躾 | 田窪一世 独白ノート

田窪一世 独白ノート

ブログを再開することにしました。
舞台のこと、世の中のこと、心の中のこと、綴っていきます。


今から思うと、

僕の父親の子育てはけっこうユニークでした。

まず、僕が3歳になるまでは体罰はありでした。

「3歳まではまだ人間じゃない」

というのが父の持論だったらしく、

実際、当時のことを僕はまったく覚えておらず、

父親に暴力を振るわれたという記憶が皆無なのです。


物心がついて来た4歳から6歳の頃には、

家族旅行中に僕が汽車の窓から顔を出してはしゃいでいると、

「反対からやって来た汽車がすれ違うときに、

お前の首がちょん切れてしまうぞ」と笑いながら言うのです。

僕は慌てて首を引っ込めました。


こんなこともありました。

兄弟喧嘩をしていると父がやって来て事情を訪ねました。

僕が一生懸命に説明して弟を「殴ってやる」と言うと父は、

「そりゃ弟が悪い、じゃあ、これで殴ってやれ」

と、僕の手にカナヅチを握らせたのです。

もうパニックです。

「叩いたら赤い血が出るじゃないかあ」

そう言いながら僕は泣きました。

そのときにはとっくに弟を殴る気持ちは失せていました。


他にも正座をさせられる、倉庫に放り込まれる、

家から追い出されて鍵をかけられるなどありましたが、

父の躾の方法は、

感情的に怒るとか、正論を言うのではなく、

子供たちの想像の上をいくものでした。

今から振り返ると、

実に効果的な躾の仕方だったなあと思うのです。



▶︎近景