1.スケジュール
南御室小屋(テン場)3:00発
1:30 4:30
薬師岳 4:40
0:45 5:25
観音岳 5:35
1:10 6:45
地蔵岳 6:55
3:10 10:05
早川尾根ノ頭(水場)
3:00 13:05
アサヨ峰 13:15
2:00 15:15
仙水峠
0:30 15:45
仙水小屋(テン場)約12km(トータル20km)計12時間45分
(但し上記タイムは地図表記。個人的には15時までに到着予定)
2.道中報告及び感想
この日は反省すべき点が多々あった。第1は濡れ倒したツェルトの撤収と予定時刻にどう起きるのかという問題である。予定では3時発になっていたが、わたしが起きたのは2時。ぐだぐだやっていて2時17分。濡れたツェルトやグランドシートを洗ったりしてたり(水場が近いため泥などを落としたくなってしまう)朝飯を食べていたりしたら、あっという間に4時10分になってしまった。出発の時点で1時間10分遅れである。改善の余地は大いにある。
夜間の登山は馴れているので問題なくこなし、薬師岳直下あたりでは御来光や富士山を拝むことができた。
天気は快晴。2日後に行く白峰三山も山様を拝むことができた。時間が押していたので相当なスピードで、薬師岳、観音岳を登頂し、地蔵岳まで行った。地蔵岳の時点で70分の遅れは20分というところまで取り戻せていたので、オベリスクを登ることにした(本来登るつもりはなかった)。
オベリスクのてっぺんに立つには、クライミング技術が最低限必要に感じた。わたしが最近登った中ではもっとも危険な場所である。
セルフを取らないで登るような場所ではない(だからこそ面白いと言えば面白いわけだが)。
その後、早川尾根に入っていき、途中、早川小屋の水場で水を補給した(常にMAX3.5Lを目指すよう心掛けた)。今思えば早川尾根はたいしたことはなかったと感じるものの、この日当日のわたしの体感は、南アルプス恐るべしといったような大それたものであった。
というのも、尾根歩きのはずなのに、常にそれ相応のおにぎりのような山の登り下りが要求されるのである。フラットがまったくない。ずっと山を登っては下りるの繰り返し。早川尾根でこんなに運動を要求されるとは思ってもみなかったため、心的な面から大層疲れてしまった。
それでもアサヨ峰に到着する頃までには、オベリスクで散々遊んでいたわりには遅れは30分に止めておくことができ、達成感はあった。
アサヨ峰は、計画段階で先輩に迷いやすいと指摘されていた箇所であり、地図にも尾根に入らないように注意書きがされている箇所であった。だが第2の反省点はここで起こってしまった。わたしはここで道迷いをしてしまったのである。迷ってはならないと思っていても迷ってしまうのだから、地形的に難ありと言わざるを得ないが、迷うにも条件が揃わなければ迷えない、なかなかやっかいな場所のように思う。
まず、晴れていれば迷いようがない。向かう先の山が見えていれば、誰でも正しいルートを見つけることができる。この日もすぐ隣の甲斐駒ヶ岳が見えていれば迷いようがなかった。しかし、あいにくこの日はガスが発生しており、周辺の景色はまったく見えていなかった。入ってはいけないとされている尾根はすぐに見つかる。ロープで通せんぼしてあるので、行ってはならないことも容易に分かる。しかし、問題はここからで、山頂の淵をぐるっと回ってみても、早川小屋から上がってきたルート以外に道らしき道が見あたらないのである。つまり、この山頂には、早川小屋に下りるルートと入ってはならないとしている尾根以外に出口が存在しないのでる。
そうなると、入ってはならないとされる尾根に入ってみたくなるものだ。取りあえず、行ってみる。やはり途中で道はなくなる。ではどうすればいいのか。ここまでくると正しいであろう方向に向かって存在する急なガレ場が正しいルートのように思えてきてしまう。そこを取りあえず下りてみるしかないと。下りていく。しかしやはり途中で道がなくなる。しかし、少し先の右下のほうに道のようなものが見える。あそこまで出ればなんとかなるかもしれないと、藪こぎして行ってみる。しかし、そこは道ではなく、道のような空間でしかなかった。
アサヨ峰周辺の藪こぎの抵抗は相当強いもので、しっかり育ったハイマツだらけ。わたしは迷ったら元の場所に戻るという鉄則に従い、山頂まで藪こぎして戻った。相当な労力を使わされたが、登って気づく、ストック1本の紛失に。わたしにとってストックはツェルトのポールの代用品でもあるので、なくすわけにはいかない。藪こぎしていた場所に戻って探さなければ、わたしはガレをおり、藪の中をストックを探した。しかし、見つかるわけもなく、そうこうしている内に雨がザーザー降りとなり、こういうことをしている時にこそ滑落したりするんだよなと頭によぎったりしたので、ストックは諦めて山頂に戻ることにした。
山頂の標識の前に座り込み、ではどうすればいいのかと考える。こんな尾根には人が来る保証がないから、ビバーグで明日を待つわけにもいくまい。よしっとここで思い立つ。コンパスを取り出し、指し示す進行方向に向かって突き進もうと。それなら何れ正解に出るだろう。そう思ってコンパスで方角を探すと、行くべき道は真北であることが分かった。よし、進路を北へ! 山頂標識から真北へ向かって歩き始めると、驚くなかれ、探していたルートである仙水峠への道が現れたのである。いったいどういうことなのだろう?
