新そば漫遊記 | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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人の親になっても頂きを目指し、家族と共に攀じり続けるパパクライマーの記録

わたしは蕎麦を食べる。蕎麦屋を見つければワクワクする蕎麦好きだ。蕎麦食いのキャリアはせいぜい3年8ヶ月たらずだが、栃木県の蕎麦食いの入門書である「再訪そば処栃木の名店を歩く」及び「読者が選んだ栃木のそば」に掲載されているお店は150以上訪ね、県外のお店にも既に50以上は訪ねている。日本三大そばとして名高い戸隠そば、出雲そば、わんこそばを食すために現地まで遠征したりもした。20085月に「蕎麦漫遊記」という企画を立ち上げた蕎麦初心者だった頃のことが本当に初々しく思い出されるが、


(旧)蕎麦漫遊記一発目の投稿ぺージ

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残念ながら蕎麦漫遊記の報告は中途で頓挫し、報告できたのは70程度にとどまる。これはおいらが根本的に誰かに報告するために(ブログのために)企画を立ち上げていないことに起因しているわけだが、やはり折角食べているのなら報告するに超したことはないとは思っている。そこで以前の蕎麦漫遊記を改め、企画名を新そば漫遊記と一新して再始動させる決意をしました。栃木には美味しい蕎麦屋さんが沢山あります。皆さんが美味しい蕎麦に出会える一助になれば幸いです。


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『手打蕎麦 蕎庵秀明』(栃木)- 新そば漫遊記1。

記念すべきリニューアル一店舗目は、栃木市内に店を構える「手打蕎麦 蕎庵秀明」さん。登山などで赴く機会も多い県北の蕎麦はほぼ食べ尽くしたが、県南はまだまだ未開拓の地域も多い。下野市で開催されたマラソン大会に参加したことをこれ幸いに、完走後についでとばかりに南下して、栃木市で蕎麦することにした。


ナビに従って県道沿いを進むと目的の店はすぐに目に入った。店内に入ると外観から受けた印象よりも広い店内に驚かされる。座敷にゆったりと空間を使っている印象。小綺麗で好感が持てる。座敷以外が埋まっていたため、一人ながら座敷に通してもらい、メニューを手にとる。出てきたお茶はそば茶であった。冬のマラソン後の身体には温かいものが本当に嬉しい。品揃えは非常に豊富で、一見して鋭意工夫していることが感じられる。わたしが惹きつけられたのは“鴨汁そば”と“牡蠣の天ぷら”。鴨汁そばには、脇に大盛り無料との説明書きが付されており恥ずかしながらそこに惹かれた。しかし、数日前に蕎麦屋にいたおり、他のお客さんが店内に響かんばかりの大声で「日本で一番美味い出し汁は鴨汁だ」と感嘆していたのが印象に残っていたというのもある。牡蠣のほうは蕎麦屋で牡蠣を揚げるというのだから自信あってのことだろう。受けねばなるまい。さあ如何に。


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“鴨汁そば”が目の前に供される。まず汁から。含む。うん、濃いめに調整されている出汁よりかえしのほうが強調された汁になっている。塩分いらずのわたしには少し辛い。そばに目を向ける。細めで切りそろえられたものが笊の上にのっている。きちんとした蕎麦がでてきたなという印象。さっそくその中から数本つまみ上げて素のまますすってみる。なるほど。見た目とは裏腹に口内に止まてしまう蕎麦だ。噛む。固めににしめてあり蕎麦が挨拶してこない。ツンとしている。見た目からくるギャップに落胆に似た気持ちを抱いきながら、ならばと次はつまんだ蕎麦を汁にくぐらせて食べてみる。


やっぱりね。はじめまして、お蕎麦さん。蕎麦は“もり”というのが常識と思われているが、それはシティ派な意見だと思う。蕎麦にも色々な種類があって、“もり”で食べたほうが美味いものもあれば“かけ”で食べたほうが美味いもののある。ようは、蕎麦は千差万別。なぜそういうことが起こるのかといえば、蕎麦は最終的に蕎麦粉の質からは免れられないという点につきるだろう。簡単に公式にしてしまえば、香りの強いそば粉なら“もり”、味の濃い蕎麦なら“もり”か“かけ”。香りの弱いそばは“もり”で食べてもあまり意味がない。とはいえ、すべて“かけ”のほうがいいというわけじゃない。そこには篩いの目や皮や殻をどこまで使うかという、打ち手の演出意図が当然加味される。


ここの蕎麦は香りがあまりない。だが香りだけが蕎麦ではない。この蕎麦には味わいがある。ここの店主は適格な茹で時間と厳しい締めにより、蕎麦の味わいを蕎麦状に延ばし切られた粉物に閉じこめることに成功している。汁に付けずに噛んでみたところでその味は開かない。がしかし、鴨汁という温かな汁にさっとくぐらせればどうか。一変する。蕎麦が開花したように穀物の味わいを口内に咲き誇らせるのである。少しの温度で蕎麦が穀物の命を取り戻す。つまり蕎麦粉を殺さず活かしお客に受け渡す店主の技量がそこにはあるのだ。味は、甘いわけでも苦いわけでもない、蕎麦の味としか形容できない味わいであった。突き抜けた長所がないぶん玄人向けの店かもしれないが、ここの蕎麦粉がどのような蕎麦粉か、それは十二分に伝わってくる蕎麦を提供できている。


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鴨汁になかに鴨肉のほかに団子をみつけて、フォッフォッフォと声を漏らしていたわたしのところに届いたのが、次にいただく“牡蠣の天ぷら”であった。大粒のものが4つ。これは見た目からして美味そうだ。さっそく箸が伸びる。半分程度を囓って口内におくる。残された半欠けからも口内おくられた部位からも汁がと溢れ出してくる。これが天ぷらですか。驚くほどの瑞々しさ。


美味い!!


これは確かな天ぷらである。衣の量、揚がり具合、素材選び、すべて上級の腕前だ。蕎麦屋にしてこのレベルの天ぷらを出しましたか。箸が止まらない。もう1つ


美味い!!


うーん、美味いものには美味いとしか書きようがない。レモンを絞って食べてみてもまた美味い。揚げものとは思えない。これは当然のごとく油にも気を使っているに違いない。最高のパフォーマンスを披露した店主を前にして、他の天ぷらを食べたくならないと言えば、間違いなく嘘になる。野菜天や海老天を注文しても確かなものが出てくるのではないか。食べたい。しかしそれは次回のお楽しみにしなければ。


食後に、そば湯で鴨汁をのばして頂けば、辛めの汁から鴨の顔を出してきて、これまた至福。香りは弱いけど間違いないいい蕎麦の味だ。常連であるという老夫婦と長話を交わしながら、出てきた店主の話に耳を傾け、とても有意義な時間を過ごすことができた。聞くところによると“牡蠣の天ぷら”は季節限定メニューだそうだ。賞味したい方がおられたら早めに向かわれるのが宜しかろうと思います。御馳走さまでした。


【栃木】手打蕎麦 蕎庵秀明  鴨汁そば ☆☆☆★  牡蠣の天ぷら ☆☆☆☆★


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素材情報(読者が選んだ栃木のそば75より)

そば粉:会津雄国産、福井県勝山産

つなぎ:小麦粉を二八で。外二も

つ ゆ:鹿児島県枕崎沖産2年物枯本節、亀節、コンブ、干しシイタケ


【蕎麦まとめページ】

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