事実、シェイクスピアは支離滅裂です。
たとえば「リチャード3世」です。
狡猾で残忍なリチャード3世は、
自分が殺した男の妻に言葉巧みに言い寄ります。
そしてあっさりとその女をモノにしてしまうのです。
しかも、わずかワンシーンで。
リアリティも何もあったもんじゃありません。
世の中の女性たちだって、
そんな設定には呆れてしまうでしょう。
僕も20代の頃に読んだときは、
これはいくらなんでもと思ってました。
シェイクスピアって面白いんだけど
荒唐無稽なんだよなぁ。
なんて偉そうに批評してました。
でも、最近読み返してみて、
ちょっとびっくりするような台詞がありました。
リチャード3世が女性に向ってこんな一言を言うのです。
「あなたの美しさが、世界中の男を殺したいと思わせたのだ」
すごい台詞です。
リアリティなんか必要ない、と思わせてくれる台詞です。
これがシェイクスピアの面白さなのです。
シェイクスピアを面白いと思うのも、
支離滅裂だと思うのも自由です。
答えがひとつじゃないから面白いのです。