初めてフラット(マンション)を購入、
と同時に金融の世界を離れ、イメージコンサルタントとして独立しました。
引っ越したそのフラットの隣りに、
ご年配のインド人のおばさまが住んでいました。
『お茶でも飲みにいらっしゃい
』と顔を合わすたびに誘って下さるので、
ある日、お邪魔することにしました。
おばさまはインドとイギリスのインテリアをうまく調和した
一軒家で一人暮らし。
コーヒーと、色々なインドのおやつをご馳走して下さいました。
どれもカレーの味がした気がしたけれど

珍しく、美味しかったですよ。
新たな仕事を立ち上げようとしている、
と私が話すと、おばさまは言いました。
Be thankful that you have a roof over your head.
『あなたの頭の上に屋根があることに感謝しなさいね
』と。あれもしないと、これもしないと、と色々な考えが頭を駆け巡っていた時に
こんな漠然としたことを言われ、最初は茫然としてしまったけれど
屋根があるということは『住む場所がある』ということ。
『屋根と四つの壁に守られて、健康でさえあれば道は開けるから。』
と話して下さいました。
このおばさまは70代だったのだと思うけれど、
実はまだ小さかった一人娘とおばさまを残して、
ご主人は20代の若さで他界されたそうです。
台所に若い、ハンサムなご主人の写真が飾ってありました。
ご主人はインドの上流階級の家の出のようで、亡くなられたあとは
ご主人のご両親の豪邸で同居しなさい、と言われたそうですが、
娘を連れて独立することを決心。
その後、再婚することもなく、
当時では珍しいシングルマザーとして生きてきたそうです。
『他のお友達のようにあまり旅行には連れて行ってやれなかったけれど、
娘には十分な教育はさせてやりたかった。』と話すおばさま。
のち、薬剤師になったお嬢様は同業の男性と結婚。
そのお嬢様にも娘が生まれ、
時々、『おばあちゃま』の所に遊びに来ていました。
屋根や天井があるのは当然じゃない、と言ってしまえばそれまでですが、
理屈を並びたてるだけでなく、
実際、さまざまな山あり、谷ありの人生を乗り越えてきた
経験者の言葉には重みがあります。
私のフラットにもどうぞ
とお誘いしても、『いいのよ、うちにいらっしゃい
』とその後も時々、コーヒーとインドのおやつをご馳走になりました。
私の両親がロンドンに遊びに来てくれた時は
私たち親子共々、誘って下さいました。

おばさまの言葉を聞いて以来、ふと、天井を見ては
『どうもありがとう
』と基本に戻ることができます。
その後、私は引っ越しましたが
おばさま、最近どうしているかな?
と思い出しては、心が安らいで行く自分がいます。

トーキングイメージの小畠利子について