15p. 山行報告(南アプス全山縦走達成記録)総括後編 | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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(3)火器類や食器類は必要なかったのか?

わたしは今回の縦走中ずっと冷や飯を食べた。水で戻したアルファ米に常温のレトルトソースをかけたものやフルーツグラノーラである。火器類を持っていかなかったからお茶や珈琲すら飲めなかったが、果たしてこれは問題なかったのか。


というのも、火器類というのは遭難時に必要という考え方があるらしい。わたしは正直火というものにまったく関心がない。縦走中暖かいものが欲しいとはびた一文思わなかったので、自分のことがよく分かっていたわけだが、問題は遭難した際に火器類を求める自分がいるのかということである。遭難した際に心落ち着かせるため湯をわかし飲みたいと思うのかどうか。こればかりはやってみないと分からないが、正直思わないっぽい気がするんだけども(夏の場合)、でもわたしは先輩の教えは取りあえず受け入れ、不要なら受け入れた後に削るという考え方をしていこうと思っているので、取りあえず、今後は火器類を持とうと思う。もの凄く小さいボンベにヘッド、それに合うサイズのコッヘルがあるらしいから、それを購入し通常装備に組み込むものとする。


食器類が必要かどうかという点も必要なかったというしかない。ただ、一度、山小屋の御主人が御茶を沸かしてくれて、自由に飲んでくださいと薬缶で提供された時、わたしはコップなどを持ち合わせていなかったので、ジップロックで飲んだわけだけども、それはやっぱり人前でどうどうとジップロックで飲む度胸はなかったから、人に見られないところで飲んだわけで、その時はコップの1つくらい持ってくれば良かったと思ったけれど、やはり次回同じ長期縦走をやるにしても、わたしはコップを持参しないだろう。ジップロックをコップ代わりにすれば足りる。まあこれからは先に書いた小さなコッヘルがコップ代わりになるだろう。


因みに、こんなことを書いているけれども、あくまで今回のような長期縦走=少しでも荷物を軽くしないといけないという時の話しであって、普段の縦走中からジップロックで水を飲み、飯は冷や飯でも構わないぜ、ワイルドだろ~なんて思っているわけじゃないから、悪しからず。これは例外中の例外の話しをしています。


(4)ツェルトのポールは持参するべきだった

今回の縦走の最大の汚点はストックの紛失である。わたしの体力が持ったから良かったものの、ダブルストックでの山行予定がストック1本の山行に変更を余儀なくされたのは、体力的な意味においても、かなりのプレッシャーだった。ダブルストックならもっと楽に縦走を成せたであろうから、重要アイテムは絶対に紛失してはいけない。


わたしがストックを紛失したのは、アサヨ峰でガス迷いをし藪漕ぎをした時だった。もとの道に戻ろうと藪漕ぎを開始する前に、ストックは不要とザックに装着したのだけど、やはりガス迷いの焦りからか、ストックをちゃんと装着できていなかったようで、藪漕ぎ中にザックから外れ紛失するはめとなった。ザックの中ではなく外に物を装着する場合は、しっかりと装着し、1つが外れても2つめのひっかかりがあるような工夫をする必要がある。そんなことは普段から分かっていてやっているのだけど、こういうガス迷いみたいな焦っている時には怠ってしまうらしい。焦っているつもりはなかったけれど、そういう普段できていることができていなかったのだから、やはり無意識の焦りがあったというしかない。辛い状況にいるときほど、普段より増して正確に事を成させねばなるまい。


ともかく、ストックを無くしたのは山行を大きく変えた。ダブルストックもそうだけども、ツェルト泊ができなくなったのもそう。わたしはストックをツェルトのポール代わりで持って行ってもいたから、1本無くしたことでツェルトを張れなくなってしまった。南アは小屋が豊富だから良かったものの、もし、これが小屋のない幕営中心の縦走だったら、どうなっていたか。いや、確かにストックは1本でもじつはツェルトは張ることはできた。だから問題ないといえばない。しかし、結果わたしがわざわざそんな1本しかポールを立ててないツェルトで雨の中寝たいと思えなかったのだから、やはり無くすべきでなかったのだし、寝られないのである。


