b.のべつもなく長い雑記。(蕎麦漫遊記と花火ほか) | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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人の親になっても頂きを目指し、家族と共に攀じり続けるパパクライマーの記録

(昨日のつづき)シネマライズを後にし、千葉の友人と会うべく本八幡まで移動する。毎年恒例となっている市川市民納涼花火大会見物をするための千葉入りである。花火大会の最寄り駅は市川だけど、おいらのたっての希望により、本八幡での集合とあいなった。


「でなんで本八幡なの?」

「いや、どうしても行きたい店があってね。それがなんとも言い出しづらいのだけど、蕎麦屋なんだわ」

「蕎麦かいいね!」

「へ、蕎麦食べる人だっけ?」

「蕎麦は結構食べるよ。麺類はなんでも好きだからな」


学生時代からの付き合いの友人だが、蕎麦を食べるとは考えたこともなかった。いつも何が食べたいか訊けば「こってりラーメンなりたけ」と答える友人である。宜もなかろう。しかし、逆から言わせれば片腹痛いことだろう。おいらが蕎麦を熱心に食らうようになったのは、まだなんと驚きの昨年の5月からなのである。もう随分長い間蕎麦を食し、蕎麦のことばかり考えてきたという印象しなかないのに、まだ1年半しか経ってないとは。時間はすべてにおいて平等に流れているのでなく、主観のみならず客観的にも個体差があるという最近の説を思い出した。“世界の料理を食べる”企画を始めたのも昨年の夏だし、つい最近までラーメン々と言っていたのはおいらのほうだったというわけか。驚きである。


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『市川一茶庵』(本八幡)- 蕎麦漫遊記39。

さておいて、おいらは蕎麦食いといっても栃木県内の蕎麦処を巡っているに過ぎず、まだ県外の蕎麦をどうこうしようとまでは考えていないのだが、最近ちょっと別件で思うところがあって、県内の蕎麦の理解を深めるためにも、少なからず、一二軒は県外の有名店で食べておいても損はないという考えにいたった。で調べていたら、驚く結果を目にすることになった。南関東に北関東より美味い蕎麦屋がそうあるとは思えないが、やはりいくらかあるらしく、その中の一店舗が、おいらが足繁く通っていた本八幡の道すがらに店を構えていたのである。


今回会っている友人とTOHOシネマズ市川コルトンプラザに映画を観に行く際の待ち合わせ場所にもよく利用していた、特に麻雀格闘倶楽部がおいらの中で全盛だった頃、おいらは、その蕎麦屋の隣のゲームセンターに入り浸っていたことまであった。そのゲームセンターの隣に蕎麦屋があるというのである。蕎麦屋なんてあったっけか? まったく記憶にない。


「あのゲームセンターの隣に蕎麦屋なんてあったっけ?」

「いや、記憶にないよ」


友人も気付いてなかったらしい。しかし、それもそのはず、その南関東で高く評価されている「市川一茶庵」は、蕎麦通の隠れ家的存在として、隠れ隠れ商売をしているお店なのである。名前を聞いてピンときた方もおられるだろう。そう、あの本八幡駅線路沿いの立食い蕎麦屋さんです。おいらも立食い蕎麦屋があるのは知っていました(入ったことはありませんが)。その「市川一茶庵」は、コンセプトとして、本格的な蕎麦を簡単に食してもらおうという立食い形式のカウンターのみの店と、ゆっくりと蕎麦を楽しんでもらおうという座敷の店というダブルゲート方式(調理場は同じ)を採用しており、おいらがよくみかけていたのが立食い形式のほうのゲートだったというわけだ。しかし、本店の白眉は当然座敷形式のほうで、そのゲートたるやゲームセンターの隣という騒々しい立地というハンデもものともせず、雰囲気を獲得した静かな奥まった路地深くに存在した。


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これでは気付きようもないではないか。上記おいらの話しを聞きながらも、本当かよと信用していなかった友人も店を前まで来て微少してみせる。本当にゲームセンターの隣に蕎麦屋なんてあったんだと。店に到着したのは、夜の部の開店10分後くらい。まだ夕飯の時間には速い時間ではあったが、この店はあまりの人気で週末はすぐに満席になってしまうそうだから、早いにこしたことはない。この時間帯なら空いているに違いない。早速突入だ。(がらがら)


靴を脱いで通された店内は、店というより、昔懐かしい木造家屋のそれで、全室畳の座敷席のみ。夜の部が開店したばかりだというのに、席はおおかた埋まっていて、二座席が空いているだけという案配である。しかし、このような奥まった店でこれほどまでに店内が広がっているとは露ほども思えなかった。そして、これだけの客が座席についていながら、このなんとも言えない雰囲気はなんだ。客が皆蕎麦通だからだろうか。騒ぎもせず、黙りもせず、適度にくつろいだ会話の生まれている空間。なんて居心地のいい店なんだ!


