11p. 山行報告(南アルプス全山縦走達成記録)8日目前編 | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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人の親になっても頂きを目指し、家族と共に攀じり続けるパパクライマーの記録

1.スケジュール

兎岳避難小屋 4:00

2:10 6:10

前聖岳 6:20

0:50 7:10

小聖岳

1:00 8:10

聖平小屋(水場)

2:35 10:45

上河内岳 10:55

1:45 12:40

茶臼岳

2:20 15:00

易老岳

2:30 17:30

光岳小屋(テン場)水場 計13時間55分 約17km トータル110

(但し左記タイムは地図表記。個人的に最悪16時までに到着予定)


2.道中報告及び感想

3時過ぎに起床し、避難小屋を出たのは415分。遠くで雷が瞬いているのが確認できたが、それは相応の距離離れたところの話しで、基本自分のいる場所は雲が多いものの晴れていると言っていい天気であった。



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聖岳の登りにとりかかっていると御来光も拝め、



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後ろを振り返れば、昨日の雷強行軍ルートの全貌を眺めることができた。中央アルプスの先まで今日もしっかり見えているし、台風一過ならぬ雷一過か?なんつて昨日頑張ったかいがあったなあとしみじみ。しかしこうやって眺めていると南アルプスの山々は本当に大きいなあ。あと2日で山を下りなければならないことに、この時始めて寂しさを覚えたりしたかな。



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南アルプス全山縦走最後の3000m級、聖岳に登頂し、これが最後の3000m級の眺望かと、飽きるまで山頂に居座り、朝飯を頬張っていた(水で戻したアルファ米だけどね!)。この天気なら今日は順ちょ・・・あっおはようございま~す♪


反対方面の聖平小屋からの早出チームが登ってきた。昨日の天気は凄かったねえなどと、お互いの武勇伝を語り合う。で、どうしたの? へ~兎岳避難小屋で泊まったんだ。あそこってボロボロなんでしょ? なんて具合で盛り上がり、盛り上がりついでにその人はさらっと軽い感じで、わたしが聞きたくなかったことを言葉にした。


「小屋の主人によると、今日も正午くらいから雷だって。昨日と同じで」


・・・・・・・


・・・・・・・


え~~~~~~~~!!!!


お~~~マイ、ガァツ!っっつ!!!!!!!!!!!!


なんで~~~~~~~~~


なんでよ~~~~~


こんなに天気いいのに!!!!


マジで~~~~~~


○○○○!!!


最悪である。絶望。マジで。だってわたし雷嫌いなんですもん。昨日と同様の天気になるなんて考えただけに恐ろしい。あーもうまいった。まいったまいった。あーもうなんだよ、どうしよう。こんな天気いいのに、嘘情報なんじゃないだろうか。山小屋の主人だって間違えるときはある。そうだそうに違いない。


・・・・いやいや、そういうわけにもいかん。確かに昨日も同じように朝は天気が良かった。最高潮(キリッ)とか言って景色を楽しんでいたのだったか。そしたらあの雷だ。あれに今日もなるということか。そうだ、そういえば、出立時に遠くで雷が瞬いているのを見たぞ。あれか?あれがこっちにやってくるのか?しかも聖平小屋の主人が正午から雷と言っているということは、わたしの進行方向が雷になるということじゃないだろうか?


時計をみる。山頂で長居していたせいで、時計は715分まで回っていた。これはまずい。だから言ったじゃないか。遠足は家に帰るまでなんだって!一難去るとすぐ兜の緒をゆるめるのは止めろ!! 馬鹿馬鹿おれの馬鹿!!ちくしょう ちくしょー!!!!!(ベジータが絶望して叫んでいるようだね、フフフ)


あーさて、もうゴメンだよ。あんな雷の下強行軍をやるのはゴメンだ。あれを二度やる奴は馬鹿だね。人は恐怖体験から学習しなければならない。じゃあどうしよう。雷が来る前に昼過ぎにつく茶臼小屋で本日の山行を終了とするかね。確かにそれが一般的な定石だろう。しかし、それではあの冷や汗もんの昨日の強行軍の意味が無と化すじゃないか。怖い思いをして頑張った本人がそんな選択をできるわけもないよ。わたしは昨日頑張ったわたしのためにも今日中に17㎞先まで必ず行く!


