山行報告【谷川岳マチガ沢東南稜(アルパインクライミング)】後編 | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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人の親になっても頂きを目指し、家族と共に攀じり続けるパパクライマーの記録

(前編のつづき)




天候の悪化が予想されるため、3ペアの内2ペアが取り付くことになりました。1ペアはマチガ沢をそのまま直上して稜線へ出ます(それはそれで難しい)。上記トポにあるように計3ピッチ。わたしたちペアはアイゼンで、もう1ペアはクライミングシューズに履き替えての登攀になります。




先行はわたしたちペア。リードはわたし。1ピッチ目がⅣ級で本ルートの核心となっていますが、その通りです。ここが一番難しかった。凹角の中は濡れていて、いいホールドはほんとどが使えない。アイゼンなので足も限定される。え?これ登れないんじゃないの?という自分の能力に限界を感じる時間が続きます。


背中を押し当ててずり上がろうと思うにも、アイゼンなので踏ん張れない。やっぱりアイゼンなんかで登るんじゃなかったと、後悔の時間・・・


あー、ぶら下がってるお助けスリングを掴んじゃおうかなあという、逃げたい気持ちとの戦いの時間。そんなこんな10分くらい悪戦苦闘していたら、濡れていない小さなカチを発見!これだよ、これ。キター!ってなわけで、そこを抜けたら、あとは楽、アイゼンなので慎重にですが、ルートも凹角ではっきりとしているので迷うことなくピッチをきれます。




道中支点は豊富ですが、新しいとは言い難いので、自分のカムナッツも使いました。終了点もカムナッツで補強したほうがいいルートだと思います。


2ピッチ目は、30mⅣ級-。凹角とクラックの2ルートから選択できますが、わたしたちは凹角をチョイス。後ろのペアはクラックに入っていました。ここもアイゼンで登るには慎重さを要しましたが、それほど難しくはありません。途中で雨が降り出したので、アイゼンでかえって良かったと思うくらいです。


しかし、雨は信じられないスコールのような豪雨。おまけに落雷がはじまりました!


あーどうしたもんかと。取り敢えず、懸垂で沢に下山するか、稜線に出るしかないか、岩稜で危険が去るまでじっとしてるか、選択に迫られます。セカンドを2ピッチ目の終了点まで上げて、検討しようと思っていましたが、2ピッチ目の終了点から、稜線で沢を直上したペアが待っているのが見えました。


この落雷の中、二人は稜線で待機しているのです。いやいや、小屋に避難しに戻ってくれればいいのに。しかし心配なのはお互い様のなのでしょう。これはいかん。稜線にいち早く出る選択肢しかない!


2ピッチ目の終了点からはⅡ級です。リッジに出たら、草混じりの急斜面をつめていく感じですね。途中まではロープを出してスタカット、もうザイルいらないと思うところで、スピードアップするためにザイルをしまいました。




画像のとおり、3ピッチ目は登っているのが稜線からまる見えなので、このルートは別名「ヒーロールート」と呼ばれているそうです。


このルートは、オキの耳に直で出られるのがいいですね。この日はスコールと雷で登山者は皆無。見ていたのは沢をつめて先行していた2人だけです。そんな悪天候の中、稜線で待って頂いて申し訳なかった。。




山頂にでる前に、雷雨の危険は過ぎ去りました。後ろのペアが来るまでに記念撮影。雷雨の中のクライミングは良い体験になりました。




そのまま西黒尾根から巌剛新道を使って下山しました。皆フラフラになってしうほどの14時間山行でした。わたしたちはもともとロープウェーを使う予定はありませんでしたが、皆さんが本ルートに挑戦するときは、ロープウェーの最終便に間に合うような計画を立てて、ロープウェーで下山することをオススメいたします。




マチガ沢見晴らしから自分たちの行程を眺めて「やれやれだぜ」


4. まとめ

最終的には久々のヘッデン使っての下山。計画書より2時間も遅い下山となってしまいました。夜は宴会予定となっていたので、宴会から参加する仲間が心配して登山口で待っていてくれました。申し訳ないことをしました。


今回は悪天での登攀決行判断、登攀中のスコールと雷に対する対処、全隊員の山力と計画の適正確認、普段一緒に登っていない別山岳会の隊員含む複数人パーティーの動かし方、などなど、勉強になること多数でした。


ベテランがバックに控えていてれくたので、自分が普段判断しないようなことばかりやって、無理して登ってきてしまいましたが、結果は無事登頂はできたので良かったとするのか、はたまたそれは結果論であり、荒天の登攀をしてしまったという意味で、失敗だったと判断するのか、難しいところだなと思っています。


一応最終結論としては、素晴らしい失敗ができて良い勉強になったということにしました。結果オーライではやはりいけません。反省しこの経験をまた次に活かせればいいかなと思う今日この頃です。


取り敢えず、マチガ沢東南稜自体は楽しかったですね。折角のヒーロールートですから、快晴の日曜で登山者の多い時にでも、もう一度登攀して、山頂できゃーきゃー言われてみたいと思います。ここはもう1回だ(笑)。おわり