唐子浜海水浴場での出来事で、
そういえばこんなことがありました。
夜、海の家でみんな集まって食事していたときのことです。
突然、雨戸を激しく叩く音。
ただ事ではない叩き方に、叔父が立っていって雨戸を開けると、
そこには衣服の乱れた若い女の人が、
「助けてください!」
と泣きながら入って来ました。
なんか映画のワンシーンみたいだと思ってドキドキしていると、
そばにいた叔母が「子供が見るもんじゃないよ」
と僕を遠ざけました。
と、そこへ若い男の人が現れて、
「すいません、なんでもないんです」
「なんでもないことないわ」
「いいから、ほら行こう」
「いやっ!」
子供の僕には何があったのか皆目見当がつきませんでしたが、
なんだか、緊迫した空気だけは痛いくらいに感じていました。
中学生くらいになって、
あのときのお兄さんとお姉さんが何をしていたのか、
ハッキリ理解出来るようになりました。
最近になってあの時のことを思い出すと、
当時の若者は純情だったんだなあと、
あらためて思ったりします。