夢の中に一度も会ったことのない見知らぬ人が登場して来ることがあります。でも実はこれ現実世界で実際に会ったことのある人たちなのです。
ただ、知り合いということではありません。信号待ちをしている時に向こうの歩道に立っていた人や、電車の中でちょっと目が合っただけの人など脳はその一瞬で記憶するのだそうです。そして真夜中、脳はそれらの情報を夢の中に登場させて、記憶する価値のないものは捨て、大事なものだけを倉庫に陳列するという仕分作業をするのです。
例えば台本なども、実は一瞬見ただけで脳は完璧に記憶すると言います。台本を一回読んだだけで覚えてしまうという驚異的な記憶力を持った女優の話などときどき耳にすることがありますが、最近の脳科学では、実はこの能力は誰にでも備わっている能力なのだそうです。
この場合の記憶はそのほとんどが「映像」です。台本を記憶する場合でも、そのページをまるでカメラで撮影するように脳は記憶しているのだそうです。そしてこの能力は男性よりも女性の方が優れていると言います。つまり女性は視覚や聴覚や感覚を処理する右脳を使って記憶するのです。男性の場合言語処理を行う左脳を使って改めて台詞を覚えようとするので、一度撮影した記憶が役に立たないというわけなのです。
演技をするときにも、この「映像」を思い浮かべることで認知作業が格段に具体的になります。彼はあのときなんて言ってたんだろうと記憶を辿るときに、彼が喋った言葉を思い浮かべるよりも、そのときの彼の表情を思い浮かべた方がよほど明確な認知が出来ます。この映像を多用する演技方法を俳優たちには積極的に実施して貰いたいものです。