劇場鑑賞3月上旬(2009)できるだけ感想を書き加えてみた | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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1. 『ポチの告白』 / 日本

K’s cinema 8.2

3時間を超える長編だけれども、よく纏めてあって好印象の社会派大作。低予算で技術的な部分を言われると相当厳しいが、逆にそのフォーマットで3時間見せきるのだからたいしたもの。よく取材してあるし、強い者には巻かれろ精神が跋扈している日本にしてよく完成させたと拍手を送りたい。本作のような内容の映画が、4,5年に一本しかないこと自体がそもそも問題なのだ。本作の主題も簡単に言えば、そういうことだ。


2. 『キャラメル』 / レバノン=

 ユーロスペース 7.7

本作はレバノン制作映画なのですが、なんと、じつは記念すべきおいらの映画館で観た60カ国目の映画鑑賞になります!というわけで、“レバノン制作”というだけで飛びついてしまったわけですが、いやあ得てして、そいった国の映画は箸にも棒にも引っ掛からないものですが、本作は普遍性のある女性賛歌作品として、鑑賞後にとても爽やかな気持ちで明日を迎えられる作品に仕上がっていました。ドラマを展開させることで話しを進めるのではなく、ちゃんと登場人物に寄り添って描かれているのが好感度大です。監督はちゃんと映画留学しているんじゃないか?と思わせるほどの見せる画もあって、感心させられることしばしばでした。


3. 『ハルフウェイ』 / 日本

 MOVIX宇都宮 7.5

北川悦吏子が監督デビューしたというので観てきました。北川女史は自身が脚本家にも関わらず、今回は場面設定だけして、あとは自由に役者に演じさせる手法をとったそうな。でもそれが間違いのもと。基本的があまりにも雑だと言わざるを得ない。撮影はとんでもないことになっているし(誰が見ても失敗カットだと思うようなシーンもそのまま使っている)、演技もやり直したほうがいいと思うような箇所も、それが1つや2つならそのままOKテイクとしている。例えば、マイク・リーも脚本なしで即興を得意としているけれど、当然、即興の前にリハーサルをしている。カメラやマイク、照明と、映画は事前準備が不可欠なのだからそれが当たり前。今回の映画は、そういった外堀がまったく埋まってないので、非常に残念な仕上がりになってしまった。これだけ自由にたいした準備もせずに撮影して、監督したっていえるの?と思う。が、ですよ、が、本作はそれでも大層魅力的だったとおいらは思う。青春恋愛映画は数あれど、ここまでそこらに転がっている市井の話しが映画にされたことはいまだかってない。それを観客が見たいかどうかは疑問だけど、ちゃんと描きたいことは主題として宿っていたし、嘘臭さもないので、共感しきりである。そして、本作のもっともたる収穫は、ヒロインの北乃きいである。おいらにとってはまだどうでもいい若手の一人だったが、今作の演技を見るに、次代の天才を発見したと興奮せずにはいられない。外見を替えずにここまで別人に成り代われるなんて、他に同じような仕事ができる同年代の女優をおいらは思いつかない。彼女にこの仕事をさせたのが、北川女史とのコラボのおかげだったというなら、本作には十分価値がある。まあそれ抜きでも、おいら本作気に入ったけどね。雑だけど。


4. 『罪とか罰とか』 / 日本

TOHOシネマズ宇都宮 1.3

決定的に演出家の力不足。劇場公開せずにDVD発売すればすむだけの作品。大画面で観る必然性がないし、2時間座席に座り続けて得られる動画の連続性も皆無。TVサイズで観る分には、「時効警察」同様に楽しめる。(映画のkeraさんはTVの比でなくブラックだけどね)


5. 『ジェネラル・ルージュの凱旋』 / 日本

 MOVIX宇都宮 6.7

ミステリーを期待すると肩すかしをくらうけれど、『ハッピーフライト』同様、真面目なお仕事現場の紹介映画だと思えば興味深く観られる。好感の持てる出来映えだったと思います。そういった意味で前作より上。今回は第二作ということもあって、シリーズものとしての定着のさせ方にもチャレンジしていて、概ね上手く機能している。ただ裏を返せば、この定着した主要キャラに好感を抱かない人には、特段見る必要がないという、シリーズの枠を超えた作品ではない。まあこういう真面目で無駄に熱い映画を個人的には好きだが。


6. フランス映画祭2009『ミーシャ/ホロコーストと白い狼』(トークショー&サイン会:ヴェラ・ベルモン(監督)マチルド・ゴファール(女優)) / =ベルギー=

TOHOシネマズ六本木ヒルズ 7.1

(映画祭レポート:http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1164472002&owner_id=1064357

壮絶な内容。主演女優もこれが映画デビューなのですが、普通とてもできないようなことを体当たりで演じきっています。主人公の心証から一歩たりとも踏み外さずに丁寧に寄り添いながら、描ききったヴェラ・ベルモン監督の執念のたまもので、ホロコーストがどうのこうとかではなく、一人の少女の強い思いに涙せずにはいられません。


7. 『ダウト ~あるカトリック学校で~』

 ル・シネマ 7.6

トニー賞、ピュリッツァー賞演劇賞をW受賞した傑作舞台劇をジョン・パトリック・シャンリー自身の手で映画化した作品だけに、演出は超一流で、本作品から4名もオスカーにノミネートされたのは頷けました。撮影も舞台劇と揶揄されないよう工夫して、結構頑張っていたのだけど、如何せんストーリーの紡ぎかたが映画のそれではない。だから全体を通して見終えても散漫な印象しか残らない。演技合戦は本当に素晴らしいの一言だし、ワンシーンワンシーンはどれも一流の出来映えだから、あとは映画文法を学んでくれたらなと思います。ともあれ、本作は本当に見応えがあって見入ってしまいました。


◇◆映画総合◆◇

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=165869478&owner_id=1064357