レインマン | 田窪一世 独白ノート

田窪一世 独白ノート

ブログを再開することにしました。
舞台のこと、世の中のこと、心の中のこと、綴っていきます。

 

高級車のディーラーをしている軽薄な弟が、

重い自閉症の兄と出会うことによって、

人間として成長していく課程を描いたヒューマン・ドラマです。

 

監督はバリー・レビンソン。

主演はダスティン・ホフマンとトム・クルーズ。

第61回アカデミー作品賞を受賞しています。

素晴らしい映画でした。

特にダスティン・ホフマンの演技が凄い。

映画を見終わったあと、

彼が自閉症の兄役をいったいどういう回路で演じているのか、

全く想像が出来ませんでした。

健常者を演じる場合なら、

同じような体験をした人の資料を集めて、

彼らの心理を探っていけば、なんとか想像ずることが出来ます。

基本的に喜怒哀楽の回路が同じだと思うからです。

ところが障害者を演じる場合、脳の回路が違うので、

ただ資料を集めたり想像しただけでは、

感覚的にイメージするのが難しいのです。

 

映画を見て数年経ったころ、

テレビのドキュメンタリー番組で自閉症を取り上げていました。

そしてその中にレインマンのときの、

ダスティン・ホフマンにそっくりな人を見つけたのです。

表情、視線の動かし方、手の仕草、姿勢、歩き方。

何もかもがレインマンでした。

 

あとでわかったことですが、

彼こそレインマンのモデルとなった、

キム・ピークさんでだったのです。

つまりダスティン・ホフマンは理屈や心理、

心情からではなく、

外見を真似する方向から、

役作りをしていたというわけだったのです。

 

以前、「形が完璧になって初めて心が宿る」

というある仏像彫り師の言葉を紹介しましたが、

まさにレインマンのときのダスティン・ホフマンが、

それだったと思うのです。

 

 

▶︎近景