ペコロスの母に会いに行く 実母に注いでいる原作者の温かすぎる眼差しに思わず涙が… | Takuyaki's Blog

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 『ペコロスの母に会いに行く』
心血を注いで育ててくれた母親に対する
思慕の情と感謝の念が溢れている心温まる作品(思わず涙が…)                              描き込みが少ないシンプルなタッチのアニメなのに
伝わってくるものがとても多い

岡野雄一という人が,自身の母親との交流を描いたエッセイ漫画。それが,『ペコロスの母に会いに行く』という作品です。

作者である岡野雄一と、認知症を患った母の交流を描くエッセイ漫画で、切ないながらもユーモラスで温かみのある作風が特徴。「ペコロス」っていうのは,「小さな玉ねぎ」を指す言葉です。漫画の登場人物にもなっている作者(岡野雄一さん)の頭が禿げているということで,「ペコロス=作者(岡野雄一さん)」ということになっています。

 

雄一さんのお母様である岡野みつえさんは,あるときから認知症を患うことになり,死んだ夫のために酒を買いに行こうとしてみたり,古い下着を大量に溜め込んだり,生活の場であるグループホームに面会に来た息子(雄一さん)のことが誰だか分からず,禿げ頭を見てようやく息子だと認識する…等々,様々な形で病による影響が表に出てくるようになります。

夫が既に亡くなっていることを忘れ,一般人の目には見えない夫(幻)と話をしてみたり,幼いときに戦争で命を奪われた妹の姿(これも幻)を見て,その幻の妹を寝床であやしてみたり…と,認知症の症状が徐々に露呈し,少女にもどって無邪気な言動を示すようになっていきます。そんな様子を優しく見つめながら,実母の来し方にしみじみと思いを馳せる雄一さん。

多くの兄弟がいるなかの長女で,畑仕事でボロボロになった弟や妹たちの服に,あて布をするのがみつえさんの日課でした。「死んだ夫に会えるのならば,ボケるのもわるいことばかりではないね」という思いでいる雄一さんとみつえさんは,過去と現在が交錯する日々を粛々と送っていくのでありました。

 

母と過ごしたそのような毎日を,岡野雄一さんは漫画化し,それが掲載された本は,大きな話題を呼ぶことになりました。ショートアニメ化されたり,映画化されたりもしました。漫画本・映像の何れも,世間から高い評価を受け,実際,本も映画も,何らかの賞に輝いているはずです。

 

そして,この僕も,『ペコロスの母に会いに行く』の書籍・アニメの大ファンであります。
描き込み(=線の数)の少ない超シンプルなタッチの画風であるのに,みつえさんが持っている感じや,雄一さんが母親を温かく見守る眼差しが,十二分に伝わってきます。

私は,この作品を目にする度に涙腺が緩み,実際に涙をポタポタこぼすことだって,しばしばあります。そうなるのは,おそらくきっとPerhaps,漫画・アニメにおけるみつえさんと,今は亡き僕の母親の持ち味とが,見事にリンクするからなのでありましょう。

 

存命中の母と『ペコロス…』のアニメにおけるみつえさんは,醸し出している雰囲気や見た目の印象が同質であるような気がいたします。口を「ヘ」の字にしての困り顔,口をポカンと開けての放心したような表情,にっこり微笑んだときのあどけない感じ…等,共通するところが多いのです。素朴な人柄が,自然な形で言動に反映されるのですね。

僕の母は,認知症は免れていましたが,晩年にはそれとは別の難儀な病を抱えるようになったことで被介護者となり,あるとき以降,自宅内では車付きの歩行器を,外出時には車椅子を利用する身になりました。母が医療機関等へ出向く際は,介護者となった僕が車椅子を押しました。

肉親の介護期間中は,必要に迫られてあちこち走り回り,様々な経験をさせてもらいました。

岡野雄一さんの,みつえさんの描き方から伝わってくる生みの親に対する情愛や感謝の気持ち…。

それらに共感・共鳴するところ大でありまして,実の母親に向けての気持ちのありよう・心の温度という点で,雄一さんと僕はとても似ているという感想を持ちました。

 

人生の大先輩のことを「可愛らしい」とか「キュート」などと表現することに,いささかの抵抗感めいたものを覚えますけれど,みつえさんが見せる表情や仕草,みつえさんから発せられる言葉…等々は,とてもとても可愛らしいものです。当人の純朴な心根が表出していることを感じ取ることができます。

生の人間ではなく,アニメや仮想空間における人工的なキャラクターに対して愛慕の情を抱く人がいます。そんな御仁の登場が珍しくはないご時世になりました。

そういった人たちについて,最初僕は,「嗚呼,へんな時代になったものだなぁ~」…ってな思いを持っていましたけれど,よくよく考えてみれば,この僕だって,『ペコロスの母に会いに行く』のみつえさんに,特別な感情を抱いているではありませぬか。

 

機会があれば,エッセイ漫画の『ペコロスの母に会いに行く』の本や,同作品のショートアニメ(シリーズもので動画配信されているようです),もしくは映画(notアニメ)をご覧ください。

そこには,きっといいものがあるはずです。

 

※当Blogに掲載させてもらった画像には,広島県尾道市に在修している100歳越えのスーパーおばあちゃん・石井哲代さんの写真も組み込まれています。

朗らさを絶やさずに一人暮らしをしているそのおばあちゃんのことが書かれている『102歳、一人暮らし。哲代おばあちゃんの心も体もさびない生き方』という本もおススメでございます。