RINの奇妙な恋愛 ~The strange tale of romance ~ -17ページ目

RINの奇妙な恋愛 ~The strange tale of romance ~

こンな髪形してますが、アラフォーのおっさんです。
このブログでは、過去に体験した奇妙な恋愛話を綴ってます。
一部不快な表現も含まれておりますので、予めご了承ください。

『あ、リン、ちょっと今、エエか?』

それは東南アジアから帰ってから1カ月後、歳も押し迫ったある平日の昼間、突然タクヤから私に連絡があった。

電話

タクヤとは中学3年の時に少し遊ンだくらいで、それも2人だけで遊ぶのではなく、仲の良いグループの中の1人というくらいだった。

卒業後もあまり会うこともなく、同窓会の時にたまたま目に付いたのが彼だった、と言う程度。

彼がユキコをお持ち帰りしたあとのコトもコチラからは何も訊いてなかったし、逆に私もタクヤから何も訊かれるコトも無く半年ぶりに声を聴いた。

そもそも、私はタクヤが「どこに住ンでいるのか」、「何の仕事をしてるのか」、さえも知らなかったくらいだ。

『あのナ、リンはあれから高橋とナニかあったか?』
「え? い、いや、別に何も無いケド」
『そうやわナ。お前がアイツを攻略できるとは思えンわ。ハハハ』
「なンや、イヤミ言いに来たンかいナ!」
『い、いや、そンな世間話してる場合とちゃうンヤ。ちょっとオレ、ヤバいコトになって・・・』

タクヤは25歳で結婚したらしいが、その後、隣市の分譲マンションを購入したらしい。
そして、ヤバいコトとは次のコトだった。

黒服

半年くらい前(私が眞知子サマに誓いをした頃)、タクヤが仕事から帰って自宅マンションの駐車場に車を停め、車外に出ると目の前に眞知子サマが3人の黒い服を着た男と立っていた。

タクヤの前に眞知子サマが立ち、左右と後ろを黒服が囲む。そして柄の悪そうな口調で眞知子サマが次のように凄ンだ。

「タクヤ、オマエ、あっちこっちでいらンコトしてるそうやなぁ」

何のコトかわからないタクヤは、とりあえず、とぼけてみせる。

「あかンワ、コイツ。やっぱり痛い目に遭うてもらおか」

後ろの黒服が、かすれた、しかしドスの効いた声で喋る。
振り返ろうとしたタクヤに、いきなり眞知子サマがローキックを放ち、よろめいて前のめりになったところを、今度は顔面に眞知子サマの拳が突き刺さる。

「オマエのいらン噂話で、コッチはえらい迷惑こうむっとるンや!!」

顔面を押さえて蹲るタクヤの背中に、今度はしゃがれ声の黒服の蹴りが入る。

「おらぁ、立てヤ!」

次に左右の黒服がタクヤの両脇を抱えて強制的に立ち上がらせる。
よろよろと立ち上がったタクヤの前髪を掴ンだ眞知子サマは、さらに追及する。

「ワレぇ、ユキコにもだいぶホラ話を吹き込ンだみたいやナ。アタシがいつ、オマエと付き合ったンや? え? おい!」

血の出る鼻を押さえ、なおもトボけようとするタクヤの腹部に、大きく振りかぶった眞知子サマの拳が突き刺さる。

「ワレぇ、むかし、アタシに告白して相手されンかったからゆうて、あるコト無いコト吹きまくってたそうなナ! 誰がホスト狂いやねン!! アタシが男に不自由するワケあらへンやろ!」

腹部を突かれ、悶絶して前屈みになるタクヤの顔面に、なおも眞知子サマの拳が突き刺さる。

「それから、ユキコのコトや。あの晩のコトは、もうユキコの旦那にバレたそうやデ!」

涙声になりながら言い訳するタクヤに、左側の黒服が囁く。

「オッサン。不倫の代償は、そらァ高ォつきまっセ。100か200か、そのうち連絡ありますよって。ムハハ」

凍りついた表情のタクヤに向かって、眞知子サマはさらに恐ろしい台詞を言う。

「ワレ、○○○○の下請会社の孫請やってナ。今までエエ商売してたようやケド、この先はわからへンでェ。それから、オマエとこの娘、○○幼稚園の○○組、担任は○○先生やなぁ? ホンで、オマエの嫁ハン、○○の○○○○でパートやってるやろ。ちゃぁンと家族を護ったらナ、この先知らンデぇ」

