近況472.新人教育「山スキー」後編 | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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後編は、ギアについて押させておいて欲しいことと、栃木バックカントリーミーティングで学んできた主だったところを展開してみます。


ギアについてはここでは簡潔に2点のみ書きます。基本的なことは自分で把握してください。


まずビーコンについて。自分で所有しているビーコンの性能は説明書を読んで把握してください。でないと、無駄のない捜索活動を行うことはできません。大事なのは、電池寿命と信号最大到達範囲と探索幅です。


その中で絶対押さえて欲しいのが、自身のビーコンの探索幅です。これを知らずして無駄のない捜索活動はできません。併せて10m20mという距離を目測で分かるようになっていると素晴らしいです。


次に、わたしが認識していなかったことを1点。スコップですが、刃先に角度(尖っている)がついているものがオススメだそうです。たまに刃先が真っ直ぐなスコップがあるようですが、それだと本当に雪が硬いときには掘れないらしい。せっかく所持するのなら、有効なものを持ちたいですよね。


これでギアの話しはお終い。ここからは栃木バックカントリーミーティングで学んだことを3点に絞って報告します。




1. 雪崩対策についての心構え

雪山に入るには、ビーコン、プローブ(ゾンデ棒)やスコップの携帯および使えることが前提です。それは、なんとなく頭に入っているというだけではなくて、岩登りでいうところの「支点が作れる、ロープの操作ができる、パートナーの確保ができる」というレベルで使えることが必要になります。


雪崩に巻き込まれた際に、自分が助け出してもらうためにビーコンを装備するのではなく、仲間の安全を確保(ビレイ)するために、三種の神器を携帯していると考えなければなりません。


つまりたまに聞くビーコン不要論ですが、ここでは論外ということになります。ビーコン不要論は自分が助けてもらわなくてもよい、または雪崩が起きるような斜面に取り付かないからこそ発生する議論ですが、自分が雪崩リスクのない斜面にしかルートを設定しないからといって、そのルートの両脇には雪崩リスクのある斜面や沢が存在し、またそこを登ってくる良い意味で奇特なパーティーがいます。


彼らは狭義の意味では仲間ではないけれど、広義の意味では同じ雪山登山を楽しむ仲間です。彼らが雪崩に巻き込まれたときにビーコンがなければ捜索するという選択肢をもてません。彼彼女らを捜索しろとは言わないけれど、「捜索する・捜索に協力できる」という選択肢は、雪山に入っている者として備えておくべきです。


わけで、仲間の安全を確保(ビレイ)するために、三種の神器は携帯し、的確に使用できなければなりません。わたしもこの程度のことは頭にありましたが、三種の神器をクライミングのビレイやロープワークと同等という意識でまでは考えられていませんでした。ここは多いに意識改革させられた部分です。


ということは、当然シーズン始めに仲間で集まって装備確認や訓練を行わなければならないということになります。もちろんうちもやってはいるのですが、毎年シーズン始めに仲間で集まって“スタートに訓練ありき”という感覚では行ってはいませんでした。


そして、訓練にはスコップの訓練も加えなければなりません。硬い雪を掘るのがいかに大変か、掘るフォーメーションについてなど、1年に1回くらいはやってしかるべきだと思います。




2. 弱層テストの意味

弱層テストは天気読みの答え合わせに過ぎないということです。現場で弱層テストをしてはじめて雪崩リスクをはかるのでは遅い。斜面に取り付く前に、弱層テストできない上部から雪崩は襲ってきますので、弱層テストしてから判断するようでは命を落とします。


それに山スキーでは、滑る斜面毎に雪質は変わりますから、その都度弱層テストなんてしてはいられないはずです。弱層テストは答え合わせという感覚にとどめ、雪山に入るかどうかの当日のリスクに対する答えは入る前に完成させておく必要があるでしょう。少しでも不安なら入らなければいいだけのことです。




3. 雪崩リスク(天気)読み

そこで雪崩リスク(天気)読みの精度を高める必要がでてきます。オススメしたいのが、Powder Search 2015http://powdersearch.jp/)パウダーサーチを有効活用することです。


山屋が雪山縦走する際は、天気読みは高層天気図を分析するだけでよいかもしれません。しかし雪崩リスク読みはそれだけではダメです。数週間前から①気温、②降水量、③風向、④風速、⑤日照量、⑥積雪量、これらすべてを把握し、総合的に分析してはじめて雪崩のリスクは見えてくるのです。


とても難しい作業ですが、これを見える化してくれるサイトがパウダーサーチです。本サイトを有効活用し、自分なりの見える化したデータを蓄積していくことが、雪崩リスクの低減につながります。


また見える化することで、慣れ親しんだエリアの小差にも気付くことができ、熟練者でも巻き込まれる該当エリア初の雪崩事故といったものも回避することができる可能性があります。(見える化してあるグラフは嘘をつかない!)


雪が降った際に、どのくらいの風がどちらから吹いていて、どう日照をうけ、その際に気温がどう変化していたのか。自分の立ち入る斜面は、どちらの方角に向いていて、どの程度の傾斜なのか、これれらをすべて総合的に考察する必要があるのが雪崩リスク読みです。


山屋の縦走は高層天気図読みでいいかもしれませんが、山スキーをやるのなら、この域に達する雪崩リスクへの対処をしておく必要があります。わたしはいままで、残念ながら山スキーをやる際も高層天気図にて、積雪量と風、気圧配置とその動向あたりしか読んでいませんでした。自分の登る斜面の日照や風速、風向き、気温の上昇・下降の動向等々、言われてみれば、確かにこういうものを加えることで、当日の入山エリアやルートを想像しやすくなります。


山スキーをやる人は、このレベルの雪崩リスク読みをすることをオススメします。そして見える化したグラフを自身で蓄積することで、慣れからの回避もできるようになるし、どういう時に雪崩が起こるのかというキャリアに繋がっていきます。


以上です。駆け足でしたが、折角なので参考までに書いてみましたのでご活用ください。(おわり)