昨日、所属山岳会の新人教育「山スキー」を担当してきたので、ネット上にも展開しておきます。資料を作成したのですが、昨年の「雪崩」のときのような大部分がオリジナルに近いという感じではなく、初心者向けのサイトにある文章に加筆編集しただけの資料なので、ネット上にそのまま転載できません。
そこで、山スキー初心者さんはそういうサイトを利用して自分で勉強してもらってですね、ここでは一応中堅どころでも見通しがちな点に絞って、書いていこうかと思います。
新人教育2015「山スキー」(前提のはなし)
1. “山スキー”は雪山登山です。
山スキーは雪山登山です。命にかかわる判断を迫られるときが随所に出てきます。けしてレジャーではありません。下画像は谷川岳の稜線ですが、こういう箇所をスキーブーツやボードのブーツで歩くには、それ相応のスキルが必要なは分かりますよね?
2. 「山スキー」と「バックカントリー」の違い
そもそも山スキーをしているつもりなのか、バックカントリーをしているつもりなのか、そこからはっきりさせておく必要があると思います。山スキーは、山登りの手段としてスキーを選んだ山屋がやっていることです。それに対し、スキー場に飽きたり、さらなる快感(パウダー)を求めて、ゲレンデを飛び出してきたスキーヤー達は「バックカントリー」をしていると思います。
両者には明確な違いがあります。「山スキー」をやっている山屋には、最低限の読図の基礎、アイゼン歩行技術、天気読みなどのスキルが備わっています。バックカントリーをしにきている人の中には、読図がまったくできない人もいると思いますし、ピッケルやアイゼンを触ったこともない人も多いでしょう。
どちらがどうということではなく、同じ遊びをやっていてもその人のルーツを知っておくということが重要だということです。スキーの滑降技術が天才的に上手い人がいたとしても、その人が山スキーの熟練者かといえばそうではないことがあるということです。隊を編成する際に、そこを見誤ると事故が起こす要因となります。
まあでも、山スキーヤーよりもバックカントリー目当ての方のほうが、事故にあう可能性は高いでしょうね。何故なら、山スキーヤーはスキーに登りを求めているので、滑りは二の次。雪崩リスクが少しでもあれば、折角登ったのに、気持ちの良い沢を滑らずに、尾根を滑ることを簡単に選択できます。
この前の大戸沢岳BCのリーダーは山スキーヤーなので、中ノ沢への滑降を雪崩リスクがありそうだと、若干躊躇したと言っていました。わたしはその斜面を滑り頃だと思って楽しんで滑ったわけです。あの斜面を滑らないという選択肢はあの日に限ってはありませんでした。
そんなわたしを区分けするなら、わたしはスノーボーダーなので、山スキーに登りを求めているわけもなく、必然的にバックカントリーをやっていることになるのですが、ルーツは山登りから入っているので、最近多くなってきている融合型ということになるかもしれません。
3. スキーヤーとボーダーがいる隊を編成する際の注意
まずはルートやエリアの確認を密にし、ボーダーが都合の悪い点は話し合っておく必要があります。例えば昨年滑ってきた芝倉沢BCをやるなら、ボーダーは最後数㎞歩きます。事前にそれでも良いか話し合っておくべきでしょう。
また、ボーダーはスキーヤーが思っているような場所では止まれません。加速をつけるためにある程度の斜度が必要になるのです。スキーヤーらが止まっているところでは止まれずに、別の斜面で1人寂しく止まって、皆のことを眺めていたりします。
ボーダーがスタートできるところで、止まってあげるのも優しさですし、結果的にパーティーの迅速な下山につながります。
4. 登りで無理をしない。スキーで登れるようになると頑張りすぎて行き詰まってしまい、板を外せなくなるなんてことが場合によってはあります。アイスバーンをスキーで登っている時なんかも危険です。早めに板を外すとか、アイゼンを装着するとかいましょう。
5. 山スキーのリスク
雪崩、ルート迷い、滑落、転落、衝突、ホワイトアウト、落とし穴、重雪に板がささる、木の枝につかまる、など様々あります。
一番のリスクである雪崩については昨年作成した資料を見ていただいて、
新人教育「雪崩」前編
http://ameblo.jp/tama-xx/entry-11788966496.html
新人教育「雪崩」後編
http://ameblo.jp/tama-xx/entry-11788976129.html
ここでは落とし穴について書きます。雪山には落とし穴があります。それは樹木の周辺だけでなく、雪原や尾根にもあります。雪原や尾根にある落とし穴は、危険予測するのは不可能に近いです。上画像の仲間が落ちそうになった尾根の落とし穴は、数十mという深さでした。単独でBCに入り、仮に底まで落ちていれば中で凍死していたでしょう。山スキーに単独で入ることのリスクをゼロにすることはできないことを理解してください。
本日はここまで。後編ではギアのちょっとした実践(押さえておいて欲しい部分)と、栃木バックカントリーミーティングで学んだことを展開したいと思います。(つづく)