたもんかと一思案。そしたら、もうこれしかないなと思いつきましたよ。はい、タイトルにもなっているの裸足で富士登山に挑戦です。

 そもそも、これやっている人はいるのかな?とネットで検索かけてみたところ、2人いましたね。裸足で登頂されている方が。そのお二方は吉田口からの登頂で、下山は履き物を利用したそうです。また富士宮口からトライしたものの7合目過ぎで断念したという記録もありました。この3記録がネット上に存在している数少ない記録のようです。

 ふむ、なるほど。これは面白い。富士山でもっとも裸足に不向きなルートは間違いなく富士宮ルートです。富士山オフィシャルサイトにも富士宮ルートの特徴に「全体的に傾斜が急で、やや岩場が多い」とあります。

 富士宮ルートは他のルートよりはるかに岩岩しているルートなのです。全ルート歩いたことがあるので間違いありません。その富士宮ルートの裸足登頂記録はネットにまだ落ちてない。それならわたしが最初に記録を残した男になってやろうじゃないか。

 ついでに全ルート対象にしても登りと下山双方を裸足で成功した記録はない。ならば、富士宮ルート初裸足登頂達成と同時に、富士山初裸足往復の記録も狙ってみようじゃないか。腕ならぬ足の裏がなるぜ。


 

 てなわけで富士宮口を8時40分登山開始。妻が山小屋の朝は忙しいので少し遅めに来いというのでこの時間帯となった。山小屋の御主人へのお土産やら、妻がお世話になった人へのお礼の品やらでとても裸足登頂に挑戦するような出で立ちではない。日本酒720ml×2本の手持ちが重い。


 

 6合目雲海荘にいる妻に手土産等を渡し、15分くらい談笑してから、いざ裸足登山へ!(こん時はまだ余裕感でまくりですな)


 

 さて早速で申し訳ありませんが、はっきり書いておきましょう。富士山は裸足登山には向かない山です。いやそんなことは分かっていたんですよ。でもね、わたしならなんとかなると思っていたんだわ。しかし、そうは問屋が卸さない。もう痛いのなんの。痛くない箇所が皆無と言っていいほどの悪条件ですよ。これにはまいりました。

 わたしは新7合目に着く前に、裸足での下山は現時点では不可能と判断しました。裸足での富士宮ルート登頂の一点に目標を絞ります。

 しかししかし、絞ったのも束の間、元祖7合目から8合目を目指している最中に、もう登頂も諦めようかなと思うようになった。だって痛すぎるんですもの。裸足にもっともよくないのは、足の裏に対して横方向に滑る圧がかかること。富士宮は急傾斜が多いので、小さな砂利石道のような状態でも、この圧がかかるため兎に角痛い。結果わたしが見出した作戦は、つま先だけで登るという作戦だった。


 

 つま先だけで歩いているので、結果的に自分の歩いてきた道を振り返ると、上画像のような足跡が残るのだった。動物の足跡みてえだな。


 

 逆に、上画像のような岩岩したところのほうがアルパインクライマーを目指しているわたしとしては楽でした。時間はかかるけど、ちゃんと足を置いても痛くない箇所を見出して、足を置けば痛みはない。でも完全にフリークライミングのホールド探している感覚だし、時間をくってしまうのが難点だ。適当に足を置くと岩が敵となって襲いかかる。時間はかかるが慎重な足置きが要求されます。


 

 そんなこんな、なんとか8合目まで来たけれど、山頂を見上げながらもう諦めようと思う。普段なら8合目まで来たら富士登山は終わったようなものだと感じるのだけど、今回はえらく遠くに感じます。時間的にも想定をはるかにこえていて、トタール6時間で山頂、長くても8時間と見積もっていたが、8時間じゃあとても着かなそう。このまま登ってもどうせ時間切れだなあ。いまから下りちゃおうかな。

 しかし、わたしは自分でブログに書いたことを思い出すのだった。そう、中央アルプス全山縦走敗退の件だ。あん時ギリギリまでやってこそ何某と書いた気がする。既に時間切れは間違いなくとも、時間切れいっぱいまでは頑張らなかったら書いたことと矛盾してしまうではないか。嘘つき呼ばわりされないためにも9合目までは行かねばなるまい。9合目まで行ってそこで撤退だ。


 

