サイケを醸す垢抜けしたブルース・ハードロックと言えばこれ! /リン・カウンティ | ハードロックは我が人生そのもの

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70年代のハードロックはバンドによる個性もあって、独特なサウンドを創り出しています。その中で特に印象に残ったバンド、あるいはこれだけは是非聴いて欲しいと思えたアルバムを、これから随時紹介していきたいと思います。

LINN COUNTYはアメリカで結成された、Vo兼Kb、G、Bs、Dsに管楽器奏者(フルートなど)を加えた五人編成のバンド。自身はアルバムがリリースされた当時はまだ学生で、雑誌でアバウトな音楽情報は得る事は出来ても、FMでエアチェックする以外直接サウンドに触れる事は叶わなかったが、仮にバンドの存在を知ったとしても、当時におけるアナログ盤はシングル盤ならいざ知らず、LP盤など金銭的に買える余裕など全くなく、高価な国内盤は当然のことながら、比較的安価な輸入盤を購入したくても、著名なバンド以外はほとんど入手出来ない状況。これから紹介するアルバムは2000年代になって初めてバンドの存在を知り、全く予備知識もなく通販にて購入に及んだ初発CDとなるが、その後のバンドにおける動向は全く判らず仕舞い。

68年録音と言った事で自ずとR&Bテイストのサイケ・ロック~アート・ロックといった事は察しが付くが、同時期に世界相手に活躍したメジャーバンド、ヴァニラ・ファッジのR&R的アプローチの強いサウンドとは多少装いの異なるサウンドで、それはVoにおける歌唱スタイルがV・ファッジほどクロっぽさが無い事も理由として挙げられるが、意外にも歌メロはキャッチーでシャウト型熱唱Voの本領発揮といった処。満遍なくサックスなどの管楽器が導入されている事で、曲によってはジャズ・テイストを醸すサウンドの違い、あるいはオルガンやGの活躍が光る、ブルース・テイストに満ち溢れたサイケ・ブルースとの違いといった処。自ずと聴きどころはハードロック・アプローチで迫るファズGによるブルージーなGワークや、時折放つ歪んだオルガン音、それにグルーヴィーなオルガン・プレイといった事になるが、サイケ・ハードが好きで、その中でもブルース・ハードが好きと言ったリスナーの期待には間違いなく応えてくれる筈。ただ68年録音と言った事を鑑みれば、各奏者におけるプレイ全てがハードロック的アプローチではないので、そこはE・クラプトンがクリーム以前に在籍していたブルース・ブレイカーズのサウンドに近いもので、それより遥かにキャッチーでハードなGサウンドが楽しめるアルバムと思って聴く事が肝心。特に14分にも及ぶ長尺ブルース・ナンバーはバンドにおける本質とも言える曲で、サックスを含めた各奏者の技量やセンスが遺憾無く発揮されたもので、ブルース・ロックとしては出色の出来栄え

 

          68年アルバム

 

このアルバムにおけるオリジナル・アナログ盤は、恐らく価格が天井知らずとなっていると思われるのですが、再発CDなら今でも容易く入手可能な状況にあると思われます。68年録音にしては各楽器における分離もよく、全体的にクリアーな音質は間違いなく誇れるもので、これもお薦め出来る理由の一つなのですが、何といってもお薦め出来る最大の理由は、アングラ臭が常に付きまとうブルース・ロックにしては、サウンドが意外に垢抜けしている事で、それは捨て曲もなく楽しめる事や、キャッチーさを醸す充実した楽曲に充分反映されていると思えます。

ちなみに自身が生まれて初めて購入したLPは、このアルバムとほぼ同時期に発売された井上宗孝&シャープ・ファイブの、G/三根信宏を中心としたクラシックの名曲をアレンジしたインスト・アルバムで、ハードロックとは無縁のアルバムなのですが、G本来のナチュラル・トーンで迫る美し過ぎるG音やGテクは、亡くなられた寺内タケシと双璧を成すものです。ここで興味を持たれた方は是非一度YOUチューブで検索してみて下さい。個人的にはその疾走感やアレンジの見事さから、クラシカルなハードロックと思って、寺内タケシ&ブルージーンズと並んで未だ聴き続けているのですが、案外初めてこの音を耳にする方にはハマルかもしれません、、、

 

           井上宗孝&シャープ・ファイブ68年アルバム