ロングステージを走り終え、何とかハンモックに潜り込んだものの、腰の痛みで明け方まで寝付けなかった。目を覚ましたころには、すっかり昼を過ぎていた。
この日は後続のランナーがゴールするのを待つだけ。ゆっくりと休めるはずが、全身がムズムズして、それどころじゃない。
かゆみの原因は単純明快。蚊帳を閉め忘れ、蚊が次から次へと僕のもとへ食事にやって来たのだった。刺された箇所を気にすまいとするが、かゆみが増してくる。
我慢しきれず、背中をかきむしろうとした、その時。かゆみと筋肉痛がタッグを組んで、金網デスマッチを仕掛けてきた。
我慢しきれず、背中をかきむしろうとした、その時。かゆみと筋肉痛がタッグを組んで、金網デスマッチを仕掛けてきた。
背中をかこうと体勢を入れ替えた途端に、腰回りがギシギシと筋肉痛に襲われる。その姿勢で止まっていると、かゆみが全身を駆け巡る。筋肉痛が動きを止め、かゆみが神経を逆なでるという絶妙なコンビネーション。逃げ場のない負け戦の気分にさせられる。
腹を満たそうとハンモックから外に這い出る。足の裏は至るところに水ぶくれができ、持ってきたビーチサンダルすら履けない。
今度は一歩進むたびに、足の裏がバットで殴られるよう。舞い落ちる羽毛のように、そっと足を下ろす。キャンプ地にいる他の選手を観察すると、僕の歩き方と似たり寄ったりだ。程度の差はあれど、こんなになるまで足を酷使して走って来たのだから正気の沙汰とは思えない。
腹を満たそうとハンモックから外に這い出る。足の裏は至るところに水ぶくれができ、持ってきたビーチサンダルすら履けない。
今度は一歩進むたびに、足の裏がバットで殴られるよう。舞い落ちる羽毛のように、そっと足を下ろす。キャンプ地にいる他の選手を観察すると、僕の歩き方と似たり寄ったりだ。程度の差はあれど、こんなになるまで足を酷使して走って来たのだから正気の沙汰とは思えない。
何もないところで立ち止まっていたせいか、スタッフが心配して近づいてきた。メシを作りにいく途中だと説明する。すると、僕の手からアルファ米のパックをひったくり、お湯を注いで持って帰って来た。
よほど痛そうに見えたのだろう。前夜から迷惑を掛けてばかりでかたじけない。この後、洗濯も手伝ってもらう。優しさが沁みる。
よほど痛そうに見えたのだろう。前夜から迷惑を掛けてばかりでかたじけない。この後、洗濯も手伝ってもらう。優しさが沁みる。
寝床に戻って横になる。直射日光にさらされているが、疲労困憊で気にならない。相当な暑さにも関わらず、感覚がおかしくなっているのか、ぽかぽかと温かく感じられる。
うとうとしていると、総合2位の選手がやって来た。気配を感じて蚊帳を開けて顔を出す。
うとうとしていると、総合2位の選手がやって来た。気配を感じて蚊帳を開けて顔を出す。
「お前は3位だ」と順位を教えてくれた。ロングステージ、総合成績ともに同じ順位だという。自分の順位を把握していなかったので驚いた。ただ、喜びよりも眠気が大きく上回り、出てきたのは「へえ」という間の抜けた生返事だった。
僕のリアクションが鈍いので、彼は親切にもう一度説明してくれた。むにゃむにゃと日本語で何か答えた気もするが、定かではない。すでに脳の大部分がフリーズしていた。重力のしもべと化したまぶたが落ちてくる。意識がシャットダウンし、日没を前に完全就寝。ジャングルで過ごす最後の夜は何の記憶もないまま、あっさりと終わった。