型破り | 田窪一世 独白ノート

田窪一世 独白ノート

ブログを再開することにしました。
舞台のこと、世の中のこと、心の中のこと、綴っていきます。

歌舞伎では演技を「型」で教えます。

 

先祖代々が培ってきた型を子々孫々に伝え改良を加えて演技の高みを目指すのです。十代二十代の頃はこの型がなかなか身につきません。こういう役者のことを「型なし」と言うのだそうです。そして三十代の頃になってやっと「型通り」の演技が出来るようになり、四十代五十代の役者の中で特に優れた才能のある役者だけが「型破り」の演技を会得するようになれるのです。

 

先年亡くなった十八代中村勘三郎がまさに型破りな役者でした。舞台上ではそりゃもう自由自在、天衣無縫。後年は1960年代に一世を風靡した劇団、唐十郎率いる「赤テント」の演出方法を歌舞伎風にアレンジした演出で観客を驚かせました。歌舞伎界では他にも芸の頂点を極めた坂東玉三郎などなど天才が大勢います。

映画界テレビ界にも型破りな俳優はたくさんいます。萩原健一、松田優作、桃井かおり、木村拓哉、等々、枚挙に遑がありません。

 

これらはすべて天才と呼ばれる人たちです。ところが物語の中には主役だけではなく脇役、端役など色んな人物が登場して来ます。しかし彼らはたまたまそのドラマの中では脇役、端役ですが、彼らの人生ではみんな主役のはずです。それぞれの人物が仕事を持ち、人間関係に悩み、人生を歩んでいるのです。天才だけに主人公としての重責を負わせるのではなく、全ての俳優が「型破り」の域までなんとか行けないものか。ずっと考えているテーマです。