ポメラというデジタルメモをご存じですか?
一見、小さなノートパソコンのようですが、
メールもインターネットもゲームも音楽もなにも出来ません。
出来るのは文字を打つことだけ、
つまりワープロですらないわけです。
でも、実際に使ってみるとこれが実にいいんですよ。
他のことが出来ないから、
頭で考えていることを書き出すことに集中出来る。
しかもパソコンのように起動、終了を待たされない。
2秒で始められてキーボードを閉じるだけで終了。
このシンプルさが生理的にとても気持ちいいんです。
しかも単4電池2本で約20時間も使えるので、
バッテリーの持ちを心配するストレスからも解放されます。
これ「外で音楽を聞く」ことだけに機能を絞った、
SONYの初代ウォークマンみたいです。
しかも機能だけではなくモノとしての質感もとても良質で、
サイズもキーボードを折りたたむと文庫本くらいでコンパクト。
僕はこれを戯曲執筆やブログ原稿書きに使用しています。
まあ、考えてみれば、今のノートパソコンは確かに便利。
インターネットは見れるし、音楽も聞けるし、
写真も取り込めるし、出来ることがいっぱいあります。
でも、起動に時間がかかったり、
勝手に何かをインストールし始めて動作が遅くなったり、
バッテリーがどんどん無くなってしまったり、
便利になったことと引き換えに、
ドキドキ、イライラさせられることが増えました。
これって、なんかオカシイ。なんか矛盾してる感じがします。
ポメラを開発されたキングジム社の立石幸士さんは、
「自分が欲しいもの」にこだわってこれを作ったそうで、
重役会議でもほとんどの人が、
こんな時代に逆行するものを作ってどうするんだ、
という雰囲気だったらしいのですが、
その中でたった一人の役員が、
「こんなのを待っていた。お金を出しても欲しい」
という賛成意見を出して、それで生産が決まったという、
なんだかワクワクするようなエピソードが満載の商品なんです。
20年くらい前にある企業家が、
「商品開発にとって大事なのはリサーチです」
と言っているのを聞いて、
そういうのってなんだかワクワクしないな、
と思ったことがあります。
実際それ以降、日本の企業が作るものは、
みんなの意見が入った丸いものになっていき、
どんどんつまらなくなって行ってしまったように思います。
だからポメラのような尖った商品がヒットすると、
なんだかうれしくなります。
売れるものを作るんじゃなくて自分が作りたいものを作る。
もの作りの基本はここにあるように思います。