土蜘蛛 | 瀧光の絵画世界

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水墨画、日本画、洋画など幅広い絵画制作活動をしています。
これまでの人生経験や美大大学院で学んだことをベースに、ブログを書いています。

 昨年8月 第35回相模原薪能があり、「すり足会」参加者をはじめとして「みなみ日本画の会」の多くの仲間たちとともに 能「土蜘蛛」 を鑑賞することができた。
 


 「土蜘蛛」とは、武士が妖怪の土蜘蛛を退治する平安時代の話である。


 松山隆雄先生は、伝説的武将「源頼光」を演じられ、ご子息が退治される側である「土蜘蛛」を演じた。



 「頼光」は「よりみつ」と読むが、「らいこう」とも呼ばれている。

 「頼光」が土蜘蛛退治に使用した名刀は、罪人を試し切りした際に膝まで切れたところから「膝丸」と名づけられていた。
 そして、この土蜘蛛退治に使用されたことにより、「蜘蛛切」と呼ばれるようになったというエピソードが紹介される。
 その伝承をもった名刀が今も残っているそうだ。



 主役は、武士ではなく、土蜘蛛の方だ。2メートルを超える妖怪である。

 見どころは、土蜘蛛が繰り出す蜘蛛の糸である。
 それは、和紙を巻いた玉を投げると幾重にもそれが広がり、まるで花火を打ち上げているかのようであり、客席からは歓声があがる。
 刀を抜いて斬りつける武者二人に千筋の蜘蛛の糸が次々に投げつけられて、それが武士の体や舞台の背景にも纏わって、蜘蛛の糸に絡めとられていく様がリアルである。
 結局のところ最後は首を落とされるのだが、その際には、仰向けざまに両手で蜘蛛の糸を客席側に投げてフィナーレを飾る。



 馬場あき子著「鬼の研究」(144頁)では次のように紹介されている。

 土蜘蛛とは、先住土着民の力の強大なものをさしていったことばである。「風土記」のなかにはことに多く記載されているが、一般に今日知られている土蜘蛛は、歌舞伎や能のそれであり、塚にこもる妖怪のイメージが強い。折口氏は、オニとは大人(オオヒト)のことであり、征服された先住民のことではないかと述べておられるが、そういう意味ではもっとも古代的なオニの一種として土蜘蛛をみることもできよう。



 わたしは、これらの情報を踏まえて次のような絵を描いた。