かつて、手塚治虫さんが、
初めてアニメーションを手がけようとしたときに、
日本人は個人プレイは得意だが、
アニメーションのようにチームで作り上げるものは、
無理なんじゃないかと言われたんだそうです。
そうアドバイスした人が何を根拠に、
そんなことを言ったのかは不明ですが、
日本の演技に関しては、
それは確かだと言えるかもしれません。
歌舞伎などはあきらかに個人プレイで、
新しい役につく場合、台本というものはなく、
自分の台詞だけを抜き書きしたものを、
先輩の役者から手渡される、
という話を聞いたことがありますし、
衣装もその家に代々伝わるものを、
個人が使用し伝えていくらしいですし、
何より、歌舞伎には演出家というものがいません。
個人個人の役者が自分の役を工夫し、
自分で役を演出し、
個人が観客にアピールするのですから。
その影響は、現代の俳優にも受け継がれているようで、
舞台でもテレビドラマの現場でも、
基本は個人プレイのままです。
しかし、アニメーションに関しては、
手塚さんのエピソードなどはちょっと隔世の感があります。
今や日本はアニメ大国です。
日本人にアニメーションは向かないと言った人には、
先見の明がなかったと言えるでしょう。
歌舞伎に関しても、
中村勘三郎さんが推進していたコクーン歌舞伎などは、
演出の串田和美さんのもと、
素晴らしいチームプレイを見る事が出来ます。
チームが生み出すエネルギーの力こそが、
大勢の人を感動させるのだと思うのです。
▶︎近景