小川の後は森を抜け、ところどころに草むらがあるだけの平たんな道が広がっていた。ヒツジかウシがいたら牧場のようだと思っていたら、ずんぐりとしたシルエットの動物が遠くに見えた。ブタかイノシシのようだ。
夕焼けに染まった大地のかなたに森が見える。ジャングル以外で久しぶりに見る穏やかな風景に心がなごむ。気持ちに余裕が出たところで、後ろから接近するジョシーに気づき、手を振って歓迎する。
夕焼けに染まった大地のかなたに森が見える。ジャングル以外で久しぶりに見る穏やかな風景に心がなごむ。気持ちに余裕が出たところで、後ろから接近するジョシーに気づき、手を振って歓迎する。
痛い目に遭うのは、決まって注意力が薄れたこんな瞬間。我ながらこりない。
視線を前に戻すと、10㍍ほど先に子ブタが登場していた。丸々と愛らしい。近寄ったところで、後方の草むらから親ブタが飛び出してきた。ジャングル仕様なのか日本の規格よりも一回り以上大きい。ドラム式洗濯機のようだ。まったくかわいくない。続けざまに2頭がやってきた。巨体をどこに隠していたんだ。
度肝を抜かれて立ちすくむ。あわあわとまごつく。原生林での恐怖とは比較にならない。なにせ相手が目の前にいるのだ。突進されたらひとたまりもない。窮地だ。ピンチもチャンスも唐突にやってくる。違いは一つ。ピンチでへまをすると、必ず痛手を負うことだ。
あわあわしながら、何年か前に取材で聞いたイノシシの恐ろしさを思い出した。「警戒心が強いからばったり出くわさない限りは大丈夫やけど、成獣に襲われたら大けがするぞ」。他人事として聞き流していたが、対処法を聞いておけばよかった。畜生。
ブタはイノシシが家畜になったものだから、この場合は野良ブタ=イノシシなのだろうか。よく分からないが、危険なのは確かだ。
あわあわしながら、何年か前に取材で聞いたイノシシの恐ろしさを思い出した。「警戒心が強いからばったり出くわさない限りは大丈夫やけど、成獣に襲われたら大けがするぞ」。他人事として聞き流していたが、対処法を聞いておけばよかった。畜生。
ブタはイノシシが家畜になったものだから、この場合は野良ブタ=イノシシなのだろうか。よく分からないが、危険なのは確かだ。
走って逃げようにも、ブタの突進の方が格段に速い。障害物にできそうな木々は離れている。だだっ広い草原では身を隠す場所がない。あわわわ、冷や汗がどっと流れる。
親ブタの鼻息が心なしか荒くなる。刺激を与えず、平和的に解決せねば。こういう時はゆっくり後ずさりすればいいのか、いや、それはクマの場合だ。あわあわも冷や汗も止まらない。
親ブタの鼻息が心なしか荒くなる。刺激を与えず、平和的に解決せねば。こういう時はゆっくり後ずさりすればいいのか、いや、それはクマの場合だ。あわあわも冷や汗も止まらない。
クマもブタも大きな動物だし、一緒だろう。やけっぱちの結論で後ずさる。子ブタに背を向け、親ブタから目をそらさずに、というかそらせない。ゆっくりとその場を離れる。5㍍、10㍍……。親ブタがこちらから視線を外して離れていく。ようやく僕が無害だと分かってくれたのだろうか。すぐにでも駆け出したいが、ムダに刺激したくない。
慎重にじりじりと後ろに下がる。背後にいたはずの子ブタが気になって振り返ると、いつの間にか消えていた。
ちょっと密林を離れたからといっても油断大敵。ゴールするまでがジャングルマラソンだ。
ちょっと密林を離れたからといっても油断大敵。ゴールするまでがジャングルマラソンだ。