アップとロング | 田窪一世 独白ノート

田窪一世 独白ノート

ブログを再開することにしました。
舞台のこと、世の中のこと、心の中のこと、綴っていきます。

 

チャップリンの有名な言葉にこんなのがあります。

 

「人生をアップで見るとシリアスになり、

 ロングで見るとコメディになる」

 

ちょっと唸ってしまうくらい、

凄い見解だなと感心します。

で、僕はこれを「愛と喝采の日々」

という映画のワンシーンで、

目の当たりにしたことがあります。

 

プリマ・バレリーナとして成功した女性と、

結婚してバレエ界を引退した、

女性2人の対照的な人生を中心に、

女の幸福は結婚か、

それとも仕事を持って自立して生きる事かを問いかけた、

良質のヒューマン・ドラマです。

 

そのワンシーンで主演のアン・バンクロフトと、

シャーリー・マクレーンが、

酒場でそれはそれは凄まじい喧嘩を始めます。

ああ、醜いな愚かだなと見ていると、

カットが変わって場面は酒場の外へ。

 

喧嘩をしながら出て来た彼女達を、

カメラはロングショットで俯瞰から撮ります。

と、映画館内が途端に爆笑に変わったのです。

小さく映った彼女たちの、

ちまちました喧嘩はなんとも滑稽でした。

 

チャップリンの言葉は、

けっして観念的なものではなかったんだと実感しました。

 

 

▶︎近景