土下座をして謝るタクヤの頭を踏みつけて、眞知子サマは高々と笑いながらこう言う。

「アハハハハ。このヘタレ! これからは身分わきまえて生きィよ!」

・・・・・・・・・・・・・・・

話を聞き終わって絶句している私。
私の知っている眞知子サマとは、まるで別人のようだ。

『ホンマ、エライ目に遭うたワ。口は災の門やナ。ハハ』
「ホンなら何か? 眞知子サンはヤクザでも雇ったンか?」
『いや、オレも商売柄ヤクザには知り合いがおるケド、どうも違うみたいヤ」
「不倫の慰謝料は?」
『あれは脅しダケや。実際に旦那からオレとこには何の連絡も無かった」
「ホンならシバかれただけで、まだ良かったがナ。」
『いやいや、話はこれで終わりとちゃうねン」

タクヤの仕事は、某インフラ系の大企業から発注を受けた下請会社から仕事をもらっている孫請けの自営業者らしい。
半官半民の仕事らしいので、大儲けはできない代わりに安定した収入が入る、一生食いっぱぐれが無いちょっと羨ましい仕事だ。

ところが、この3ヶ月間、まったく仕事が入ってこない。
20代前半に親からこの仕事を引き継いで、この5年間でこンなコトは1度も無かったと・・・
毎日、親会社からの連絡を待つので他の仕事もできず、しかし仕事がないので収入もゼロ。
ヨメのパート代だけでは当然足りないので、今は貯金を食い潰し、ヨメの実家にまで借金をして生活しているそうだ。

『そンなワケで、なぁ。どっかカネ貸してくれるトコ知らンか?』
「いや、オレとこは無理やデ。」
『ちゃうちゃう、リンに借りようっちゅンや無いねン。リンかて、100や200の大金、スグにどうこうでけへンのは解ってるわ』
「100や200の大金? そうか。しかし、残念ながらオレは普通のサラリーマンや。金融屋にも資産家にも知り合いはおらンわ。」
『そうか。不動産屋やったら知ってると思うたンやケドなぁ・・・』
「すまン。勤務先は不動産屋やケド、直接顧客と交渉する営業マンとは違うンや。」
『あ、そうやったナ。長いコト会うてへンカラ忘れとったワ。ハハ。ごめンごめン。ホナまた何かあったらTELするワ』
「ああ、チカラになれンでスマンかったナ。」

そう言ってタクヤは電話を切りった。

パーキング

「ここの孫娘サン、もう幼稚園に通ってへンらしいデ。辞めたらしいワぁ、なぁ奥サン。」
「そうそう、あそこの息子サン夫婦、ずっと仲が悪うて最近は別居してるのかも知れへンねンて、ねぇ○○サン。」
「ここのお宅も古なって壊したンと違うて、売ったンちゃう? そやケド、どこへ引越さはったンやろねぇ。なぁ、知ってはる、○○の奥サン?」

タクヤの実家が取り壊され跡地がコインパーキングになった時、近所の主婦が噂話をしているのを聞いたのは、タクヤから電話があった日から3カ月くらい経った頃。
そう、私がまだ家族から引き離される少し前だったと思う。

このエピソードはここまで。


次回は本編へ、つづく
『ほら、ベランダも広いし、キッチンもまぁまぁ、お風呂もなンとか2人で入れるわネ♡ じゃあ、明々後日には住めるワ!』
ここは眞知子サマの自宅からひと駅離れた場所にある、築10年の賃貸マンション。

部屋

2人は元旦に別れたハズなンだが、あれから早くも1ヶ月が経った。
夜中の電話で呼び出されたあげく、私の意思はまったく考慮されずに眞知子サマとのお付き合い(?)は強制的に継続させられてしまった。

別れ話の前もそしてその後も、2人のデートは眞知子サマの提案で「割り勘」になっているが、ホテル代に関しては眞知子サマは絶対に払わない。

『だって、情事のお金をオンナが出すなンて、お金でオトコ買ってるみたいで嫌なの』

眞知子サマは眞知子サマなりの拘りがあるらしい・・・
そうは言っても毎週毎週ホテル代を払うのは、普通のサラリーマンには少々キツイ。

『じゃあ、2人でマンションを借りれば良いじゃない。そうヨ!それがイイわ!よし、決まり。あさっての水曜日に契約ネ♡』

――――――そンな。100均でモノ買うみたいに簡単に言うケド・・・

ところがホントに3日後、眞知子サマは一体どンな人脈があるのか、相変わらず恐るべき行動力でこの部屋を探してきた。

マンション

『保証金は無しで、礼金は家賃1ヶ月分、今月の家賃は日割り計算ネ。ココのオーナーは知り合いだから、だいぶ安くしてもらったのヨ♡ うふ。じゃ、リン、ココにリンのサインとハンコ』