答えはこうであった。わたしが登ってきた早川小屋からのルートの入り口と仙水峠へ下りるルートの入り口は双方ともに小さく、おまけに隣り合っていた。それがガスにより一つのルートの入り口のように見えてしまっていたのである。ルートを探すために最初に山頂の淵を歩いた際に、淵の際までいって周回していたらこんなミスは起こらなかっただろう。しかし、淵の藪が見える~程度の距離から周回してしまうと、この入り口が2つであることを判別できない。そういうことであった。
まっいろいろ書いてきたが、問題はわたしの基礎がなってないことにあるのは間違いない。わたしは基本的にまだ読図というものを身につけておらず、そのため、コンパスをよっぽどでないと出さないし、地図も5万分の1しか普段使っていない。しかし、この5万分の1地図に頼り切っていることこそが問題で、今回のケースの場合、早川小屋へ下りるルートと仙水峠に下りるルートが隣り合っているなどと5万分の1の地図を見るかぎりでは思いもよらないのである。どちらかというと早川小屋に下りるルートの正面、つまりは真反対に仙水峠へのルートが伸びている印象さえ受ける。しかし、真実は隣に伸びていたのである。
アサヨ峰は何故道迷いが起こるのか、わたしは5万分の1地図に頼り切った登山が原因であると結論付けたい。5万分の1地図の表記イメージをリアルな登山に持ち込み、コンパスでの確認を怠る。そういう基礎のできていない人間が、今回のようにガスなど諸条件整ってしまうと迷うのである。わたしは取りあえず尾根に入ってみようと思う前に、コンパスを出してみようと何故思えなかったのか、本当に自分に失望したのである。恥ずかしいったらありゃしない。
この日は結果、遅れを30分まで取り戻していたにもかかわらず、最終的には、15時に下りてくるどころか、17時に下りてくるはめとなった。ポール代わりのストックをなくしてしまい、またこのザーザー降りのびしょ濡れの中では、テン場でのツェルト泊を考えていた仙水小屋だけれど、取りあえず、心落ち着かせ今後のことも考えようと素泊まりに変更した。南アの小屋の主人は、15時くらいまでに小屋にこないと怒るなんてことがネット上に記されたりしていたが、基本そんなことはなく、逆に南御室小屋から来たといえば、それは大変だったねと、大層世話をやいてくれ、ありがたいと思うばかりでした。
3.小屋情報
水場は小屋の前にあり、豊富で冷たい。外に洗面台もあって鏡もあった。食事は夕食にはさしみが出たそうである(伝聞)。トレイはしっかりとしたものがあり、便器の中は常に水が流れているため、臭いがまったくなかった。良い小屋の印象しかない。
4.その他
外の干す場所に濡れたものを一通り乾しておいたら、スパッツの片方を紛失する。紛失続きで心的なダメージが続いて、やる気がかなり削がれる。
ここの水場も近く豊富だったため、体を拭いて、頭を洗うことができた。着てきた速乾Tシャツ2枚と帽子もジャブジャブ洗うことができた。洗面台に鏡があったので、2日使い続けているワンデイコンタクトを新しく変えることができた。
夕飯の基本は水で戻したアルファ米にレトルトソースをかけるといったものである。この日はカレーだったが、前もって常温でも美味しいレトルトソースを試食し選別しておいた。山ではなるべく美味しいものが食べたい。9日分のレトルトソースはそれ相応の重さだったが、ここは外せなかった。山屋のソースは美味しくないし、カロリーも少ない。