近況114.ツタンカーメン展 -黄金の秘宝と少年王の真実- | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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9月諸島じゃなくて初頭、上野の森美術館で開催中の「ツタンカーメン展」に行ってまいりましたが、さて困ったね。褒めるのは簡単なんだけどさあ、あんまり褒めたくないんだよねこの展覧会。わたしは言ってしまうけど、3000円くらいの代金のもとが取れたかは疑問です。高いメリットはあるよ。高いことでお客が減って快適な環境で鑑賞できたとかね。入場待ちの列は長かったけど、ちゃんと整理券配布で客数調整してたから、混雑感がまったくなかった。これより混んでいる美術展や展覧会は五万とあります。つまり空いていて良かった。でもそもそも空いてりゃいいってもんじゃない。こういう展覧会には大勢が観られるチャンスを用意して欲しいわ。貧乏人は来なくていいと行っているようなものじゃないか。


まっそんな話しはさておいて、わたしが感じるのはね、美術展や展覧会なんかに足繁く通っていると、どんな作品だって一期一会だと気付くということなんです。わたしがここ最近出会った作品群にもう一度会いたいと思ったって、エジプトに行くのと同じような労力がいりますよ。逆にどこにあって誰が作ったのかも分からない作品を考えれば、エジプトに行けば絶対出会える今回の展示品のほうがまだ会えるチャンスが高いと言える。2007年に東京国立博物館で開催された「大徳川展」には圧倒されたけど、あの作品群にだって、おいらは死ぬまでにもうお目にかかれないだろうね。作品の価値に距離は関係ないと思うんだよ。


で、そんなことは分かり切った上で、なんで満足感が薄いのか考えると、それはこの「ツタンカーメン展」に展示されている多くの展示品をわたしはもう浴びるように見てきてしまっているということなんだな。つまりは映画版もドラマ版も舞台版も漫画版も見た挙げ句、ようやく辿り着いた原作小説といったところか。そういう意味で、この作品群は間違いなく偉大だ。1900年の初期の頃から、ありとあらゆる分野に影響を与えてきたのがよく分かる。それが巡り巡って、日本の一市民がふれる程度のアート(エンタメ)にまで継承されてきているわけだ。


あれも影響受けてるし、これも影響受けているし、と思うわけ。つまりアートとしては出がらしか残ってない。芸術論を突き詰めた作品が並んでいるわけではないから、そこには教科書を読むような退屈さがある。ようするにこれはわたしの個人的な問題なんだろうと思う。「レーピン展」の投稿時にも書いたけど、わたしは自分の中にないものを求めて美術展や展覧会に行ってる節がたぶんにある。だから、こんな豪華なエジプト展より数年前にトーハクでやってたスリランカ展とか、西洋美術館が昨年やってたギリシャ展とかのほうが圧倒的に刺激的だった。


ともあれ、こういったことも行く前から分かっていたんだけどね。なんでかってと、ミニシアターに色がちゃんとあるように、美術館や博物館にもそれはあって、上野の森美術館とわたしはとかく相性が悪い。フジサンケイグループが運営しているからってわけじゃないだろうけども、本館って上野にあってなんか一館だけ浮いているよね。現代美術に力を入れているからなんだろうけど、どうもアートがメディアナイズされていて好きになれない。本展もそうだけど、「井上雄彦 最後のマンガ展」とかもそうだった。「チベット展」ではやらかしたし、どうなんだろう、なんであんまりのれないんだろう。


ひとつに本館の企画が打ち上げ花火的要素が非常に高いんじゃないかってことがある。打ち上げた後に回収する感じがしないのが好きじゃない。そう、わたしの好きな場所というのは、お客を育てるような意識がある場所なんだよね。つまりはお客にまた来てもらおうという意識があるかどうか。一見さんに門戸を広げる丁寧さは当然持ちつつ、いままでの展示を見てきて成長してくれているという信頼のもとに次の展示が決められていく。そういう感じが好きだな。わたしがよく行く美術館や博物館に携わっている人にはそういうプライド意識がちゃんとあるんだろうね。


グッズの売り子さんの笑顔が普通の展覧会よりはるかに輝いているんだよね。綺麗な人ばっかりでね。そういう風なところに触れ、さすがフジサンケイグループと思ってしまうわけだけども、3000円近くも取っていれば当然かとも思う・・・長いよ!


またしょうもないことを書いてしまった。いやいいものも多かったし、個人的に不満はないんだけどさあ、もっと上の提示の仕方があったんじゃないのって思っちゃったんだよね。例えば、ある程度のアート展なら説明映像って作るじゃない?真面目に説明してくれるアレね。そういう映像一つ取ってしてもエンタメ化されちゃってるんだよね。コマーシャルじゃないんだから、展示内でまで煽らなくてもいいじゃないかって思うわけ。


それにこれ「ツタンカーメン展」じゃないんだもの。「ツタンカーメンの親族展」だったんだもの。これ「鳥山明展」でドラゴンボールを展示しないようなものよ。だからこそタイトル含めて売り方考えないとダメでしょ。内容はダメではないのよ。売り方がダメ。もっとこの展示品に関わる人物とツタンカーメンとの関わりを相関図でなく、映像とかなにかでもっと上手く見せて欲しかったなあ。新学説とかもしれっと書いてあるだけじゃ、面白味がないじゃない。ようは見せ方よ、見せ方・・・って長いよ!


わたしだって筆起きたいよ!筆折ってもう寝たいよ!(深夜書いてます) でも簡単に良かったねで終わらせられないんだよ。今年1,2を争う上野のイベントだったんだからさ。なんつーかなあ、カノポスは目を瞠るほど素晴らしかったし、金金のどでかい人型棺とか黄金のスカラベ襟飾りとか短剣とかね、圧倒されるような財宝は山のようにあったんだけどさ。物はいいだけに勿体なくて悔しいといったところなのかも。(おわり)