どうやら、私ヌキで話は決まっていたようだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そして、その週末。
「会社の分室勤務になったから、これからは泊り込み勤務が増える」、なンて、大ウソをつき、私は自宅のPCと身の回りの荷物を持ち出した。
眞知子サマも着替えやその他、いろいろなモノを部屋に運び込ンだ。

『ベッドは通販で買ったから、お昼には届くワ。それから、リンが持って来た下着は全部捨てなさい。今日からコレを身に付けるのヨ!』

―――――あらぁ・・・

それは赤や黒の男性用下着だが、布は最小限の面積で、なかにはレースのモノや後ろがヒモ状態のモノだった。

『今日からこの部屋に入るときはリンの服はこれダケ。これ以外は身につけちゃダメヨ♡ うふふ。全裸よりはイイでショ♡』

―――――いや、ある意味、全裸より恥ずかしいンですが・・・

Tバック

そしてその日から、この「愛の巣」とも「飼育部屋」ともいえるこの部屋での生活が始まった。

眞知子サマは服を着ているのに私はほぼ全裸、それに私のソバにいるときは絶えず私のカラダのどこかを弄ンでいる。
食事をしながら片手はグラス、もう片手は私のペ○スとか、1時間以上も乳○を引っ張って遊ぶコトもあった。
眞知子サマの気が向いたときは何時であろうが、その時に私が何をしていようが、眞知子サマへのご奉仕が開始される。

―――――太陽が黄色く見えるって言うケド、ありゃあウソやナ・・・

もうすぐ30歳になる私だったが、一日に3回や4回は当たり前、出るモノが無くなっても無理矢理に勃たされるコトも多々あった。
でも、この部屋を使うのは週に3回、水曜日と土日ダケで、土曜の夜以外は私を自宅に帰らせてくれた。
それは、眞知子サマも主婦であり、また子供の世話もあるタメ、そうそう外泊は出来なかった。


そう、あのコトがあるまでは・・・


『じゃあ、どっち? どっちを選ぶのヨ! あ、リン。ひょっとして、アタシから逃げられるとでも思ってるの?!  バカねぇ。うふふ♡』


つづく
『リン、セフレになりなさい!』

―――――え?

初詣

今日は元旦なンで、午後から眞知子サマと2人で初詣に行き、そのあとレストランで軽く食事をした。
歩き回って疲れたのと、さっき飲ンだビールが少しまわってきたので、いつもとは違う神社の近くにあるホテルに入った。

眞知子サマと付き合ってから、かれこれもう半年が過ぎていた。

この半年の間、土日も平日もずっと逢っていて、帰りはいつも深夜になっていたが、実は眞知子サマと私はお互いに別の相手と結婚し、それぞれ子供もいる。

そう、いわゆるW不倫、赦されない恋愛。
もっとも、私たちの場合は恋愛というよりは、私が眞知子サマにお仕えしているようなカタチだが・・・

眞知子サマは夜の仕事がメインなので深夜の帰宅は当たり前だが、サラリーマンの私が毎晩深夜に帰るのは不自然すぎる。
実のところ、今日も出かける時は元旦から外出する言い訳をするのにかなり手間どった。

男の私が休日に家にいないのはともかく、一家の主婦が常に家を空けているコトについて、眞知子サマの旦那は何も言わないのだろうか?

―――――それに、今日は元旦。普段は何も言わない我が家でさえ絡みつくような質問をしてくるのに・・・

『なぁに、リン? 今日はぜンぜン楽しそうじゃないわネ!』
眞知子サマは私の浮かない表情にスグ気付いたようだ。

『どうせ家族女のコト考えてるンでしょう? リンのコトは何でもスグ判るのヨ!』

眞知子サマは私の妻を“家族女”と呼び、自身の相手は“オッサン”と呼ンでいる。

そして私がその2つのワードを口に出すコトを固く禁じている。(しかし眞知子サマが言うのは良いらしい)

『どうしたの? まさか、バレたの?』
「た、たぶン、勘付いたかと・・・」
『どうするつもり?』

―――――どうするって言われても・・・

『アタシはバレても平気。だって、オッサンには5年以上前から愛人がいるから。だから、もうアタシには興味ないのヨ』

―――――ええっ? 初めて聞いた!

