奇妙な依頼 | RINの奇妙な恋愛 ~The strange tale of romance ~

RINの奇妙な恋愛 ~The strange tale of romance ~

こンな髪形してますが、アラフォーのおっさんです。
このブログでは、過去に体験した奇妙な恋愛話を綴ってます。
一部不快な表現も含まれておりますので、予めご了承ください。

「それじゃ、ワシらは今からお姉ちゃんの店に行くケド、キミはホンマに行かへンのか?
相変わらずお堅いやっちゃのぉw」

笑い声を残しながら3人のオッさん共が去って行った。

ココは東南アジアの某国。
私は理事長のお供で、3泊4日の旅行に参加している。
表向きは「視察旅行」となっているが、同行しているのは医療材料販売会社の社長と生命保険会社の営業マンで、旅程の方はゴルフと宴会の接待尽くし。
これではいったいなンの視察をするのやら。
さらに今からオッさん達が行く所は買春宿のハズだ。

私は別に身持ちが硬いワケではないが、東南アジアは病気が怖いと聴くので、そこは「君子危に近寄らず」に徹しているダケである。

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夜までヒマを持て余すのもなンだから、とりあえずプールにでも行って、カクテルを飲みながらゆっくりとくつろぐコトにしよう。

と、プールサイドでジントニックを飲んでいると、携帯が鳴り出した。

――やっぱり一緒に来いってか?

理事長からの電話だと思ったが、声の主は全く違うヒトだった。

『リンさん?お久しぶりです!
今ちょっとイイですかぁ?』

――ん?誰だったかなぁ・・・

梨乃さんに別れを告げてから、一年半が過ぎた。
私はもうすぐ36歳になろうとしているが、アラフォーと呼ばれるこのオッさんに女性から電話があるとは珍しい出来事だ。

『あ~!リンさん、アタシのコト覚えてませんかぁ?』

画面には「石川 美紅」と表示されているが、さて誰だったか・・・

――お!確か異業種交流会で知り合った、介護士の・・・

「いやいや、ちゃん覚えてますヨ!
確か○○介護センターの石川さんですよネ?」

『嬉しいィ!
ちゃんと覚えていてくださったンですネ♡
あ、今ちょっとお時間イイですかぁ?』

「あ、スンマセン。
実は私、今 外国にいてまして、このまま話すと通話料がびっくりする金額になりますよ。
明後日には帰国しますケド、それからじゃダメですかネ?」

『え~!!それは大変だぁ!
じゃあ、後でメールするから読ンでくださいね。
帰国したら連絡くださぁい♡』

――なンだろう?

職場には多くの女性スタッフがいるのだが、私の職位では女性が親しく話しかけるコトもなく、稀に話しかけてくる女性がいてもたいてい私よりもずっと年上で、その内容もクレームばかりだ。

異国の地で若い女性の声を聴けるとは思ってもみなかった私は、偶然の電話に少なからず心を踊らせていた。

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私は年に数回、医師・歯科医師・薬剤師・介護事業者などで構成される異業種交流会に参加している。

石川さんとはおそらくそのトキに知り合ったのだろうが、何を話したのか、またどンな容姿の女性だったのか全くもって覚えていなかった。

そして数分後、さっきの女性からのメールが届いた。

『ミクで~す!
リンさん、お久しぶり(^_-)
アタシのコト覚えてくれていてありがとう♡
実は、リンさんにおり行って相談したいコトがあります・・・』

――な、なンや・・・?

『勤務先が倒産しそうなンだけど、もしそうなったら給料はどうなるの?
それから、経営者にお金を貸してるンだけど、どおしたら還してもらえるのかなぁ?』

――おいおい(^_^;)
さっきまでの踊った心をどうしてくれるンだ!

思わす叫びそうになった私だが、よく考えると(考えなくとも)アラフォーになったオッさんに若い女性から色気のある誘いがあるハズは無かった。
要するに彼女は、単に事務長としての私に相談を持ちかけたダケだった。

――なンでこンな案件を国際通信を使ってまで・・・

私は多少愚痴りたくはなったが、「義を見てせざるは勇無き也」の師匠の教えを守るため、雇用保険の概要と制度を解説したメールを石川さんに返信した。

『あのぉ・・・
勤務先は介護事業者じゃないンです。
実はアタシ、あンまりヒトには言えないトコロで働いているンだけど・・・』

――はあ?

携帯の写メデータに交流会の写真があったコトを思い出した私は、とりあえず石川さんの写っている写真を探してみた。
人物が固まっているグループ=職業別なので、介護士の中から知っている顔を探すにはさほど手間取らなかった。

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――この娘だったよナ?

写真に写っている石川さんは、歳の頃なら28~29歳で、利発で気の強そうな、そして清らかな印象の女性だった。

――いったい彼女に何があったのか?

こうなるとメールのやりとりはかなりまどろっこしかったが、なにせココは海外なので長時間の通話が憚られる。
私は要件を掻い摘んでメールを送ったが、彼女からの返信はイマイチ要領を得ない。
彼女の方ももどかしくなったのか、何度目かの返信は以外なモノだった。

『あのぉ・・・
もしリンさんさえよろしければ、この週末にでもお食事をご一緒させていただけませんか?』

――え?そ、そりゃあ・・・

私には断る理由など何も無い。
むしろ喜んでお受けしたいトコロだが・・・

――あ、ああ、そうネ(^^;;

何もデートのお誘いを受けたワケじゃないから、そう手放しで喜ぶコトでも無かった。

そンなワケで、私は元介護士さんから、この奇妙な依頼を引き受けるコトになった。

季節は春にはまだ早い2月の中旬、東南アジアの暑い夕暮れの中、35歳と9ヶ月の出来事だった。


つづく