地図をよくよく精査する。うんうん、やっぱりこれしかない。腹を決める。現在730分。いまから6時間耐久トレラン大会をやろう。大会概要はいたってシンプル。明日の最終日のことを考えない6時間マジ走りをすることがこの大会の条件。いまから6時間真剣に駆ければ、茶臼小屋のはるか先にある易老岳あたりまで行けるだろう。そしたら雷が来たって、山頂や稜線歩きはもうないからリスクは相当軽減できる。仮に雷が来ても光小屋に逃げ込むだけだから結果ゴールできる。ザックが重いから、もしこれでダメージの蓄積量が限界をこえたとしても、明日はダムに下りるだけのこと、泣きながら這って下りればいいだけだ。もうここまで来たら最終日のことは考えるな。縦走達成のためには目の前の雷のリスクのほうが遙かに脅威だ。雷回避に全力投球。今日の内体力を使い切る。これしかない!


よっしゃ、行くぞ。よーい、ドン!!


聖岳山頂からの急斜面をトップスピードで下山開始。よしよし、サンダルでも十分トレラン可能だな。つうか軽いから逆に走りやすいわ!! 斜面途中で先を行っていた大学山岳部の若者二名に出会う。急斜面をザック担いで駆けてるのも凄いが、そこに輪をかけてサンダルでってと呆れ顔。上手くいけば明日また出会うだろうから、また明日と挨拶を告げて、その場を後にした。



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いやあ聖岳の急斜面、最高の駆け場でしたな。楽しかった~ってな思いを胸に、小聖岳山頂から聖岳山頂を振り返って撮影パシャ。


よし、こっからやで。どやさ~と駆け始めると1時間もかからず聖平小屋に到着。ここで水場に行って、水をMAX3.5Lまで補給して、また駆け出す。ザックも7日分の食料は胃袋へと消えたので思ったほど重くない。



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順調に登り下りを繰り返す南アの縦走路を飛ばし、全山縦走したと言うには外すことのできない上河内岳山頂へのピストンルートも攻略、さっさと先へ急ぐ。写真は髭だいぶ伸びたなあの図。


この日は快調に飛ばしていたので楽しさもあったけど、やっぱり半分近くは雷怖いという気持ちがあった。昨日の怖い思いがわたしを急かすのだ。だからスピードも上がる上がる。その甲斐あって、ゴール前最後の小屋である茶臼小屋(本日の中間点くらい)に到着したのは11時前だった。順調過ぎる。まだまだ雨も雷も来そうにないぜ。先へ先へ~~~


茶臼小屋から光岳への縦走路は、トレイルランナーがよく練習に来たりするルートで、つまるところ走り頃のいい塩梅の高低差なのである。フラットなトラバースを行くところも多く、これがまさに気持ちがいいRUNNING TIME。全山縦走に対するご褒美のようだ。しかしそんな風に思えていたのも時間の問題だった。茶臼岳を越え、仁田池を飛び、希望峰を抜けてもっともトレランしやすい鞍部にさしかかった頃にそれはきた。


pキーン!!


右膝に差し込むような痛み! 痛いっ、あら、あっぁつ、あれそれ痛いよ!ああ、痛い、痛い痛い。ああダメ、本格的に痛いよこれ。うーむ、やっぱり来てしまったか。そうだよな、軽く感じるといはいえ、それは主観でのこと。ザック重量はいまだ15㎏くらいはあるんだもんな。6時間近く走り続けたら、そりゃあものほんの大会後のように膝痛くなるよな。いや待てよ?最近は40㎞前後のトレラン大会に出ても膝痛くならないんだっけか?ということは今日のほうが普段の大会より厳しかったってことだな。まあ歩荷レースみたいなもんだから当然か。兎にも角にも、膝、かなり痛です。


