今から思うと、
僕の父親の子育てはけっこうユニークでした。
まず、僕が3歳になるまでは体罰はありでした。
「3歳まではまだ人間じゃない」
というのが父の持論だったらしく、
実際、当時のことを僕はまったく覚えておらず、
父親に暴力を振るわれたという記憶が皆無なのです。
物心がついて来た4歳から6歳の頃には、
家族旅行中に僕が汽車の窓から顔を出してはしゃいでいると、
「反対からやって来た汽車がすれ違うときに、
お前の首がちょん切れてしまうぞ」と笑いながら言うのです。
僕は慌てて首を引っ込めました。
こんなこともありました。
兄弟喧嘩をしていると父がやって来て事情を訪ねました。
僕が一生懸命に説明して弟を「殴ってやる」と言うと父は、
「そりゃ弟が悪い、じゃあ、これで殴ってやれ」
と、僕の手にカナヅチを握らせたのです。
もうパニックです。
「叩いたら赤い血が出るじゃないかあ」
そう言いながら僕は泣きました。
そのときにはとっくに弟を殴る気持ちは失せていました。
他にも正座をさせられる、倉庫に放り込まれる、
家から追い出されて鍵をかけられるなどありましたが、
父の躾の方法は、
感情的に怒るとか、正論を言うのではなく、
子供たちの想像の上をいくものでした。
今から振り返ると、
実に効果的な躾の仕方だったなあと思うのです。