『アタシはオッサンより多く稼ぐから、単なるカネの成る木と思ってるみたい。手放すつもりは無いケド、可愛がるつもりも無いのネ。フっ。』

私が初めて聴いた、眞知子サマの乾いた笑い声だった。
そう言えば、眞知子サマがときおり見せる、あの寂しそうな表情には、そンな深いワケがあったようだ。

『だからネ、アタシは離婚されない代わりに、一言だって文句言われるコトも無いの。だって、お互いサマだから。ふふっ』

―――――・・・。


『でも、リンは違うわネ。家に帰ると“良い旦那”とか“良い父親”をしてるンでしょう? アタシはそれが嫌だったから、リンが家にいる時間をずっと奪ってきたの。うふふふ♡』

―――――そ、そンな・・・

『いいわヨ。別れてあげる。その前に、最後のご奉仕しなさい!』

―――――別れる、のか? オレはこの素晴らしい女性と別れられる、のか? そンなコトが、出来る、のか?

いつもなら夢中になってご奉仕をするのに、今日はさすがに集中出来ない。
しかし、行為自体はいつも通りできてるみたいで、いや、眞知子サマはいつもより激しく私のカラダを、何度も何度も貪るように求めてきた。

そして、眞知子サマが6度目の絶頂を迎える時に、まるで狂ったように叫ンだ。

『リン、セフレになりなさい!』

―――――え?

『もう毎日じゃ無くてもイイの! 月に1度でもイイから! もうリンじゃないとダメなの!リンが欲しいのよォ!!!』
「は、はいィ!あ、ありがとうございますぅ!!」


ところが・・・。

いつもより激しく絶頂に達した眞知子サマだったが、終わったあとはだンだンと覚めてきたのか、さっきとは逆のコトを言い出した。

別れ話

『リン。さっき言ったのは、嘘よ、ウ・ソ』
「え、ええ?」
『だって。それじゃ、アタシ、ただの淫乱女じゃない! アタシはずっと、心の底からリンを愛してたのヨ』

―――――ウッ。

胸の奥の何かが急に痛くなったような気がした。

『そりゃあ、リンにはイジワルしたりイジメたりしたケド、その代わり愛情もたっぷり注いだつもりだけど。違う?』
「ち、違いませン。眞知子サマの愛はいつも感じてました。だ、だから、とっても幸せでした」

『イジワルするのと、リンの家庭を壊して破滅させるのは、それは全然違うワ。それに、アタシはまだ若いンだモン♡』
「え?ま、 まぁ確かに。わ、若いダケじゃなくて、とっても美しいデス」
『そう?ありがと。だ・か・ら。今度は独身の彼氏を探すの。リンよりお金持ちを探して、その時はオッサンと別れて再婚するの。リンともそうするつもりだったケド、ちょっと時間がかかり過ぎるじゃない?』
「は、はぁ・・・」
『言っとくケド、アタシがフラれるンじゃなくて、リンがアタシに棄てられるンだから、ネ♡』

帰り道

ホテルを出たあと、2人は無言で別々の方向に歩き出した。
しかし、私は途中で引き返し、眞知子サマの後を追った。
肩を落として寂しそうな後姿に抱き着きたくなったが、眞知子サマがタクシーを停めるのを見て、やはり足を止めてしまった。

―――――コレで良かったンや・・・

ホテルから自宅までは、おそらく4kmはあっただろう。
正月の風は冷たく、ナミダで濡れた頬に突き刺さるように吹き荒れている。
ときおり、初詣帰りの幸せそうな家族連れやカップルを見かけると、自分はなンと不幸なンだと、またナミダが流れてくる。

―――――いいや、コレでええンや。コレで良かったンや・・・

帰る道道、溢れるナミダを拭いもせずに、自分で自分に言い聞かせながら、独りトボトボと歩いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

自宅に着いて洗面所で顔を洗っていると、リビングから家族の笑い声が聞こえてきた。
どうやら私の両親が来て、子供にお年玉を渡しているようだ。

「お正月は楽しいネ!だって、パパも一緒にいるンだモン♡」

娘の声に苦笑いする私を少し冷ややかな眼で見る妻。
妻とは1年以上会話をしてないが、今夜はさほど機嫌が悪いようでもないらしい。

「ねぇ、あとでトランプしよ!」

娘にせがまれて、さっき言った自分へのコトバをもう一度ムネの中でつぶやいた。

―――――やっぱり、コレで良かったンや・・・

眞知子サマは魅力的な女性だったが、やはり私には不釣合いだった、高嶺の花だったと諦めた。

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そして、真夜中。
寝室は娘が生まれた時に夫婦別々になっている。それでも私の寝室以外で物音ひとつ聞こえないのは、家族全員寝静まってるようだ。
少し飲み過ぎた私は、ノドの渇きで眼を覚まし、キッチンへ水を飲みに行った。
キッチンから戻って枕元の携帯を見ると、着信ランプが点滅している。

『もしもし、アタシ。やっぱり気が変わったワ。 ダメ!ぜったい離さない!今から逢いに来て!今、スグ!』



つづく