さて、この「市川一茶庵」。先に隠れ隠れ商売しているといったが、それは一般に対してだけといっていい。この店はじつは蕎麦通なら誰でも知っている有名店なのだ。蕎麦には○○系といった、おいらにはまだ理解できない系統分けがあるらしく、その系統の中でも大系統として知られる有名な系統がある。それが“一茶庵系”なのであった。総本山は栃木の足利にあるらしいが(知らなかった!)、その一茶庵で修行した弟子達の店は全国各地に存在して、その弟子達が組織したグループ「禅味会」の中心的役割を担っている店こそ、おいらが今回訪ねている「市川一茶庵」なのである。おいらは格や肩書きみたいなものをまったく信じないが、この店の雰囲気や空気感といったら間違いようがない。とても居心地がよく、店内満席でもずっとくつろいでいられるような、希有な時間が流れている。あとは問題の味だけである。さっそく注文していこう。


蕎麦の種類は、せいろと深山という田舎蕎麦の二種類が用意されていて、どちらも食べたいおいららは、どちらも味わえる“二色そば”を注文することにした。天ぷら付きを大盛りで。


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注文した蕎麦が到着。二種類の蕎麦は、見た目からしてまったく違うそれ。


うっほぉ~滅茶美味そうやン


早速、せいろからいただくことに。せいろは細く切り揃えられた喉越し豊かなもので、数本つまみ上げて吸い込むと、鼻に香りが届く心地よさ。なるほど南関東にも香りを楽しめる蕎麦は存在したか。せいろは形容するなら抜群の喉越し間違いのない味わいであった。深山は、始めての食感で、いままで食べてきた田舎そばとは限りなく違い、硬くはないもののずしりと歯応えがあるそれは、質量を蓄えた粘土のよう。口の中に運び入れてもぐしもぐしと顎をよく動かして味わう蕎麦。確かにせいろより蕎麦の味を楽しむことができる。


ここで蕎麦好きはどちらが好きかの選択を迫られることになります。どちらも好きだけども、やはりあまりにも特徴的に違うそれは、どちらがより好みかを明確に浮き彫りにします。おいらはやはり断然せいろが好きでした。ということはつまり、おいらは蕎麦に味ではなく、風味を求めていることになります。そして喉越し。啜ったときに鼻に抜ける蕎麦の香りと、つるつると喉を滑り落ちていく心地よさがたまりません。おいらは当然そのような蕎麦は味もしっかりするという前提に立ってはいるのですが。逆に田舎そばだって、一茶庵のように重く啜り入れることが不可能な蕎麦ならいざ知らず、普通の田舎そばだったら太くて食べる蕎麦でも啜り入れることは可能だと思っていて、つまりは田舎でも香りを楽しむことは可能じゃないかって思ったりしている。つまりは、この二択に持ち込む考え自体がじつはおいらは疑問だったりする。双方兼ね備えた蕎麦は存在し得るはずだとまだ思っているのである。そういう意味では、一茶庵系の風味と味の二極化して提供しているスタイルには疑問を呈しざるを得ない。とはいえ、細打ち太打ちと二種類の蕎麦を出している店は多いけど、ここまで特徴的に打ちわけている店はいまだかってなく、やはり評判通り流石であると感服するほかなかった。


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感服で思い出したけど、この「市川一茶庵」は、大盛りの分の蕎麦を別皿で後出しするシステムでした。おいらはこのシステムに大層感激してですね、え?なんでかって?そりゃあですね、おいらも勉強したての情報を披露しているだけだから、右から左でお恥ずかしいかぎりなのですが、蕎麦ってのは伸びるんですね。ざる一枚を完食する僅かな時間ですら、刻一刻と伸びており味は変化をみせている。蕎麦は提供された第一口目と最後の一口がまったく違う味となっている珍しい麺類なんですね。別に伸びたからいけないというわけではなく、そういう風に変化が激しい食べ物だということ。そこで問題なのは蕎麦屋の大盛りについてだ。ざる一枚平らげる程度の時間の伸びなら、味の変化として楽しめる許容の範囲である。がしかし、これが大盛りとなったらどうだろう。最後あたりは味にマイナスの影響が出るほど伸びが進行してしまうのではないか。これは最近おいらが大盛りを頼むことが多くなり、常日頃大盛りの最後のほうの蕎麦の伸び方は残念だと思っていたからよくわかるのだ。そこで登場、一茶庵の大盛り別皿システム。なんて素晴らしい発想だろう。すべての店がまねてしかるべきだ。と友人に熱く褒めちぎっていたら、違うだろ、大盛りにし忘れたから後出ししたんだろ、とのこと。なわけないだろう。そういう風にうがった見方をするのはよくないよ。じゃあ訊いてみよう。すいません云々。・・・・・・・・・・・んがっくっく


さておき、友人も大満足の蕎麦屋でした。これからこの友人と本八幡で映画を観る段には何時もここの蕎麦が味わえるのかと、今からニヤニヤであります。とはいえ、栃木にはここより美味い蕎麦を提供する店がいくらかあるけどね!おいらの栃木から始まった蕎麦漫遊の方向性は間違ってなかったのだなと自信を深めました。(しみじみ)


【本八幡】市川一茶庵/天ぷら付き二色蕎麦(大盛り) ☆☆☆☆ /そば湯 ☆☆☆☆


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【素材情報】

そば粉:全国から取り寄せてその時一番のものを使い分けている

つ ゆ:かつお系

薬 味:葱、わさび


【蕎麦まとめページ】

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=822116157&owner_id=1064357


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お腹もいっぱいになって、市川に移動。花火見物は、今回はいつもと見物場所を変えて、打ち上げている下のほうもよく見える場所にしようと隅田川を渡河することにした。


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こんな感じで全体が見える場所からの見物になりました。しかし今年の花火は素晴らしかったなあ。物心ついてからずっと市川花火を見ている友人も一番だったと申しておりました。なんかこう花火に使っている色数が一気に倍くらいになったんじゃないだろうか。でもって、同じ色でもより明度がくっきりした感じ。風流とかとはほど遠い新世代のエンターテインメント花火を目にしたような心持ちでありました。まあどっちがいいかは好き好きだろうけどね。


最後に雰囲気付けにちょっとした動画でもどうぞ。(つづく)