良いデザインには思いが詰まっている。
インテリアデザイナー、片山正道さんの言葉です。
車でも電機製品でもインテリア家具でも、
名品と呼ばれるもののデザインにはエネルギーがあります。
単に形が美しいとか機能的とかいうだけではなく、
見る者を惹きつけて離さないオーラというものがあるのです。
ミニ・クーパーという車に17年間乗っていました。
それだけ長い期間乗っていても一向に飽きなかったのです。
部品を交換し、修理を繰り返し、
もしかしたら日本車よりも、
維持費にお金がかかったかも知れません。
しかし、飽きたら短期間で買い替えるという人に比べれば、
トータルでは安くすんだのではないかと思っています。
マッキントッシュの経営者、
スティーブ・ジョブスにこんなエピソードがあります。
新しく出来上がって来た、
パソコンの基盤を見て彼は言いました。
「美しくないからデザインし直してくれ」
基盤なんてパソコンが出来上がってしまったら、
誰の目にも触れません。
でも、それこそが彼の美学なのでしょう。
そのこだわりが外観のデザインにも反映され、
製品にエネルギーが生まれるのです。
BMW社から新しいミニが登場したとき、
旧ミニ愛好者からはあまり支持されませんでしたが、
旧ミニと比較しなければ中々良い車だと思いました。
その直後、日本の大手メーカーから、
新ミニに良く似たデザインの車が発売されました。
あれ、ちょっとこれ問題じゃないのと思っていたので、
長年お世話になった、
ミニ丸山というショップに立ち寄ったとき、
丸山社長とその話をしました。
「あんなことしちゃいけないよね」
「そうですよね、真似の真似ですもんね」
その大手メーカーにだってデザインにエネルギーのある、
歴史に残る名車はいくつもあります。
要は、会社の規模を大きくしすぎたために、
ひとつひとつ入魂した車作りが、
出来なくなってしまっているのです。
10年、20年のスパンで見れば、
確かに儲かったのでしょうが、
結果、会社としてのその誇りを、
失う事になってしまっているように思います。
60年代、ひとつひとつの車にエネルギーが備わっていた、
あの頃のような車の出現を期待したいです。