これ以上望めない高い完成度を誇るイタリアン・ヘビィ・プログレ /ビリエット・ペル・リンフェルノ | ハードロックは我が人生そのもの

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70年代のハードロックはバンドによる個性もあって、独特なサウンドを創り出しています。その中で特に印象に残ったバンド、あるいはこれだけは是非聴いて欲しいと思えたアルバムを、これから随時紹介していきたいと思います。

BIGLIETTO PER L`INFERNOはイタリアで結成されたVo兼フルート、G、Kbx2、Bs、Dsの六人から成るバンドで、70年代における多くのイタリアン・プログレ・バンドと同様、御多分に漏れず美意識に富んだ劇的展開の楽曲を特長とするが、オーバー・ダビングすればそれで済む所を、敢えてツインKb体制にした効果は?アルバムは74年にリリースされたものを唯一とするが、それをこれから紹介。

ツインKb体制といった事でオルガンを始めとするKb群は、シンセやピアノといった具合に役割分担が成されていると思われるが、シンセは曲の背景として使われたり、時には主旋律を奏でたりと、ピュイーン~チュイーンといったポップ的アレンジが成されていない部分が、気品溢れる楽曲に一役買っているし、クラシカル・テイストを醸すハードロックとして聴き応えのあるものとなっている。その中にあって自己主張が特に激しく映るのはラウド且つヘビィな音を奏でるGといった事になるが、とにかくカタストロフィーを感じる炸裂感のあるリフやGソロが刺激的で堪らない。もちろんアコギによる透明感のあるG音も曲のアレンジとして一役買っているが、、、

インプロ重視の楽曲中にあっては、圧倒的表現力を以って迫るVoが少し控え目に映るのが残念であるが、このVoの表現力(歌唱力は普通)があったからこそ、これだけ完成度の高い楽曲が生まれたのかも、、、もちろんシャウトも出来るし、自身はイタリアン・ロックの中にあっては、実は凄いヴォーカリストの一人なのでは?と勝手に決め付けたが、このアルバムはヘビィ且つハードなサウンドの中に様式美まで備えながら、圧倒的美しさと刹那的な美しさを感じるまでに昇華した類稀な作品で、間違いなくハードロック・リスナーの期待に応えてくれるものと眼に映った。ハードロックを聴いて涙腺が緩むほどの楽曲にお眼にかかれる事は滅多にあるものではないが、このアルバムは正しくその中の一枚。

もちろん綿密に練られたアレンジは小編成の電化されたオーケストラの様で、ほぼパーフェクトに近いこれ以上望めない完成度の高さ!ただ由一残念な部分があるとすれば、全体的に音抜けが悪く広がり感にも乏しく、しかも音の輪郭のぼけた楽器の分離に乏しいレンジの狭いチープな録音で、74年の録音でありながら録音機材や技術の進歩から置き去りを食ったのか?リズム隊のパワフルな演奏や技量がほとんど伝わって来ないのが余りにも残念で、これだけの演奏が勿体無く映ったのは自身だけではない様な気がするが、、、とにかく残念の一言!ちなみに74年に録音されたライブ盤は2000年代にリリースされたが、意外にメリハリの効いたサウンド。

 

  74年アルバム 74年ライブ盤

 

自身は90年代における輸入初発CDを購入したのですが、イタリアン・プログレの傑作として同じ土俵で語られて来たムゼオ・ローゼンバッハ同様、録音状態に関しては先に触れた様に決して誇れるものではありませんでした。それが故に自己リマスターしたものを未だ聴き続けているのですが、それでも限界があるといった処でしょうか。現在ではリマスターの施された国内盤もアナログ盤もリリースされている事から、もし購入するのであればそちらをお勧めしたいと思います。ただリミックスまでされているとは思えないので、多少解像度が増した程度かもしれませんが、、、、録音状態にダメ出しはしましたが、それでも聴く価値のあるアルバムである事だけは確かで、特にイタリアン・ヘビィ・プログレが好きと言ったハードロック・リスナーの方々には、背中を押してでもお薦め出来ると思えた一枚です。