それにと思う。わたしが駆けてきたのはサンダルである。普段の駆けている時分より明らかにクッションが足りない。ザックの荷重+長期縦走の疲れ+サンダルとういクッションなしでのラン、痛くなって当然だ。ああどうしよう。今からでもサンダルからトレランシューズに履き替えようかしら?そうすれば膝の悪化を抑えることが幾分できるかもしれない。でもなあ、ここまで来て南ア南部全山サンダル縦走という目的を放棄するのもなあ、なんか癪だなあ。どうしたもんかなあ、履き替えたもんかなあ・・・。うーん、うーん、分かんねーや。決められねえ。取りあえず、この問題は棚に上げよう。今日ゴールできたら寝ながらでも考えよう。


必殺技の棚上げを駆使しても痛みが消えるわけではない。膝は痛かったけれど、6時間は走り続けると決めたから、びっこを踏みながらでも走り続けた。膝は本当に痛かった。でもやっぱり昨日の雷の恐怖のうほう上をいく。昨日の恐怖を体験すれば、少しでもゴールに近づいておきたい、立ち止まるわけにはいかない、そう思うしかないのである。昨日のはそれだけの恐怖体験だった。聖岳山頂での計算がわたしを支配していた。6時間は走ってないとやばいことになる!


無心に膝をびっこびっこし続け、狙いの易老岳を登り詰めた頃、やはり雨は降り出した。そして折りをみてやってくる背中のほうからのあの響き。やっぱ来たのね。予報通りにちゃんとゴロゴロ来るとはご苦労なことで。でももう核心部は抜けてる。稜線も山頂も残ってない。あとは三吉平へおりてから光小屋に登り返すだけでゴールだ。


聖岳山頂から6時間が経過し、セルフプロデュースのトレラン大会は閉幕した。わたしはここでやっと走りから解放されたが、しかし、ここからが大変であった。三吉平に下り、小屋までは地図表記1時間20分程度だったにもかかわらず、わたしはそれから光小屋までの登りを2時間30分近くかけてしまったのである。右膝が本当に痛く、最後のほうになると上がらなくなってしまったのだ。雨は本降りとなり、雷もわたしの頭上に追いついてきた。天をみやる。ああ、ちくしょう。完全に追いつかれた。兎と亀のようだな。


救いは、この日の雷がゴロゴロと言ってはいるものの落ちてはこなかった点。そして光小屋に向けて、ほぼ樹林帯の中での山行だった点。昨日の稜線や山頂での恐怖を思えば、木々に囲まれているこの日は天国。右膝をかばいながら、一歩ずつ一歩ずつストック頼りで登っていった。


ただ、最後に小屋前で、静高平とセンジュヶ原というだだっ広い湿地帯が現れたのには、またしても最後の最後でここで雷に打たれて終わるのかとか、いやな想像を抱かされ、雷鳴轟くもとでは通り抜けるのにえらく勇気がいったが、それはそれこれはこれの割り切りで、痛い右膝を押して、ここだけはまたびっこびっこ駆け抜けた。痛い、痛い痛い板遺体痛い板位置井地イたい


だからこその小屋が見えたときのあの達成感!!!


よっしゃーーーーー!! やった!!


勝ったぞ。ここまで来れば明日は帰るのみだ。帰るのみの響きがなんと心地よく脳内に響いたことか。ばんざ~い、ばんざ~い♪ 到着したのは1615分。この日は7割方走ったけれど、後半の右膝痛のせいで結果的にはトータルタイムは予定をオーバーしてしまった。でも推測でしかないけれど、走らず雷雨の時分に茶臼小屋あたりにいたらどうなっていたか。もしかしたら、そこらへんの天気はもっと悪かったかもしれないのだから。そう考えれば、今日の判断はまさにファインプレー。右膝も名誉の負傷と考えていいかもしれない。よく頑張った。おつかれさん。自分で自分を褒めてあげた。


次回「山行報告(南アルプス全山縦走達成記録)8日目後編」に続く