1声、2理解力、3容姿 | 田窪一世 独白ノート

田窪一世 独白ノート

ブログを再開することにしました。
舞台のこと、世の中のこと、心の中のこと、綴っていきます。

 

昔、役者の修行を始めたころ、

大先輩が教えてくれた言葉です。

 

舞台俳優にとって一番大事なのは声だ。

俳優は客席の一番後ろのお客さんにも、

ちゃんと聞き取れるようにしなければならない。

だから発声練習は大事だ。

 

もともと大きな劇場で、

俳優が不自然に大きな声で喋っていることに、

違和感を感じていた僕としては、

この発声が1番という考えにはずっと疑問でした。

 

当時の先輩俳優の中には、

普段の会話でも妙に朗々と、

声を響かせるようにして話す人がいたりして、

ちょっと閉口してました。

でも確かに観客に声が聞こえないんじゃ意味はないし…。

ずっと暗中模索してきた課題のひとつでした。

 

自分で劇団を維持するようになってからも、

稽古場ではリアルに、

相手役とだけ会話しろと俳優たちに言うのですが、

劇場に行くと途端に不安になります。

そこで俳優たちに大きな声は出さなくていいけど、

一番後ろのお客さんは意識して、

などど中途半端な指示をしていました。

 

人と人がお互い向き合って、

その人にちゃんと意図が伝わるように会話する。

それだけでいい、それに応じた声のボリュームでいい、

そう割り切るまでには長い時間がかかりました。

それに合った広さの劇場の確保も大切です。

 

しかし、そう割り切って以降の、

お客さんの反応も意外や意外好評でした。

「声が小さくてもちゃんと聞こえる」

「小さいから芝居に集中出来る」

それでもやはり「声が小さくて聞き取れない、

俳優はちゃんと発声練習をするべきだ」

というお客さんはいます。

でも、それもたいがい演劇関係者だったりします。

 

 

▶︎近景