宇都宮中心部にありながら駐車場がないために後回しにしていた「明治亭」さんにお邪魔してきました。宇都宮市役所に出向いた際のランチ処として、市役所から歩いていける蕎麦屋さんという位置付けのお店のようです。おいらが市役所で用事を済ませてお店に向かっていると、同じような勤め人たちの流れがあり、お店も大変混雑していて、従業員がお客を名前で呼べるような常連ばかり。創業は店名のとおりの明治22年! 長く受け継がれてきた伝統を提供してくれるお店のようです。本店も例の如く、おいらの基本書「再訪そば処栃木の名店を歩く」に掲載されているお店です。
さっそく基本書に紹介されていた“大天もりそば”を注文。古めかしい店内の装飾を眺めていたら目の前に注文の品が到着。さっそくいただいてみましょう。蕎麦を箸ですくあげる。色は単色で薄め。太さは不揃いで短め。宇都宮の蕎麦屋さんの中には、手打ちと銘打っているのに堂々と短い蕎麦を提供したりする店が多く、どういうことなんだと疑問に思っているのだけど、こういう人気店も短く提供しているところを見ると、もしや短い蕎麦というのは、宇都宮の風習(B級グルメ的)なのではないか。ネットで調べてみたがそのような記述は落ちていなかったがどうなんだろう。焼きそばにジャガ芋を入れる栃木県だからな、蕎麦をあえて短く食べる風習があっても驚けない。なんつうことを、すくいあげた蕎麦を注視しながら思う。ともあれ一口。ずぅ。もぐしも。ずぅ。もぐしもぐし。短いため吸い込めないから香りは立たず、味勝負の蕎麦。うん、甘い。しかし、あれ?
もぐしもぐし。うーん。もぐしもぐし。この甘さはなんだろう。なんかやたらめったら甘い蕎麦である。おいらは素人だから恥ずかし気もなく書いてしまえば、これは蕎麦の甘さではないのではないか。たぶんつなぎが醸している甘さである。蕎麦のつなぎを分解してこれこれが入っているとは特定できる舌は持ち合わせていないので、これがなにからくる甘さなのか分からない。ここで問題となるのは、おいらがまだ手をつけていない“蕎麦とつなぎの関係”という論点である。蕎麦屋の個性は蕎麦粉の産地や水の質もさることながら、つなぎからも生み出すことが可能で、例えば蕎麦の食感や喉越しなどは三たての技術だけでなく、つなぎの影響がかなり強くでていると考えていい。さらには、良質な蕎麦粉を贅沢には使えない事情から、山芋で風味を足したり、卵で甘みを追加したりする。つなぎは蕎麦の魅力を引き立てたり、補ったりする役割を担っている。が、自分で打ったことがない以上、つなぎを特定しろと言われても、今のところ、つなぎの世界は見当もついていないというのが実状だ。だからといって、いままで蕎麦を食べてきた身としては、ここ「明治亭」さんが、つなぎでなにかしらやっているのは間違いがないと断言できる。この甘さは尋常ではないのだ。つなぎに卵を使っている店くらいいくらでもあるので、この甘さが卵の甘さであるとは思えない。でもおいらは蕎麦を食べてきて「ああ卵の良い甘味がするなあ」と感じたこともない。ともなれば、蕎麦のつなぎに使われている卵がどのように舌に伝わるのか、いまのところおいらは分かってないといっていい。卵でない気がするけど、卵かもしれない。例えば特別な地鶏卵で黄身の味が素晴らしいとかも考えられる。ともあれ、他店とはまったく異なる秘密のつなぎを使っているのかもしれない。お、ネットで調べたら「明治亭」のつなぎについて書いてあったぞ。
「つなぎ:あり(極秘)」
いやいやいや、「つなぎ:あり(極秘)」なんて情報必要ないでしょ。どこの店だって「つなぎ:あり(極秘)」に決まっているのだから。そこをあえて「つなぎ:あり(極秘)」などと記入するところをみると、この店自体が秘密のつなぎに相当自信があるのだとみた。「ここの蕎麦粉は何処産を使っているのですか?」と訊かれるより、「なにかつなぎに工夫しているみたいだけど、なにが入れてあるんですか?」と訊かれたほうが喜ぶに違いない。
いうわけで、「明治亭」つなぎ問題はまだ手にあまるので棚上げとする。とにかく甘い蕎麦です。美味しくいただきましたが、蕎麦の味が楽しめたかと聞かれるとなんとも。あっでもここの蕎麦とつけ汁の相性はよかったと思います。やや短い蕎麦なので、つけて食べざるを得ないから、そこのところは非常によかった。
天ぷらも美味しかった。椎茸、ピーマン、いんげん、茄子、三つ葉、海老、人参、結構な数が盛り付けてあるのに980円。安い!
【宇都宮】明治亭/大天もりそば ☆☆☆/そば湯 ☆☆☆★
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【素材情報】
そば粉:山都(福島県)産を中心に八割使用
つ ゆ:本がえし/カツオ、サバ
薬 味:本わさび、葱
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