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髪結床(かみゆいどこ)の略称。室町時代から男子の調髪、髭(ひげ)、月代(さかやき)を剃(そ)った職業。現在は理容室、調髪所ともいう。元来、男の髪は総髪で、高貴の間では冠下髻(かんむりしたのもとどり)とし、庶民は簡単な束ね髪であった。武家社会となって、互いに勢力を競って戦いを挑み、その戦乱が長く続くと、武士は髪の蒸れるのを防ぐために月代をあけるようになり、その月代が大きくなるにつれて、職業としての床屋の需要が生じた。それまでは毛抜きを用いて抜いたので、血だらけになったことが南蛮人の記録にある。床屋としての最古の絵画は上杉(うえすぎ)本『洛中(らくちゅう)洛外図屏風(びょうぶ)』にみられるので、永禄(えいろく)~天正(てんしょう)(1558~92)のころには職業として成立していたといえる。当初の床屋の仕事は、月代の毛を抜くことにあった。それが髪を結うようになったのは天正年間も終わりごろからであり、当初は一銭剃(ぞり)、一銭職ともいわれた。江戸時代に入って江戸の町ごとに株仲間ができるようになり、滑稽本(こっけいぼん)『浮世床』にみられるように繁盛していき、文明開化とともに洋風の床屋に変わっていった。
[遠藤 武]
① (江戸時代、男の髪を結う髪結職が床店(とこみせ)で仕事をしていたところから) 髪結床(かみゆいどこ)。
※俳諧・河鵆(1817)冬「はふり子は床や也けり里神楽〈求古〉」
② 理髪店。また、理髪師。
※文明開化(1873‐74)〈加藤祐一〉初「何某は狐に誑(ば)かされたさうなと、風呂屋でもいひ床屋(トコヤ)でもいふ」
③ (「床」は「鉄床(かなとこ)」の略) 鉄敷(かなしき)屋。
※梅津政景日記‐慶長一七年(1612)三月二二日「今日も床屋より火事出候間、床屋を皆々ぬらせ候へと申付候」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について