近況109.国立トレチャコフ美術館所蔵 レーピン展ほか | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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ミュージカルを観劇するために渋谷に出た際に、ちょっと時間ができたので、Bunkamuraザ・ミュージアムではいま何が開催されているんだっけか?と覗いてみたら「レーピン展」だったので飛び込んできた。レーピンさんをわたしが以前から知っていたわけもないが、美術館のまとめサイトはよく覗いているので、「レーピン展」が開催されることは知っていた。“ロシア絵画の巨匠”と称されているらしい彼だが、日本では初の本格的な回顧展になるんだそうな。わたしは常々そこに興味が持ってしまう。


つまりは、ロシア芸術に触れる機会のあまりの少なさにである。映画を浴びるように観ていても、ロシア映画は日本にはまず入ってこない。2006年から2008年にかけて、毎年2本は観られていたが、2009年から2011年の間は一本も観ておらず、ロシア映画の新作となると今年の「ファウスト」を観賞したのが、ほんと4年振りの新作ロシア映画であった。ロシアに触れる機会は驚くほど少ない。いまや中東映画のほうが圧倒的に新作を目にする機会が多いのが現状だ。


ロシア映画を観ていて面白いのは、当たり前といっては当たり前なのだが、アメリカナイズされてないことだし、アジアの影響もほぼない点にある。あの国はよそ者には分からない何かがある。それがアートに現れていて、わたしたちが当たり前だと思っていることを平然とやらなかったり守らないから驚かされる。そこを重要視するのかとか、あれを軽視するのですか?みたいな。ロシアの小説をふれていても死生観や権力に対しての立ち位置に常々驚かされる。だからロシアのアートに触れる機会は貴重だ。レーピンさんが誰かはともかく取りあえずなんであれ観ておく価値はある。


鑑賞後。


いや、これは驚かされたね。流石はロシア絵画の巨匠と称されているだけのことはある。長々と前振りしてきたとおり、ロシアの絵画には、わたしたちが目にすることができないロシアの庶民のくらしや習慣や伝統などをモチーフにしている作品は、それだけで新鮮に映りわたしを楽しませてくれたのだが、レーピンさんはそこで収まるような人じゃなかった。ちゃんと特筆すべき個性(才能)をお持ちの方でした。


美術展中の説明書きなどを読んでいると“リアリズム”という言葉がよく出てきたのだけど、確かに写真としか思えないような作品があったり、その描写の緻密さには舌を巻いたけど、この人にはその真逆である主題の過剰表現をしているようにしか思えない。でないと、こんなに凄く肖像画ばかりが並ぶわけもない。レーピンさんが書く人物は驚くほどその対象の内面が見透かし、それが絵筆によって表現されてしまっている。こんなに人は分かりやすくないはずだ。これを写実主義といっていいのか。これが写実主義なら誰でも見ただけで人の内面が読み取れることになるぞ。


レーピンさんの作品は明らかに彼が見て感じたものが表現されているのであって、写実主義とは違う気がする。彼のフィルターがかかっている。またはそのような過剰とも思えるような主題ばかりを追い求めていたということなのだろうか。彼の作品はあまりに容赦がなく、赤裸々であるが故に目を背けたくなるようなものばかりだ。怖い絵が多い。肖像画でなんでこんなにと、説明書きを読むと、初中出てくるこの一文「完成後モデルは○日後に亡くなった」。あーと思う。あーなるほどと。でも、これが病院に行って末期の患者を書いているわけではないらしい。どうも読むと死ぬ直前に書いたのではなく、書いたあと死が偶然に訪れているように受け止められるのだ。例えば殺されたりといった具合の。


ロシアにあって庶民の顔に個を描写し、肖像画にその内面をあぶり出す。それでいて、家族をモデルに描いた際の暖かみのあまりのギャップ感! レーピンさんという人が分かる気がします。最初はこんなに人には書かれたくないと思ったけど、肖像画というのはこういう人にこそ書いてもらわなければ意味がないと思えるようになったかな。


まあ特別人に薦めるような美術展ではありませんが、彼の作品群はWikiで簡単に御覧頂けます。興味を持たれた方は是非どうぞ。



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で、長くなったので簡単に書いてしまいますが、Bunkamuraのギャラリーではいま「レイモン・サヴィニャック展 だれもが振り返る、魔法のポスター」が開催していて、これは無料で鑑賞できるので、こちらも良かったらどうぞ。ポスターアートって、一番身近なアートだと思うのよね。こんなポスターが4万もするの?とかあーでもこれだったら4万でも欲しいかもとか、結構値段と共に見ていくと面白いですよ。って、調べたら今日までだった。間に合わなかったか、残念。


兎にも角にも秋到来。たまには美術展もいいものですよ~。(おわり)