台本 | 田窪一世 独白ノート

田窪一世 独白ノート

ブログを再開することにしました。
舞台のこと、世の中のこと、心の中のこと、綴っていきます。


よく台本に書き込みをする人がいます。

彼らの台本を見せてもらうと、

余白にはぎっしりと文字が書き込まれていて、

いかにも台本を読み込んでいるなという感じがします。


しかし、僕自身はこの台本に書き込むということが、

昔からどうもしっくりきませんでした。

これまでの上演台本を改めて開いてみると、

余白はほとんど真っ白で印刷したばかりのようです。

まあ、演出も兼ねていることがほとんどなので、

たとえば挿入曲のきっかけや、

曲名などを書き込んだりはしますが、

演技的なことはまったく書きません。


台詞のニュアンスなど文字にしたとたんに

なんだか色あせていくというか、

なんか思っていたことと違うなと感じてしまうのです。

そんなわけで何年も前から、

劇団員たちにも「メモ禁止令」を出して、

稽古中は台本に集中するのではなく、

目の前の俳優の演技に、

集中するようにアドバイスしてきました。


先日、テレビの情報番組を見ていて、

「感覚的なことはメモしないほうが良い」

ということを知ってなんだかとても腑に落ちました。

演技というものも、その作業はとても感覚的なものです。

確かに事前に登場人物のバックグラウンドを考えたり、

演技の方針を決めたりするのは左脳の作業ですが、

実際に台詞を喋るときなどは感覚的な右脳の作業です。


つまり、理屈ではなく、

僕の脳が演技のことを文字でメモするという、

左脳の作業に違和感を感じていたというわけなのですね。



▶︎笹塚