以前、フジテレビの「ランチの女王」というドラマに、
出演させていただいたことがあります。
麦田なつみという女の子がひょんなことから、
キッチンマカロニという男ばかりの家族で経営している、
レストランで働くようになります。
彼女の可愛さ懸命さに兄弟3人はたちまち恋をします。
でも、もともと不良だった彼女のところへ昔の男が現れ、
みんなに迷惑をかけると感じた彼女は、
店を出て行く決心をします。
僕の役は川端守という通いのコックで、
最終回、出て行くことに決めた彼女に向って、
「なっちゃんには、ずっとここにいて欲しいな」
と声をかけます。
その台詞をもらったときに、
僕は「理由」を考えることにしました。
なぜ川端さんはなっちゃんを引き止めたんだろう。
ただ可愛いからとか、
好感を持っていたからというだけではないはずなんです。
色々考えているうちに、
僕なりのサイドストーリーが生まれました。
川端さんは、たぶん中学を卒業して、
すぐに料理人の道へ入ったんだろうと思います。
そして、何軒目かの就職先がキッチンマカロニでした。
店のご主人、鍋島権造さんに厳しく仕込まれる中、
店の奥さんにはやさしくしてもらったんだと思います。
奥さんは子供4人を育てながら、
懸命にお店のお手伝いをしていました。
川端さんはとても綺麗で可愛らしい奥さんに、
あこがれていたんでしょうね。
「俺もいつか、こんな綺麗な嫁さんを貰って自分の店を持とう」
なっちゃんはきっと、
亡くなったみんなのお母さんにそっくりなんだと思うんです。
顔も姿も、心根も。
だから、兄弟みんなが彼女に恋してしまうんです。
これで「理由」が出来ました。
別にだからどうだということはありません。
ただ自分でそう決めていただけです。
でも、そのおかげで僕自身は安心出来ました。
川端さんの気持ちにちょっと近づけた気がしました。
でも、悔いは残ってます。
もっとなっちゃんの心を動かすことは出来なかったかなあ、と。