 後ろ向きな理由で9合目を目指します。これほど辛い山行は最近記憶がない。ああ、くそう。帰りてえなあ。もう止めたい、止めたい、止めたい、止めたい。

 しかし、止めるにも止められないということもある。この日は快晴もあってか、登山者が多く、兎に角声をかけられる。裸足の理由を尋ねてくる人、無謀を注意してくる人、応援してくれる人、様々いたけど、やっぱり一番多いのは喜んでくれる笑顔がありました。人はバカを見ると笑顔になってしまうのです。こちらも笑顔をみるともう少し頑張ろうという気がするから不思議です。ここでマラソンの沿道の応援と同じ原理が働きました。

 そしてなんとか9号目まで到着。しかし残念、時間がかかり過ぎた。やっぱり今下りないと妻と約束した18時には戻ることができない。今回は出発が遅かったのもいけなかった。よし帰ろう。

 ・・・まあしかし待てよと。・・・まあしかし待てよと。

 妻は果たして裸足登山なんちゅうバカなことに自ら挑戦した挙げ句に失敗して下りてくるような夫を求めているだろうかと。そんなことを考える。タイムリミットを理由に下山するのは間違いなく逃げだ。

 今夜は、雲海荘で行われる某氏の富士山1300回登頂記念の宴に参加させてもらうことになっていたが、わたしは完全なる部外者なので、宴開始時からいなくてもいい感じ。21時くらいから参加するのでちょうどいい。つまり18時に下山している必要はそもそもないのだ。

 はぁ・・・、やっぱタイムリミットは言い訳だよなあ。わたしが今日撤退を決めるなら、それは「裸足での富士登山は痛過ぎました、ごめんなさい」を理由にする他ないんだろうなあ。そうだよあな、そうに決まってるよなあ。撤退するにしたってそこまで頑張らないとなあ、ごめんなさいなしで撤退するのは嘘だよなあ。・・・はぁ。つらい、つらいけど、行けるところまで行こう。ちくしょうめ!

 自分を欺いて1つでも先へと一歩一歩足を運んできたのが9合目五勺です。普通ならあと30分で登頂できる場所だ。しかし今のペースだと1時間弱はかかるだろうな。行かなくてもいいかもしれんけど、行けるよな、ここまで来たらもう行ける。山やマラソンでお守りとして常に携帯してるカフェイン80mgを流し込む。はい、飲んだ。これ飲んだら、もう行かないわけにはいかないよ。


 

 そして山頂まで辿り着いたのだった。


 

 振り返れば美しい景色が。今日は本当に天気が良かった。


 

 さて山頂には着いたものの、富士山最高地点はまだ先だ。わたしはお釜についたら富士山に登頂したと思っているでの、今回は剣が峰は行くまいと決めていた。まあでもねえ、もう裸足で富士山頂には絶対来ないだろうからねえ・・・やっぱねえ、とほほ。最後の気力を振り絞って、剣が峰を目指します。


 

 この日の富士山は9合目五勺過ぎから風が強く、吊し雲(レンズ雲)を生で見ることができました。山頂の風はさらに強かった。足の裏が痛くて踏ん張れないから、よろける、よろける。剣が峰が遠い~


 

 ともあれ、なんとか富士山富士宮ルート裸足登頂成功です!

 安心してください、足の裏も無傷ですよ!


 

 そしてサンダルを履いて下山しました。登山をサンダルでやっていると色々言われることも多いけど、サンダルと裸足の間には天と地ほどの差があります。ああ履き物って素晴らしい。

 兎にも角にも、裸足での富士山富士宮ルート登頂成功です。ネット上には記録がないので、もしかしたら日本初かも。わたしのほうが先だという方がいたら教えてください。まあそういうところに重きは置いてないけど。

 しかし今回の山行は大変でした。つま先だけでほとんど登ったので、滅多にならない筋肉痛を味わい、富士山行としては異例の12時間40分山行。風も強く、おまけに寒い(地表が冷たい)という、裸足にはまったく向かない日でした。

 それでもなお、富士山という山塊を足の裏で感じながら登れたのは素晴らしい体験でした。足の裏を解放すると、どれだけのものを感じる機会を捨てているのかということに気付きます。裸足で富士山に挑み、富士山が普通の山とはまったく違う素晴らしい山だと再認識した次第です。

 残念だったのは、登山道にガラス片が大量に落ちていたことですね。わたしが知るかぎり、富士山はガラス片がもっとも落ちている山だと思います。今回は裸足登山という挑戦山行でありながら、ガラス片を拾いながら登るという清掃登山にもなってしまいました。

 まあでも拾ったガラス片も記念品と思えば良かったですけどねえ。素晴らしい富士山が何時までも裸足で登ることができる山であることを望みます。今回は偶然ながらよい山行をすることができました。これからも挑戦していきたいと思います。(おわり)