近況534.おもいもよらない夏③「夏合宿(中央アルプス全山縦走)」 | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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起床時間の1時より早い段階で目を覚ます。強雨が屋根を叩き、風が唸っているのが室内からでも分かった。聞き耳をたてながら1人悩まなければならなかった。この荒天の中2時出発した際のシナリオを。


暗闇の中、風と雨に耐えてモチベーションの低い仲間を歩かせても、消耗を激しくするばかりで、結果的には空木岳からエスケープすることになるのではなかろうか。そもそも仲間1名は前日こういう荒天でなくとも空木岳から1人エスケープするようなことを示唆していた。なにをか言わん。


現状、全山縦走は諦めていない風を装っていたが、実のところは越百山に到達(そこからエスケープ)を目標に切り替えている。この新目標を達成するにはどうすればいいか。2時出発を4時出発にした場合、越百山からのエスケープは時間的にゆとりがあまりない。いまのメンバーのメンタルからするとそこの問題から、空木岳エスケープを選択する可能性が濃厚だ。


でも仮に4時に出発を遅らせても、9時30分には空木岳山頂に着いているわけだし、そうなると、仲間の体力とメンタルの奇跡的な回復次第では、空木岳山頂に到着した時点で、仲間の内に朝早くのエスケープを良しとしない挑戦心がわき上がっている可能性もあるだろう。空木岳で再検討させれば、越百山までなら行くと言い出すかもしれない。そして越百山頂に到着したら、疲れていても後1日頑張れば全山縦走達成だと思い直し、奮起して安平路避難小屋まで到達できなくとも、奧念丈岳あたりまでは行きそこでビバーグという可能性はある。そして翌日全山縦走達成というシナリオだ。


既に諦めている全山縦走とはいえ、可能性は常に残しておくべきだ。全山縦走をしにきたのだから。わたしの出した結論は、2時出発で風雨に仲間を曝すよりも4時出発で楽に空木岳山頂を踏ませる。そこからの心変わりに賭けることにした。1時に目覚めた仲間に伝える。3時起き4時発に変更。



3時起床。深夜の荒れ模様はなりを潜めていた。外は通常の風雨のレベル。これなら行ける。早々と準備して4時に外に出る。仲間が出てこない。仲間から暗闇でこの霧では歩くのは困難だ、もう少し待とうとの提案がある。流石にそれは一蹴した(こんなの歩けないなら、そもそも論的に話しにならん)。



稜線上はずっと風雨が続き、日の出前に出たからといって御来光を拝めるわけでもなく、休憩も風のないところを選びながらの縦走となった。ペースは概ね高原地図のタイムと同程度といったところ。熊沢岳登頂5:50、東川岳登頂7:30。


中アは2955mの木曽駒に登ってしまえば、その後は登り下りしながら一端2600m弱まで下りるも、そこから2863mの空木岳に登り返してしまえば、もう登るという意味では辛いところはない(中ア南部は登りや体力よりも藪漕ぎ技術が要求される山域です)。





空木岳への登りは、鎖やハンドルで完全防備されている宝剣岳の直登より、クイミング要素が出てくる危なかっしいルートだなと思えました。兎にも角にも空木岳登頂が9時40分。



さあここで仲間に提案です。まだ朝早いけど、ここでエスケープでいいのか再検討して欲しいと。地図を出して検討し出す両名・・・


仲間「ここでエスケープします」


なんだあ、そうかあ、そうなのかあ。本当にいいの?ただ歩きさえするだけで全山縦走できるかもしれないんだよ?本当にエスケープでいいの?


仲間「ここでエスケープします」


そうかあ、そうか、そうか、そうか。よし、分かった。じゃあここ全山縦走挑戦は終わりにしよう。エスケープで!


この時点で全山縦走は可能だったのかと言えば、タイム的にも体力的にも可能だったと思います。それを可能ならしめなかったのはモチベーションの低さでしょう。空木岳山頂に9時40分にいたなら、越百山頂には14時30分頃には着きます。そこから奧念丈岳山頂には19時前には着けますから。1日15時間行動するだけで良かったんです。この計画だと奧念丈岳でビバーグする気力が必要ですけどね。そして翌日に奧念丈から大平宿まで11時間行動すれば、15時には大平宿です。これだけで全山縦走達成。



ともあれ空木岳登山口へ下りることになりました。稜線を外れればあっという間に青空が姿を見せます。印象的な風景でした。鷹打場まで下山してタクシーを呼び、林道終点の駐車場からタクシーに乗る。



近場の温泉こまくさの湯までで3500円かからない。そこで温泉に入って、目の前の明治亭で名物の信州産ソースロースカツ丼を食す。これはいままで食べたソースカツ丼の中で一番の美味さだった。このソースカツ丼に出会うためにエスケープする運命だったのか?!ってそんなわきゃありません。


わたしが今回我を張らずに無理を通さなかったのは、これが個人山行ではなく、合宿と銘打っているからです。合宿はメンバーに能力を求めず誰でも参加可能にしています。参加したメンバー各自が能力に応じて、目的意識をもって山行に挑んでくれればいいのであって、別に山行計画の完遂が目的ではありません。


個人的には中ア全山縦走は何時でもできると思っているし、今回やらなくても全然気にならない。わたしのことだからなんだかんだ書いてても結局全山縦走やってしまうんでしょう?と考えながら読んでいた皆さん、今回はあえなく敗退です。


原因は、計画に対する準備不足、悪天候への準備不足、基礎体力の問題も含め、ほぼすべて入山前に解決可能な問題でしたが、今回の敗退をバネに各自向上してくれれば、合宿は成功なのですからそれでいいんです。



さて一応掛かった移動料金の続きを記しておきます。こまくさの湯から駒ヶ根駅までのバス代は忘れてしまったけど300円前後かな。そして駒ヶ根駅から伊那市駅まで飯田線が240円。伊那市駅から桂小場までのタクシーが4000円に届かない程度かかりました。


合宿を1日早く切り上げてしまったので、明日1日暇になりました。仲間1名を誘って久しぶりに古賀志山でクライミングでもしようということになったのですが。(④につづく)