『シリアの花嫁』を観てきました。うん、これは評価高いのも納得の一本だ。現在無国籍になってしまった元シリア人家族を、イスラエル占領下のゴラン高原を舞台に描いた本作だけど、予備知識なしで観にいったおいらにも複雑なはずの問題を的確に提示できていて、成功の鍵となっている。本作は、偏見や社会構造、人種問題様々なことを主題とせず、家族と二度と会うことのできなくなる花嫁とその肉親の話を中心に、多くの笑いや切実さ、そしてコミュニティに埋没する自身のアイデンティティの問題を的確に挟みながら、人道的で且つ非常にエモーショナルな作品として普遍性を有している。問題は、演技派と呼べるような役者の自然な演技があると思えば、コテコテのドラマの中の住人のようなレベルの役者も出ていて、全体としての一定水準が確保されていないように感じられてしまうことかな。でも社会派映画にもなってしまいそうな本作をして、片意地張らずに多くの人の目を本問に集中させる間口の広さは確か。