ストックは無くしてはならないけれど、無くす可能性はアイテムの中ではわりと高いほうの装備だ。それをツェルトのポール代わりと考えているのなら、無くすことも想定して、ツェルトポールの1本くらいは装備に入れておいても良かったかもしれない。いまはそう思っている。


(5)89日の縦走ではカメラのバッテリーは予備が必要

タイトルの通りである。9日間雲一つない快晴だったら、予備1つでも足りなかったかもしれない。今回の縦走は雨続きで、カメラは2日くらいしかフル回転しなかったけれど、それでもバッテリーは底をついた。バッテリーの予備くらい1つ持っておきたいものだ。


(6)靴下はあと1足いやさ2足あっても良かった。

雨点時の靴下は臭い。重さとの兼ね合いもあるけど、89日で2足は少なすぎた。9日で3足、これは次回からは譲れないね。


(7)コース変更について

仙丈小屋から北岳山荘へ行くルートを野呂河越えが通行止めになっていたことを受けて、三峰峠ルートに変更したにも関わらず、下界にその旨一報入れておかなかったこと。通行止めだから三峰以外に行く道はなく、分かってくれるとかってに判断したが、これは浅はかな考えであった。やはり変更したルートでわたしが遭難した場合の下の労力を軽減させることも考え、そういった上で得た情報及び変更する事実は、諸々逐一連絡を入れておかねばならない。捜索にきた有志が上で初めて野呂河越えルートが通行止めであったと知るような事態は避けて吉なのだから、ここは多いに反省し、次回から同じようなことが絶対ないようにしなければならない。


甲斐駒ヶ岳山頂→駒津峰→双子山→長衛荘というルートも、強風のため稜線危険と判断し、駒津峰→仙水峠→長衛荘と現場判断で乗り越えたが、ここの変更も携帯が繋がるかどうか確かめ、繋がるようなら下界に連絡を入れておいたほうが良かっただろう。しかし、こういった現場の不足の事態では、携帯が繋がらないケースも多々あるだろう。そういった時のことまで想像して、計画表は作らなければならないのだなと下山してから気付いた。つまりルート変更をする可能性があるようなところは、事前にその可能性を計画表の中に記載しておけばいいのである。「天気が悪ければ双子山ルートは諦めて、仙水峠にします」とか、「雨天時は野呂河越えは諦めて、三峰峠ルートに切り替えます」のようにである。計画表を作成する際には、事前にありとあらゆる可能性を吟味し、その場合どうするのかというような思考の流れも記載してしまうことが望ましいだろう。さすれば、読み手のイメージの共有にも繋がるものと考える。ここらへんは一長一短ではいかないだろうが、鋭意極めていきたい。計画のスペシャリストになることこそが山行のスペシャリストへの第一歩なのだから。


4 長期縦走での身体の変化

最後に、89127㎞の長期縦走は、思ってもみなかった身体の変化を起こしたので、それも報告してきます。


(1)足首から下がでかくなった。

サンダル縦走が効いたのか、足首から下がでかくなりました。明らかに厚くなり高さがアップしています。下山(日曜)後、金曜日の朝練まで、クライミングシューズが履けませんでした(クライミングシューズはもともときつめのものを買うから尚更)。終業後のクライミングジムでは夕方は足が大きくなっているので、10日くらい経っても足が痛くて長く履いていることができない状態が続きました。因みに、今でも少し大きいままで、クライミングシューズを履いていても前よりも断然きついです。


(2)左右の親指の感覚が戻らない

下山後、左右の親指がボールのように肥大してしまい、触っても感覚がないというブヨブヨちっくな状態になってしまいました。今はある程度回復してきたものの、いまだ完治しておらず、当初はこれは不味いと感じていましたが、よくよく考えるとこれは負傷ではなく、わたしがX-MEN化しただけではないだろうかと納得したりしてます。曰く、親指のにゃんこの肉球化です。あまりに衝撃を連続で受け続けすぎて、親指が肉球に変化したのです。そう考えると、親指の感覚なんてなくてもまったく問題ないことに思いあたりました。9日の大会に向けて、峠走を一本やってみましたが、やはりまったく問題なかった。これは負傷ではなく進化だと思う。


5 まとめ

とまあ総括はこんな感じでしょうか。お叱りやアドバイス、気付いた点などありましたら、どんどんメールのほうお願いします。参考にして次からの山行の糧とします。ではありがとうございました。(おわり)