☆☆☆★/『THIS IS ENGLAND』 | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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人の親になっても頂きを目指し、家族と共に攀じり続けるパパクライマーの記録

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シアターN渋谷で『THIS IS ENGLAND』を観賞してきました。本作はイギリス人以外が観ると分かりにくいとの声をチラホラ聞くが、冒頭サッチャーの年代のモンタージュから始まるのだから、主題は明解だと思う。撮影(照明)形式からファッションに到るまで(選曲も!)、その当時のものに拘り、その編集テンポの危ないスピードは、その当時のイングランドの成り行きのままで、どこに到達するのか否が応にも目を背けたくなります。橋口監督が「ぐるりのこと」で、日本の90年代を代表する社会的事件を背景にしながらパーソナルな映画をとったように、本作もまた、フォークランド紛争直後のイギリスを監督自身の体験と目線で綴ってみせた。「ぐるりのこと」が監督自身の心象を描きつつも日本の変容を見事に捉えたように、本作もまた幼かった監督の生の声が、イギリスの変容を見事に捉えている。と言うわけで、世界史的に重要なフォークランド紛争に興味のない人が観ても面白いのかは定かではないが、「ぐるりのこと」で法廷シーンの様々な事件について知らなくても夫婦の再生物として普遍性を獲得できていたように、本作もまた父親を亡くした少年の成長物語として観ることは可能だと思う。特別薦めはしませんけど。